ともちゃん の日常40


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2009年4月以前(ともちゃんの日常39へ)

2009年5月

1日(金)
「お父さんの名古屋」

2日(土)
「くつでオシャレ」

3日(日)
「梅小路公園」

5日(火)
「恒例の府立植物園」

2009年7月

18日(土)
「ファンコニー症候群」

26日(日)
「二十歳になりました」

2009年8月

7日(金)
「夏祭2009」

9日(日)
「二十歳のお買い物」

13日(木)
「びわ湖大津館」

2009年9月

5日(土)
「青年学級」

2009年9月17日以降(ともちゃんの日常41へ)


2009年5月1日(金)

4月を元気に過ごしたともちゃん、ゴールデンウィークに入って、今年もお出かけシーズンが開幕しました。今年は、最初から思い切って遠出です。お父さんの会社がお休みの今日は、新名神高速道路、東名阪自動車道、伊勢湾岸自動車道を乗継いで、名古屋に行きました。伊勢湾岸道の名古屋南ジャンクションから名古屋高速に入って、お父さんが子供の頃過ごした家の跡地と、通っていた小学校を見に行くというのが、今回の目的です。

 昨年の夏、新名神を通ってお伊勢参りに行ったともちゃんは、次はこのコースで名古屋に行こうと計画していました。けれど、ファンコニー症候群に罹ってしまい、この後、遠出することはできないまま冬籠りのシーズンを迎えてしまいました。2年越しの念願の名古屋です。ゴールデンウィーク中の休日の高速道路は大渋滞が予想されるので、学校があって行けないお姉ちゃんには申し訳ないけれど、ともちゃんは平日に両親と行くことにしました。

 遅寝、遅起きの習慣がついていたともちゃんですが、昨日、1日の予定を前倒しして、寝室に早く行くお父さんの作戦にまんまと嵌って、早く寝ました。今日は早起きして、しっかりと朝食も摂って、理想的に早い時間に出発できました。出発するなり、ともちゃんは気持が高ぶって、よく笑い、よくおしゃべりをしています。「遠くにお出かけする楽しさ、思い出したな。」。ぐるぐる回る高速道路の入口、長いトンネル、しばらくご無沙汰だった景色に出会う度に、こうやったねと実感しながら行きました。ともちゃんも、声かけによく返事してくれます。

 平日なので、周りはトラックが多いです。新名神高速道路に入ると、山の高い場所を通っていることを思い出しました。谷を渡る橋をこえて、新緑の山肌を眺めていると、すぐに甲南サービスエリアの標識が出ました。昨年のゴールデンウィークには、新名神を甲南サービスエリアまでドライブしました。あの頃のともちゃんの体調では、ここまで来るのがやっとだったことを思い出して、今年は元気になったなあとつくづく嬉しく思いました。

 ミルクの注入は東名阪道に入ってすぐの、御在所サービスエリアで行いました。このサービスエリアのことは、ともちゃんとネットですでに調べてあります。ここは、焼蛤が名物の桑名の近くなのでオリジナルキャラクター「はまぐりマン」を作っていて、様々なグッズを販売しているそうです。その中に、はまぐりマンとキティちゃんがコラボしている根付もあります。また、レストランの名物は、蛤ひつまぶしですが、時間が早くてまだ販売していませんでした。ともちゃんは、レストランでもニコニコと笑顔が止りませんでした。

 レストランを出たところにキティちゃんコーナーが作られていて、ご当地キティちゃんや、それ以外にもキティちゃんダルマなどたくさん並んでいました。ともちゃんも大満足で、キョロキョロ目移りしています。その中から、お目当てのはまぐりマン&キティ根付、名古屋に行くので八丁みそキティの根付、桑名蛤キティのタオル、新名神キティのぬいぐるみ、「ともちゃん」と書かれたキティネームタグといっぱい買ってもらいました。両親も、久々の遠出で、浮れています。

 レストランでは食べられなかった蛤ひつまぶし(の素)と、はまぐりマンのエクレアをお姉ちゃんへのお土産に買いました。ともちゃんは、車の中で少し眠そうなので、お母さんは体力のことを考えて寝かそうとしましたが、「寝てられへん。」という様子でした。伊勢湾岸道は海沿いを走ります。河口を渡ったり、港が見えたり、化学工場が建っていたりと目新しい景色になるたびに、「見てみ。」と言ってもらうのですが、ともちゃんの低い位置からは見えにくかったかもしれません。

 名古屋高速を呼続(よびつぎ)ランプで降りて、名古屋市街に入りました。街の変化に少し迷いながら、お父さんは記憶を辿ります。「この道を市電が走ってたんやで。今は地下鉄になったんや。」。広い道は登り坂になっていて、その後左折して住宅地の狭い通りへ入りました。ゆっくりと進んで、「ここや。」、歯医者さんの隣の駐車場でした。歯医者さんも今はもうやっていないようなので、車を降りて証拠写真を撮りました。「この辺が庭やった。」、「この駐車場が、ウチと隣の仕立屋さんの2軒分やで。駐車場にすると狭く感じるなあ。」、お父さんは、懐かしそうでした。

 住宅地の中を少し走って、今度はお父さんが通っていた小学校です。今日は学校がある日なので、車を降りずに証拠写真を撮りました。「この辺が給食室。」、「ここが裏門。」。住宅地の中を走りながら学校の周囲を回って、帰路につきました。帰りながらも、「ほら、名鉄が走ってる。赤い電車。」、「この辺はもう隣の校区や。」「この近くに図書館があってな・・・」と話してくれます。

 高速に入ると、ともちゃんはさすがにウトウトしてきました。けれど、お母さんが「ともちゃん寝てるわ。」とお父さんに言うと、「寝てませんよーっ。」と起きてきて、にこやかにしています。下りの御在所サービスエリアで水分補給をして、順調に帰りました。ともちゃんは、ずっとご機嫌でした。帰ってからも、遠出の楽しさを思い出した様で喜んでいました。ともちゃんが楽しいと、家族みんなも楽しい。今年はまだまだ遠出ができるかなあと楽しみにしている家族です。

 さて、夜になって、お父さんと寝室に行ったともちゃん。楽しかった今日のお出かけを思い出しながら、寝ます。「名古屋に行って、なんでこんなとこで写真撮るんて思てたやろ。」。そうそう、そう言えば、駐車場で車椅子に乗移ったともちゃんは、気乗りしない顔をしていました。「お父さんの、子供の頃の家、見に行ったんやで。ともちゃんにも馴染がある場所やで。」、「???」。

 そう、ともちゃんが赤ちゃんの頃からお父さんが歌ってくれる子守歌のレパートリーの一つは、この名古屋の小学校の校歌なのです。シンプルで、ゆったりとしたメロディに乗せて歌われている歌詞は、「ここは、あゆちの海の岸・・・」です。あゆちは万葉仮名で年魚市と書き、万葉集に歌われた名跡です。「あゆちって何やねんて思てたやろ。このあゆちいうとこに、今日行ったんやで。電車道が坂道になってたし、学校の裏門のところからも急な下り坂やったやろ。大昔は、この高くなっているところが陸地で、坂の下はもう海やったんやて。」。そして、また、この校歌を歌ってくれました。でも、ともちゃんは、ウトウト眠るどころか、「ニャハハハハ」と大笑いしていました。

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2009年5月2日(土)

 ともちゃんの靴が傷んできたので、今日はお母さんとお姉ちゃんがともちゃんの新しい靴の下見に行きました。今履いている靴は、中学生の頃から愛用しているもので、赤とピンクの子供らしいデザインです。それはそれでともちゃんに似合っているのですが、社会人になったので、今度はかわいらしいけれどもう少し大人なデザイン、サイズは20cm、足に変形のあるともちゃんが履きやすい形のスニーカーを探します。

 とりあえず、スニーカーを大量に扱っているチェーン店の中で、キッズ商品も取扱っている店に行きました。軽さや靴の幅、足を入れるところの開き具合を比較するために、ともちゃんが今履いている靴も持ってきました。色々見た結果、テニスシューズのようなスニーカーで、マジックテープで止めるタイプが、今の靴とほとんど同じ形で履きやすそうだということになりました。

 あとは、各社の微妙なデザインや色の違いです。お姉ちゃんとお母さんは、白地にきれいなピンクのラインのものがかわいいと思いました。けれどこの店では、お姉ちゃんとお母さんが気に入ったものも含めて、このタイプの靴でピンク系の色、サイズ20cmのものは全て品切れでした。「大体の見当はついたし、家に帰ってウェブで調べたらええやん。」、「これにするって決めたら、他の店舗に在庫があるかどうか、電話で問合せたらええし。」ということになりました。

 お姉ちゃんが、お勧めの靴の画像をパソコンで出して「こんなん、どう?」とともちゃんに見せると、ともちゃんは嬉しそうに「ニャハハハハ」、「ともちゃん、気に入らはったみたいや。」。「こっちは、どう?」、今度は足の甲がメッシュになっていて、ピンクがちょっとグレーがかったサーモンピンクの靴の画像をともちゃんに見せました。ともちゃんは、「ンーッ」と黙って考えています。「さっきの方がええか?」と前の画像を見せると、ニッコリ。「ともちゃんは、この靴が気に入ったんやて。」、「ほんなら、これ買お。店に電話して、在庫があるか聞いてみるわ。」、「ニャハハハハ」。

 お姉ちゃんがウェブで店の電話番号を調べ、お母さんがともちゃんの横で電話をかけて靴の説明をした後、20cmの在庫の有無を問合せています。お父さんは、ともちゃんの食事の後片付けをしながら、店の場所や行き方などの話に口を挟んでいます。ともちゃんは、自分に関係することでみんながワイワイ賑やかにしていることが嬉しくて、ギャハギャハはしゃいでいます。

 家に近い店舗から、順番に電話していったのですが、次もその次も在庫切れです。その度に、ともちゃんはギャハハハハーと大笑い。「ともちゃん、笑ってる場合とちゃうで。ともちゃんが欲しいと思てる靴が、無いねんで。」と教えて貰っても、そんなことはお構いなしで、笑っていました。「もう、ここで無かったら、別の靴にせなしゃあない。」と言っていた5件目の店舗、引越し前に住んでいたマンション近くの店で、とうとう見つけました。「ともちゃん、あったわ!」、すぐに取置きをお願いしました。でも、長くは取置けないみたいです。「しゃーないな。お姉が明日、取りに行ってきたろ。」、ありがとう、お姉ちゃん。「ニャハア、ハハハハ」、ともちゃんも喜んでいます。

 ともちゃんは脳の広範囲に損傷を負っているため、脳性の弱視です。実際のところ、パソコンの画像で靴のデザインを識別できているとは思えません。また、靴のデザインの好みを主張できるほどの発達段階に達しているとも思えません。けれど、ともちゃんが感じる雰囲気や、その時の気分で色んな反応を示してくれることは、家族にとってとても嬉しいことです。それで、特に問題がない限り、出来るだけともちゃんの気分を受入れてあげたいと思っています。

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2009年5月3日(日)

靴を買いに行くのはお姉ちゃんにお願いして、ともちゃんは両親と梅小路公園にお出かけしました。梅小路と言えば、蒸気機関車を動体展示しているところだとばかり思っていたのですが、「朱雀の庭」という日本庭園が併設された公園もあります。朱雀の庭は、一部を除いて車椅子でも散歩できるということなので、今日はここを散策して、庭園に面したレストランでミルクの注入をします。

 車が走り出して、上機嫌で声を出して笑ったともちゃんの声は、「ガガガガ」と濁って汚い声になっていました。「痰絡んでるな。吸引しよか。」。走る車の中で吸引して貰ったともちゃんは「ギャハハハ」、「ほら、きれいな声になったやん。」。期待通り、渋滞に遭うこともなくスルスルと梅小路までやって来て、車椅子駐車スペースに収まりました。七条入口広場にやって来ると、イベントのテントが立並び、賑わっています。全然知らなかったのですが、今日と明日は「梅小路公園 グリーンフェア」が開催されていました。

 人混みを避けて、朱雀の庭へ向かいます。レストランが入っている建物の2階から、庭園の遊歩道に出られます。入場券の券売機の横に係の人がおられて、思いがけなくグリーンフェアのイベントのお茶会のチケットをいただきました。抹茶なら、ともちゃんも少しなめて味わうことができます。実際、高等部の時に訪問学級で「お茶会」をして貰ったこともあります。朱雀の庭からビオトープ「いのちの森」にも繋がっているとのことで、車椅子でも行くことが出来るコースとお茶席の場所を教えて貰って、出発しました。

 日本庭園の池を眺めながら木々の間の遊歩道を行くと、ともちゃんは落着かない様子でキョロキョロまわりを見回しています。新緑のモミジの葉っぱが、道に覆い被さって先が見通しにくくなっているので、ともちゃんにはちょっとした探検です。庭園の横には、JR山陰線が通っているので、時々ゴーッと列車の通る音がします。蒸気機関車館からでしょう、ヴォーという汽笛とともに石炭を焚くにおいも漂ってきました。いのちの森に入ると、もっと探検状態ですが、木々の間の散歩の楽しさを思い出したともちゃんは、キョロキョロにも余裕が出て、笑顔になっていました。

 いのちの森の階段のところまで行ったので、スロープを引返して、庭園の池の向う側にあるお茶席へ向かいます。赤い毛氈が敷かれた腰掛けに、お父さんに抱っこされて座りました。どのようにして抹茶を飲もうかと思案していたところ、偶然にも3杯の内の1杯は片口(器の縁の片方にだけ注ぎ口がついている)茶碗で出されたので、注ぎ口からともちゃんの唇に少し垂らしました。マンマンマンと唇を動かして味わっています。「もっと飲む?」と勧めると顔をしかめたので、苦かったのかもしれません。

 レストランには11時の開店と同時に入りました。池がよく見えるテーブルに陣取り、日本庭園を眺めながら注入をしました。池の横の舞台では、今日のイベントとして平安装束を着た二人が弦楽器とオカリナを演奏していて、ともちゃんも注入しながら聞いていました。お母さんがメールをチェックすると、お姉ちゃんから「靴を買って、もうすぐ家に着きます。」のメールがきていました。ともちゃんも、ミルクを飲み終ったら、すぐ家に帰りました。家には、ともちゃんが欲しかった靴がありました。今度のお出かけは、この靴を履いて、お姉ちゃんも一緒に出かけましょう。

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2009年5月5日(火)

今日は新しい靴を履いて、お姉ちゃんと一緒に植物園に行きました。ともちゃんは、車の座席にお母さんに抱っこされて座ると、頭をのけぞらせて隣の席のお姉ちゃんをチラッ、チラッと見ては「おねー」と何度も声を出していました。お姉ちゃんが「何や? おネエはここにおるで。」とともちゃんの顔をのぞき込むと、「ニャハハハハ」と嬉しそうです。

 ともちゃんは、言葉を理解しているというわけではありません。多分、たまたま発音しやすい音で「おねー」と言ってみたら、大好きなお姉ちゃんが「何や?」と反応してくれたり、お父さんやお母さんが「おネエは、今、学校やで。」と相手をしてくれるので、呼びかけとして「おねー」と言うことが、よくあるのだと思います。それでも、お姉ちゃんを始め、家族はみんな嬉しいので、ともちゃんがあたかも言葉を理解して喋っているかのように返答をします。

 植物園までは、京都市内を南から北の端まで縦断しなければならないのですが、京都の人たちは連休中もお出かけしないのか、それとも、もう市外にお出かけしてしまって市内には誰もいないのかと思わせるくらい、道は空いていました。植物園に着いて真っ先に行くのは、レストランです。ともちゃんが植物園を訪ねる時は、いつも先にミルクの注入をすることにしているので、家族もレストランを楽しみにお腹を空かせてやってきました。

 メニューを見ながら、お母さんとお姉ちゃんが「丼セットにはミニうどんが付いている。」という話しをしていたら、ともちゃんが「ミニうどん」という言葉に反応したように目を輝かせて、ニコニコ笑っています。「ミニうどんは自分のん」と思ったのでしょうか。「ともちゃんに、ミニうどんを見せたげよ。」とお姉ちゃんが丼セットに決めました。お姉ちゃんは、ともちゃんのちょっとした反応に気付いて、ちゃんと返してあげます。「ミニうどんって、これやで。」と見せてもらったともちゃんは、期待していたイメージと違ったのか、がっかりした顔をしていました。

 ミニうどんは食べられなかったけれど、家族揃っての外食は嬉しくて、楽しくて、ともちゃんはミルクの注入中もよく笑っていました。笑い疲れて、ちょっと静かにしていたら、今度はレストランの店内が混んできて、そのざわめきにはしゃぎ出しました。コーヒーを運んできたウェイトレスさんに声をかけらてもらうと、内弁慶のともちゃんはちょっと恥ずかしそうに目を背けていましたが、ウェイトレスさんが立去ってしまうと、また笑っていました。

 食事が終って車椅子に乗る時、いつも掛けているタオルケットを今日は新しい靴がよく見えるように、小さく折って掛けました。次は1階の売店でお土産を買います。今日の目的はバラ園なので、バラの造花が付いたバラの香りの匂い袋を買いました。実際のバラ園は、花の季節には少し早くて、花が咲いている株はまだ一部でした。ともちゃんは、進むのを止めてカメラを向けると、それまで笑っていても笑うのを止めることが多いのですが、話に興味が向いている時は写真を撮られていることに気が付かず、そのまま笑っています。今日は「靴かっこいいなあー。」と何度も誉めてもらって、笑顔の写真がたくさん撮れました。

 車椅子が進むと、ギャハハ、ギャハハと楽しげです。そのうち、笑いすぎて体の筋肉に力が入り、座位の姿勢が崩れて側湾の腰が痛くなってきました。そうなると、余計に自分ではコントロールできない不自然な筋緊張が入って、さらに痛くなります。ともちゃんは、情けない顔から泣きそうな険しい顔になりました。大変、大変とお母さんはベンチに座ってともちゃんを抱っこして、体を伸してくれました。これで大丈夫。変な緊張がとれたので、車椅子に乗ってもリラックスして、笑顔が戻りました。

 噴水の周りの変ったチューリップの花壇があるエリアに入ると、バラ園以上にたくさんの人がいます。車椅子に乗ると、上を向いて口を開けた姿勢をとっているともちゃんなので、新型インフルエンザの予防のために人混みではマスクを付けるようにしています。ここでもマスクをさせた方がいいのか、お母さんは迷っていました。「ともちゃん、マスクするか? 上向いて、大きな口開けてたら、噴水からの水滴も入るで。」というお母さんの言葉に合せて、ともちゃんはタイミングよく口をつぐんだので、誉めてもらいました。

 菖蒲池の橋を渡って、しゃくなげ園を通って、北門まで行きました。植物生態園では大きな木の枝葉が伸びていて、ともちゃんが見上げている空がここでは葉っぱの緑色です。ともちゃんは、好奇心一杯の目でキョロキョロしながら進みました。温室が見えて、正門前の花壇まで戻って来ました。ともちゃんは、また変な筋緊張が入ってきたようで、体が痛そうになってきました。早く車に乗りましょう。抱っこされるとまたニコニコしていました。今日は一日、本当に楽しそうでした。明日はゆっくりと休養して、連休はおしまい。今年もよい連休でした。

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2009年7月18日(土)

5月末、ともちゃんの家の車が新しくなりました。ともちゃんの車椅子を乗せるためのリフトが付いたミニバンです。これで、お父さんは、ともちゃんとのお出かけの度に、車椅子をそのままヨイショと抱えて車の後部に載せるという力仕事から解放されました。6月に入ってからの日曜日は、ともちゃんは新しい車の試乗で市内を一周したり、京都駅方面までドライブしたりしていました。今日は高速道路を通って、ファンコニー症候群の予後を診て貰うために、病院に行ってきました。お陰様で、今ではもうすっかり良くなりましたが、今回はこの冬ともちゃんが患ったファンコニー症候群についてお話しします。

 腎臓に異常が見つかったのは、ともちゃんが通っているデイセンターの健康診断の時でした。昨年の秋、近くの小児科医院で血液検査と尿検査を受けたのですが、その尿検査の結果に蛋白と糖がたくさん出ていて、精密検査を受けるように言われました。ずっとともちゃんを診て頂いている主治医の先生の外来を受診した時にこの話をしたところ、すぐに導尿で採尿して検査して下さいました。家では、赤ちゃんがするように採尿パックを使って採尿していたので、汚れが混じっているという心配もあったのですが、導尿ではそういう心配はありません。

 この時の検査結果も、やはり蛋白と糖が出ていて、ちょうどその日に腎臓外来を受持ちされていた先生を紹介して貰いました。それ以来、ずっと定期的に腎臓外来で診て頂けることになりました。血液検査や早朝尿の検査で詳しく調べて貰った結果、ともちゃんの病気はファンコニー症候群でした。腎臓では血液から尿を作りますが、その過程として、一旦腎臓内の糸球体というところで、アミノ酸(蛋白)、糖、リン、重炭酸などをたくさん含んだ尿(原尿)を作り、その後腎臓内の尿細管というところで出し過ぎた成分を血液中に再吸収して、尿ができます。ファンコニー症候群というのは、この尿細管での再吸収がうまくできなくなる病気です。

 尿細管での再吸収ができないので、尿中に糖や各種アミノ酸がたくさん出てしまうし、血液中の尿酸、リン、カルシウムの値が低くなっていました。カルシウムによる腎臓の石灰化を超音波エコーで診て貰いましたが、こちらは大丈夫でした。ファンコニー症候群は、抗てんかん薬のバルプロ酸ナトリウム服用の副作用としても起こることが知られています。ともちゃんも、1992年2月に脳波にてんかん波が見られてから、16年間ずっとバルプロ酸ナトリウム(デパケン)を飲み続けてきました。ファンコニー症候群を治すために、「まず、デパケンを止めましょう。」ということになりました。

 それと同時に、血液中からたくさん尿酸やリンが失われている間は、そのことで体調を崩すことのない様に、これらを薬で補いました。血中濃度が高いと痛風になることで知られている尿酸ですが、活性酸素を除去する作用を持っています。体内の尿酸が不足しているので、この作用を補うために、坑酸化作用を持つビタミンCと、ビタミンEを飲むことになりました。少なくなったリンには、試薬(製薬ではない化学薬品)のリン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムを処方して頂きました。

 デパケンを止めるといっても、デパケンはともちゃんのてんかんをコントロールするための薬です。急に止めると、今度はてんかん発作が起こります。今年に入ってからデパケンを減らし始めて、1月31日には完全に止めました。その直後、デパケンの代わりに飲んでいたエクセグランで薬疹が出て、入院するという思いがけない事態を経ましたが、結果的には、ともちゃんの抗てんかん薬はアレビアチン一剤で大丈夫ということに落着きました。デパケンを止めてから、ファンコニー症候群はどんどん良くなりました。2月の腎臓外来受診ではリンの血中濃度が回復し、4月の腎臓外来では尿酸の血中濃度が改善したので、順次薬を飲むのを止めました。

 今日の検査では血液検査にはもう異常がなく、後は尿中の尿細管たんぱく値がまだ少し高いので、3ヶ月後に来るようにと言われました。ファンコニー症候群に罹っていることが分って、うまく治療して頂き、本当に良かったと思っています。ともちゃんは、養護学校の間は毎年5月に尿検査をしていて、異常が出たことはありません。最後の異常なしの検査は高3の5月ですから、この後の1年半の間にじわりじわりと悪くなっていたようです。ちょうどこの期間、ともちゃんはよく熱を出していました。ファンコニーの治療をしてからは、熱は出さず元気にしています。健康診断を受けることは、本当に大切です。

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2009年7月26日(日)

ともちゃんは、昨日で二十歳になりました。身長約130cm、体重27.8kgです。

 二十歳の朝、ご機嫌に目覚めたともちゃんはリビングに連れられて、いつもの場所に陣取りました。目の前のテーブルには、カードとプレゼントが置かれています。封筒に入ったカードは、昨夜デイセンターから届けて頂いたもの。開封してメッセージを読んで貰うと、「アハハハ」と嬉しそうでした。立てられていたカードとプレゼントは、お姉ちゃんからでした。ヘアピンとヘアクリップが入っていました。最近髪を短くしたともちゃんに、ぴったりのプレゼントです。早速着けてみると、ニコニコの笑顔によく似合っていました。

 昨日はお母さんが出かけていたので、今日、誕生日会をします。食物アレルギー除去食の専門店で、通販で買ったスポンジケーキをともちゃん自らデコレーションして、家族みんなで食べました。アレルゲン除去のチョコレートは、今回は生クリームと混ぜたチョコレートクリームにして、フルーツは缶詰の桃とバナナを使いました。酸味が強過ぎることもなく、マイルドな甘さのおいしいケーキが出来上がりました。完成した時には、ともちゃんは少し眠くなっていましたが、休憩を取りながらアムアムと食べました。

 プレゼントもいっぱいです。お姉ちゃんからは、昨日もらった他に、既にオレンジ色のサンダルも貰っていて、愛用しています。今日はお母さんから、ヘアバンドとスウェット地のズボンを貰いました。ヘアバンドは、ともちゃんが布団の上に置かれた時に、前髪が目に掛からないようにするためにと選んだのですが、着けてみると布の幅が広く、三角巾の様になるので、デコレーションをする時に使いました。お父さんからは、欲しいものがあった時にいつでも買って貰える永久不滅ポイント。お祖母ちゃんからのお祝い金では、ガーゼ毛布を買うつもりです。

 夜、お母さんはともちゃんの障害者年金の申請をするための書類を書きながら、この20年を思い返していました。双子だったともちゃんは、一子が胎内で亡くなり、その子の血の塊が胎盤を通じて脳に入って脳梗塞を起こしたので、脳に重い損傷を受けて生まれました。将来どのような障害を持つことになっても、ずっと快適で楽しい人生を送って欲しいと育ててきました。けれど、ともちゃんは体が弱くて、入退院を繰返しました。10歳6ヶ月の時に呼吸不全で入院して、経管栄養と在宅酸素になりました。

 以来、ともちゃんは、人生の約半分を鼻からのチューブで主たる栄養を摂り、酸素の力を借りて生きています。か細かった体は順調に体重が増えて、しっかりとしてきました。しょっちゅう熱を出すということもなくなりました。ともちゃんの20年を振返る時、主治医の先生を始め今まで命を守って下さった医療スタッフへの感謝の念を抱かずにはいられません。そして、保育所や学校の多くの先生方、現在ではデイセンターの職員さんやヘルパーさんがともちゃんに楽しい関りを持って下さいます。表情豊かに人生を謳歌している20歳のともちゃんは、こうして多くの人達に支えられてきました。

 お姉ちゃんが2階からリビングに下りて来ました。書類に細かい字でびっしりと書込まれたともちゃんの通院歴を覗き込んでいます。「結構すごい経歴やなあ。」。そう、これからも決して無理せず、医療のお世話になりながら、多くの人の助けを借りながら、快適で楽しい人生をずっとずっと歩み続けて欲しいと思います。隣の寝室からは、お父さんと一緒に眠っているともちゃんの心拍数をモニターしているパルスオキシメータの規則正しい電子音が聞こえています。

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2009年8月7日(金)

この夏、ともちゃんは絶好調。週に1度のデイセンター通いは順調です。今、デイセンターでは、それぞれのメンバーさんに応じた夏期活動が行われています。プールへ行きたい人はプール、入浴を希望する人は入浴、そのどちらでもない活動を希望するともちゃん達には「ウォータープログラム」が用意されています。シャボン玉をしたり、水遊びをしたり、夏ならではの水の感覚を楽しみます。

 それぞれの活動が安全に行えるように、職員さんの体制を考えて日程を組んで頂いているので、ともちゃんはその日程に合せて通園しています。今週の火曜日は、ウォータープログラムでシャボン玉を楽しみました。水曜日、木曜日と家で休養したともちゃん、今日は今週2度目の通園をしました。今日は園の夏祭です。

 ともちゃんが登園すると、迎えて下さった職員さんと看護師さんから「ともちゃん、知らないおばちゃんが来たはるよ。」と教えて貰いました。「どれどれ?」と自分のグループの部屋に入ると、ちりちりパーマで、スカートの上にかっぽう着を着た大きなおばちゃんがいました。ともちゃんに「忘れたん? 隣のおばちゃんやないの。」と声をかけてくれたのですが、ともちゃんは怪しい人と思ったのか、決して目を合そうとはしませんでした。実は、このおばちゃんは、ともちゃんのグループの男性職員さん。オープニングのチンドンパレードのための仮装でした。

 各グループが出しているお店を回るために、職員さんと夏祭会場のホールに出てきたともちゃんはニコニコ。楽しい雰囲気はちゃんと分ります。「人間モグラたたき」の列に並びました。職員さんがモグラに扮して、大きな穴から頭を出すのを、ピコピコハンマーでたたきます。待っている間、ともちゃんはハンマーのキュッ、キュッという音がちょっと苦手で、ビクっとしていました。でも、順番が回ってくると、職員さんに手を握って貰って、ゆっくりと頭を出したモグラさんを涼しい顔でキュキュキュと連打していました。

 たくさんヒットしたので、賞品は2等の「有馬温泉夢ごこちツアーセット」を貰いました。入浴剤「有馬の湯」、旅館のリンス、髪を束ねるゴム、有馬温泉旅行のパンフレットが中に入った大きな袋をともちゃんは自慢げに抱えています。お家で温泉気分を味わいましょうね。ざわめく会場で、食べ物をチケットで買うのも楽しいものです。ともちゃんも嬉しそうにしていますが、残念ながら食物アレルギーがあるので、食べられません。代りに、お母さんがおいしそうに食べていました。

 最後のゲームは「魚釣ゲーム」。職員さんと、竿を使って紙の魚を釣りました。魚は3匹釣上げます。最初に釣れたのは、昆布。次に、竿にかかったのは長靴。釣上げてしまう前に、職員さんが「ともちゃん、今度は長靴が釣れたけど、こんなんでいいん?」。何をしても楽しいモードに入っているともちゃんは、太っ腹で「アハハハハ。」。3匹目は魚を狙います。首尾良くマンボウを釣って、その裏に書かれていた賞品のお菓子をもらいました。

 ともちゃんが、元気で夏祭を楽しんだこともとても嬉しいことですが、デイセンターに週に2回も通園ができたことが何より、社会人2年目の夏です。

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2009年8月9日(日)

お父さんの夏休みが始まって、ともちゃんも夏休みに入りました。雨が降った今日は、屋内駐車場がある大型ショッピングセンターに出かけました。ともちゃんと「夏休みはどこに行きたい?」という話をしていたお姉ちゃんによると、ショッピングセンターでの買い物は、ともちゃんが一番したいこと(一番反応がよかったこと)だそうです。果たして、ともちゃんは最初から最後までギャハギャハと大はしゃぎで、うれしそうにお買い物をしていました。ともちゃんが楽しいと家族みんなが楽しい、改めてそれを実感させてくれた一日でした。

 昨夜、「明日はお出かけやで。」という話を聞いて興奮したともちゃんは、寝不足がたたって行きの車の中ではウトウトしていました。でも、開店直後のショッピングセンターに着いて、いつものようにまずはフードコートでミルクの注入を始めると、「ここ、ここに来たかってん。」と回りを見渡してニコニコ。ミルクの注入中は、抱っこしてくれているお父さんと他愛のない話をして、お父さんの話しかけにいちいち反応して、声を出して笑って答えていました。

 最初からこんなにはしゃいでは、せっかくのお買い物の頃、疲れてしまうのではとの心配がありました。今日は、ともちゃんの誕生日にお父さんから貰った永久不滅ポイント(いつでも好きな時に好きな物を買える)で服を買うことと、ともちゃんがデイセンターでお仕事をして貰ったボーナスでヘアアクセサリーを買うことが目的なので、買い物中もずっとともちゃんが主役です。でも、心配無用。お買い物でも、ともちゃんのパワーは減衰することなく、好奇心一杯の目を輝かせていました。

 ここのショッピングセンターは新しく、通路が広くてバリアフリーで、車椅子でも難なく買い回りできるところが気に入っています。中に入っているショップの中の通路も、ゆったりとしています。ともちゃんは、棚の上に洋服が積まれたり、洋服がずらりと並んで吊るされたり、ディスプレイされたりしている間をゆっくり進みながら、キョロキョロ左右を見回しています。家族はそれぞれにあれこれ服を見立ててきて、「これはどうかな?」とともちゃんに見せたり、体に当てて合わせてみてくれたりします。ともちゃんは、みんなで服を選ぶことが、本当に楽しいようでした。

 思いがけなく、最終バーゲンの底値だったこともあって、たくさんの洋服を買って貰いました。今回のともちゃんの一番のお気に入りは、薄い紫のカーディガンと、さらに薄い、ピンクに近い紫のアーガイルのTシャツの組合せです。ともちゃんがよくはいているピンクのズボンに似合う、ちょっとお姉さんな装いです。一度候補に決めてから他の店も見に行って、また戻って来ても、やっぱりこの組合せを見せると満面の笑顔を見せていました。これから秋にかけて、ともちゃんの持っている服と合せて、それぞれに色々と着回しが楽しめそうです。支払いが済んで、商品をショップの袋に入れて貰って自分で持つと、とても嬉しそうでした。

 次はヘアアクセサリー。ともちゃんは、去年自分で貰ったボーナスを入れたキティちゃんの財布を首から下げて、アクセサリー屋さんに行きました。たくさんの種類のかわいいヘアピンがあって、家族が「これは?」、「こっちは?」と勧めるものに次々に目移りして、笑顔で答えています。散々迷いましたが、キラキラのストーンが付いたピンクのリボンのパッチン止めに決めました。子供用が多いパッチン止めですが、これは大人用でかわいいデザインです。ともちゃんが自分で稼いだお金で、初めてした買い物です。夏休みが終ったら、早速デイセンターに着けて行きましょう。

 20歳になったともちゃんには年金手帳が送られてきているので、最後にキティちゃんの年金手帳入れも買いました。もちろん、年金手帳入れとしてキティショップに売られている物はないので、ケース入り便せんセットのケースで代用しました。お母さんが適当な代用品を探している間、ともちゃんはお父さんとキティちゃんグッズを見て楽しんでいました。この後、1階の食品売場に寄りましたが、その時もサツマイモを見て大笑いしていました。

 ともちゃんは、今日は目一杯、お買い物を楽しみました。最後の方は、側湾の腰が縮んで痛くなって、少しビクつきが出たので体を伸ばしましたが、それで腰の痛みは落着き、また楽しんでいました。ともちゃんは、こんなにこのショッピングセンターでの買い物がしたかったのかと、家族もびっくりです。ともちゃんも、20歳の社会人ですから、服選び、アクセサリー選びの華やかさを感じているのでしょう。ともちゃんが好きなら、これから、何度でも家族みんなで来ましょう。ともちゃんが楽しいと、家族みんなも楽しいですから。

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2009年8月13日(木)

今日は混雑する高速道路を避けて、地道を通って「びわ湖大津館」に行きました。びわ湖大津館は、琵琶湖に臨む「柳が崎湖畔公園」内にあり、元々は昭和初期に建てられた琵琶湖ホテルの本館だったそうです。琵琶湖ホテルには著名人も数多く宿泊したらしいのですが、それを大津市が買取って、多目的に利用できる施設として新たに開館しました。バラの季節にはバラ園として賑わうイングリッシュガーデンが併設されています。大津館の中にはレストランもあるので、琵琶湖を眺めながら優雅にミルクの注入をしようと、訪ねてみました。

 新しい車のカーナビは、ハンズフリーで音声に応答するようになっています。ですが、目的の施設がある都道府県名を問われて「滋賀県」と答えても「秋田県のどこですか?」と、とんでもない返事をしたりします。ともちゃんは、こんなカーナビに翻弄されているお父さんの様子を聞いて、ニャヒニャヒ笑っています。時々ボケるカーナビですが、「びわ湖大津館」のことはちゃんと知っていて、案内してくれました。国道1号線の逢坂山を越えて161号線に入ると、浜大津の駅の先に琵琶湖が見えました。

 大津館の障害者専用駐車場は、通常の駐車場とは別に大津館の玄関前にあります。ロビーで許可証を貰って、駐車しました。レストランは11時半からの営業なので、それまではイングリッシュガーデンを散歩しました。天気予報では、今日は曇のち雨だったので、到着した時間に雨だった場合を心配して、ともちゃんが降りるための車寄せがあることを確認していたくらいですが、予想に反して太陽が照りつけていました。お姉ちゃんが折りたたみの日傘を持って来ていたので、ともちゃんに差掛けて貰って、散歩しました。

 暑い季節のためか、入園者はともちゃんの家族だけで、ともちゃんのペースでゆったりと園内を回り、好きな場所で気兼ねなく写真もたくさん撮りました。バラの季節ではありませんが、変化に富んだ庭園には色とりどりの小花が咲き乱れ、夏の緑が溢れていて楽しく散策できました。一番端まで行くとあずま屋があって、そこから琵琶湖が望めました。ともちゃんにとっては久しぶりの炎天下で、車椅子の背もたれに仕込まれたファンを回しながら行きましたが、風が吹いたり、大きな日陰に入ると笑顔を見せていました。

 大津館の玄関は数段の階段がありますが、脇のスロープから館内に入りました。スロープはU字にして距離を稼いでおり、一見年代物のようです。深紅の絨毯の敷かれた重厚なロビーに入るなり、ともちゃんはニコニコ笑いっぱなしです。屋外が暑かったので、室内の涼しさが心地良いのでしょう。レストランの入口にも小さな階段があって、玄関と同様のスロープがありました。歴史ある大津館ですが、最初からこうしてスロープが造られていたのでしょうか? 改装時に造り付けたのなら、見事に内装にマッチしたレトロなスロープです。

 レストランの席からガラス越しに、ヨットが浮かび、噴水が上がる琵琶湖が見えます。レストランの席はほぼ満杯で、みんな湖畔のランチを楽しんでいます。ともちゃんは、主たる栄養を経管で摂り、口からも一部ペースト状の物を食べています。レストランでの外食なら、ミキサーを持参してそこでのメニューを一緒に味わいたいところですが、ともちゃんには数多くの食物アレルギーがあるので、それは危険で無理なことです。ともちゃんも涼しげな湖面を眺めながら、おすまし顔でちょっと贅沢な気分で「いつものミルク」の注入を終えました。

 館内には、バラのグッズを揃えたお土産屋さんもあります。ともちゃんも覗いてみました。バラの香りグッズ、バラの形や模様の雑貨やアクセサリーなど、見ているだけでお買物好きのともちゃんはギャハギャハ笑って、うれしそうです。バラの飾りの付いた傘立てに目が止まりましたが、ちょっと高すぎるし「家のどこに置くの?」ということになりました。お土産は、現実的なところでストラップにしました。

 カーナビの勧める帰り道は名神高速を通るというものだったのですが、これを無視して地道を帰ります。実は、お父さんには、今回大津に行くに当たって地図を見ていて気になる道がありました。阪神高速8号京都線と書かれたトンネルだけの道です。ゆくゆくは、阪神高速京都線と繋がるのでしょうが、今は稲荷山にトンネルを通して、山科と伏見を結んでいます。このトンネルを通ってみました。入口に有料道路のゲートがありましたが、入る時に対向車が出てきただけで、誰も通っていません。「お稲荷さんの山やから、狐に化かされてるんとちゃう。」、「ちゃんと、出られるやろか。」と言っているうちに、出口の明りが見えました。この道を通ると、ともちゃんの家から大津までが、少し近くなります。

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2009年9月5日(土)

昨日の朝のこと、「ともちゃん、今週は疲れてて、よく昼寝してるやろ。今日は金曜日やけど、ヘルパーさんは来えへんねん。ちょうどええから、しっかり昼寝するんやで。」とお母さんに言われたともちゃんは「!!」。「ほらー、ともちゃん怒ってるやん。」とお姉ちゃん。「ともちゃん、明日は養護学校で青年学級(同窓会)があるって、お手紙が来てたやろ。それに行くから、今日はゆっくり休まなあかんし、ヘルパーさん、頼まへんかったんやで。明日、元気で行けるように、今日は休養やで。」。

 今日は朝からしっかりと食事を摂り、午後から養護学校に出かけました。デニムのレギンスと、大きなリボンが付いたサーモンピンクのキャミソールを着て、自分のお給料で買ったキラキラ石の付いたリボンのヘアピンも着けました。ともちゃんの住む市でも、新型インフルエンザで学級閉鎖が出ていると朝刊に出ていたので、予防のマスクも着けました。マスクもピンク色なのが、ともちゃんらしいところです。

 楽しみにしていたのに、ともちゃんは学校に着いてすぐには「あれっ?」と状況が飲込めない感じでした。でも、出迎えて下さった担任の先生に近況をお話ししながら校舎の入口を入っていくと、「ニャハハハ(分った!学校やん。)」と笑顔が出てきました。懐かしい声を聞いて、じんわりと楽しい状況がしみてきたようです。校長室にあいさつに寄った時に、先生がともちゃんのヘアピンのことを説明して下さったのですが、校長先生がヘアピンを見ながら「ごっついダイヤモンドが付いてるなあ。」と返されたので、一瞬、間を置いて、ともちゃんは「ギャハハハハ(そうやねん。)」。すっかり、楽しいモードに入っています。

 学校の校舎内の長い廊下を縦断して、会場の寄宿舎へ。受付でも、たくさんの人の気配や、会場の雰囲気を感じて、ニコニコ。青年学級はPTAの主催で、卒業後5年間、お誘いのハガキが届きます。懐かしい養護学校に戻って、卒業後の様子をおしゃべりしながら、一緒に焼そばを作って食べたり、ゲームをしたり、楽しいひとときを過ごしましょうという同窓会です。ともちゃんは焼そばは食べられないので、隅っこに陣取って、お父さんの抱っこで一足お先にミルクの注入を始めさせてもらいました。

 開会宣言、校長先生の挨拶に続き、参加者の自己紹介で会が始まりました。聞いていると、ともちゃんと同じ通園施設H園のワークセンターで働いている人も、たくさんおられます。ともちゃんもお父さんとマイクを持って、「H園でまいどレーヌを作ってます。」と言い(言って貰い)ました。焼そば作りが始まると、お母さんは、付添いの保護者対象の懇談会に参加するために、別室に行きました。他の保護者の方々から、障害者が地域で楽しく暮らしておられる状況を聞くことができて、有意義に過ごしました。

 その間、ともちゃんは久しぶりに担任の先生にも、訓練の先生にも抱っこしてもらいました。担任の先生が、学校時代の朝の会の歌を歌って下さると、すぐに「この歌、知ってる!」とばかりに、パアッと笑顔になったそうです。友達とも会って、一緒に写真を撮ったり、終始楽しく過ごしました。去年の青年教室では、途中からウトウト眠たくなりましたが、今年はずっと元気に過ごせていることも、うれしいことです。最後まで参加したいところですが、ともちゃん自身の生活のリズムの都合で、3時になると学校を後にしました。この後あるビンゴゲームの景品の中から、一番気に入った揺れると光るオモチャも、しっかり貰って帰りました。

 ともちゃんは、大きなマスクをしていると表情が読みにくいのですが、それでも分るくらいに、顔をくしゃくしゃにして笑っていました。来年も、きっと元気で参加しますよ。これから暫くは、ともちゃんは来訪するヘルパーさんと一緒に今日の写真を見ながら、今日の出来事を話したり、光るオモチャで遊んだりして、楽しい青年学級の余韻に浸ることでしょう。

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