ともちゃん の日常10


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1998年7月7日以前(ともちゃんの日常9へ)

1998年7月

21日(火)
「惜しくも負け越し1学期」

25日(土)
「9歳の誕生日」

29日(水)
「学校のプール」

1998年8月

6日(木)
「昼夜逆転」

14日(金)
「夏休みのお出かけ」

16日(日)
「舞洲障害者スポーツセンター」

26日(水)
「夏休みの終わりに」

31日(月)
「路線バスに乗ろう」

1998年9月

11日(金)
「シーティングに座って新学期」

23日(水)
「5号湾岸線」

1998年9月27日以降(ともちゃんの日常11へ)


1998年7月21日(火)

 1学期の終業式の日は、明け方にけいれん発作があったので、ともちゃんは学校を休みました。もう夏休みに入っているのですが、21、22、23日は学校の登校日です。朝、普通にスクールバスが出て、昼食を食べずに帰宅します。小学部は登校日にはプールや水遊びをして過ごします。

 ともちゃんは日曜日と翌日の海の日は家で静養して、今日は元気に登校しました。プールの予定でしたが、カンカン照りではない今日のような日は、ともちゃんはちゃぷちゃぷと足を水に触れるだけです。ともちゃんは通知表(あゆみ)を初め、夏休みのくらしなどたくさんの配布物を持って帰ってきました。全面開校をしてからもう1学期が過ぎたんだなあという感じがします。

 通知表の裏の出欠の記録は、出席38日対欠席39日で惜しくも負け越し。終業式の最後の1日が鍵だったのです。しかし、今年度はともちゃんは新学期早々2度も入院しています。これを考えると、あとは本当によく頑張ったのです。「生活」「課題別学習」などと科目別に先生が記述式で書いて下さっている欄にも、「今学期は体調が勝れないときが多く・・・」という表現がたくさん見られます。

 退院してからもともちゃんは2年生の時ほど体力がなく、弾けるような笑顔やランランとした目の輝きも少なく、ぼーっと力無い表情でウトウトと眠たくなることが多く見られました。それでもひどく体調を崩すことなく登校できたのは、何とかともちゃんの昼寝の態勢を整える努力をして下さった先生方のお陰だと感謝しています。

 タクシーで遅刻して登校するだけではなく、早退したことも、逆にしんどいのでバスには乗らずにお母さんの抱っこで学校で昼寝をしてからタクシーで遅れて帰ったこともありました。ともちゃんのペースで登校できたことは良かったと思います。ともちゃんの体力も暑くなるに従って徐々に回復しつつあり、昼寝の時間をしっかり確保すれば短時間の間はしっかりした顔つきも見られるようになってきました。

 7月には体重が14.7kgになりました。ともちゃんは出生児の体重が1530gですから、生まれたときの10倍の重さになるのももうすぐです。身長も111cmになりました。いろんな人に「ともちゃん背が伸びたね。」と言ってもらいます。体調に注意しながら新しい経験もしました。遠足で海遊館にも行きました。カンカン照りの日には新しくできた学校のプールにも入ることができました。

 全面開校(新しい学校になったようなもの)で今までとは体制が異なる上に、ともちゃんの体調がもうひとつ勝れないことが多かったのでお母さんは心配事がたくさんありました。それは学校と家庭を結ぶ連絡帳にも表れています。通常の家庭からの連絡の欄だけでは学校へのお願いや質問は書ききれません。前日の様子を綴ったページの裏側も目一杯使ってともちゃんの様子やお母さんからのお願いが書かれています。

 今年の夏休みは去年のように遠出も旅行の計画も立てられません。ともちゃんの体調次第で無理のない程度に過ごそうと思います。近場で短時間ともちゃんが楽しめれば、それが一番。体調を整えて元気で、少しでも体力を養って2学期が迎えられればいいと思います。

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1998年7月25日(土)

 今日はともちゃんの9歳の誕生日です。学校での誕生会は8月生まれのTちゃんと合同で先週してもらいました。今日は家族で誕生会です。

 今年の両親からのプレゼントは車椅子につける日傘です。去年の秋に作った自慢の車椅子キティ号ですが、使ってみるといくつかの問題があって、次回は改良したいと思っています。日除けもその一つなのです。

 車椅子の幅に合わせて屋根を作っているので屋根の幅が狭すぎ、その上屋根の前後の角度を調節できません。雨用カバーを付けるときにはそれでいいのですが、日除けとしては狭い長い出っ張りがともちゃんの頭の上にあるようなもので、あまり役に立ちません。

 お母さんは自転車用の傘保持具を買って、日傘を取り付けることを考えていました。しかし通常の自転車用のものはともちゃんの車椅子にはうまく取り付けられないことが分かりました。そんなときちょうど「みんなのねがい」という障害者向けの雑誌に車椅子用の雨具の紹介がありました。その中に車椅子用の傘保持具も載っていました。

 自転車用のものよりはかなり高価ですが、角度が自由自在に設定できるという点も気に入って購入しました。これは折りたたみ傘の取っ手を外してネジで取り付けるのですが、折りたたみの日傘もお母さんが探してきました。赤いギンガムチェックの日傘に大きなキティちゃんのアップリケをつけました。今年の夏、ともちゃんはおんば日傘のお嬢様です。

 お父さんに言わせると日傘がお父さんからのプレゼント、保持具がお母さんからのプレゼントだそうです。お姉ちゃんもおこづかいでプレゼントを買ってくれました。学校の給食の時に使うキティちゃんのタオルと小さい猫のキーホルダーです。給食用のタオルはもう大部分が色あせてきているので、鮮やかにサクランボとキティちゃんが描かれているタオルを新学期に使うのは楽しみです。

 昼食前にともちゃんは牛乳プリンを、他の家族もそれぞれに好きなデザートを食べてお祝いしました。ともちゃんは食物アレルギーがあるのでケーキは食べられないのです。その後、余興でお姉ちゃんが下手なバイオリンでユーモレスクを弾いてくれました。お姉ちゃんはバイオリンを習っているのですが、全然練習をしないので、ちっともうまくなりません。

 それでも、ともちゃんはお姉ちゃんのバイオリンの音が好きで、目をランランとさせてしっかり聞いています。笑顔もこぼれます。バイオリンの音の波形は人間の声に最も近いのだそうですが、そういうことも関係があるのかもしれません。今回のお姉ちゃんの演奏は一段とへたくそでしたが、ともちゃんは一生懸命聞いて笑っていました。いい誕生会でした。

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1998年7月29日(水)

ともちゃんの学校のプールと体育館が6月に完成しました。体育館の屋上にプールがあるのです。ともちゃんはこの学校のプールにもう2回も入りました。1回目は7月9日のプール活動日です。ともちゃんが大きなプールは水が冷たくて無理なのならお湯に浸かれるようにと、プールサイドに簡易型の小さいプールを設営してもらっていました。

 先生にはともちゃんの体調を見ながら「無理のない程度に入ります。」と言ってありました。ともちゃんは全くの見学以外にも、体調によっては足を水(お湯)につける程度のときもあります。前回のプール活動日はともちゃんは休んでいたのですが、1年生のお母さんがプール活動の見学に来られたと聞きました。それなら学校のプールに入るのはともちゃんも初めてのことだしと、お母さんも見学に行くことにしました。

 お母さんが学校を訪れたとき、ともちゃん達はもうプールサイドにいました。車椅子でプールサイドまで来て、隅に車椅子を並べて置いて、プールの近くには1人に1枚ずつお風呂マットのようなマットを敷いてもらい、寝転がることができるようになっています、ともちゃんは最初はお湯を張った小さなプールにつかりました。強い日差しに目を細めてはいますが、いやがっている様子はありません。

 このところの強い日差しで本当のプールの水も温くなっているようです。「ともちゃんも少し入ってみましょうか。」と先生はともちゃんを抱っこして階段を1段ずつ座りながら、ともちゃんがこの水温に慣れるようにゆっくりと入って下さいました。ともちゃんはここでも嫌な顔はしません。すっかり入ってしまいました。初めての学校のプールです。ともちゃんは先生の肩に仰向けに頭を乗せて、肩と腰を持ってもらって、リラックスして足を伸ばしていました。

 ともちゃんが学校の新しいプールに入れるなんてお母さんは大感激です。今年はともちゃんの体調が優れない日が多かったので、お湯遊びだけになるかなあと思っていました。それなのに、大きなプールに、それもお風呂のように丸く抱っこして入るのではなく、長く体を伸ばして入れたなんて。ともちゃんはお友達が休憩に入る前にプールから上がりました。車椅子に乗ってエレベータの前まで来ると、もう眩しくないので、目を細めていたのを止めて、満足そうににこにこ笑っていました。

 2回目は今日。今週はPTAによるプール開放で、親子一緒にプールに入れる日です。そして今日はともちゃんのような肢体不自由重複障害を持つ小・中学部に割当ての日です。幸いともちゃんの体調も良いので、お母さんと一緒に行きました。先生も何人も来て下さっていて、ともちゃんは得意の仰向けに長くなる姿勢で先生と泳ぎ(?)ました。先生からこのポーズを「ヘビさん」というと教えてもらいましたが、ともちゃんの場合はまだ手が伸びていないので「ラッコ泳ぎ」のようです。今回は水に浸かったままの状態で、先生の大きなくしゃみに大笑いする余裕もありました。

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1998年8月6日(木)

重症心身障害児は生活のリズムが確定しなかったり、昼夜逆転が生じたりしやすいと言われています。ともちゃんも赤ちゃんの頃はよく逆転していましたが、それ以降は早寝早起きで生活のリズムはしっかりと確立していました。ところが、先日の風邪をきっかけに7年ぶりに昼夜逆転してしまいました。今回はこのお話しです。

 先週の金曜日、ともちゃんは朝から熱があり病院を受診しました。幸い熱は1日だけで下がりましたが、くしゃみ、鼻水、痰からみがあるので土曜、日曜は家でゆっくり静養することにしました。昼寝はしっかりしています。食欲も出てきて食事を食べる時間もだんだんと元通りに戻ってきたので、日曜日の夕食はケチャップ味のおかずを作りました。

 ともちゃんはカボチャや大根の煮物のような定番メニュー以外にも、時々豚肉を使った特別メニューを食べます。このごろはケチャップ味がお気に入りです。薄切り豚肉と野菜を炒めてケチャップで味をつけます。ミキサーでペースト状にしてしまうので、ともちゃんにとってはハンバーグみたいなものです。

 日曜日は元気をつけるために、にんにくを入れたのですが、これが昼夜逆転のきっかけを作ったようです。今までもにんにくで香りをつけたことは何度かあります。今回はかけらがペーストの中に入ってしまいました。でも、体力も低下気味だし、これで元気が出ればという気持ちで、お母さんはあえてペーストを作り直しませんでした。ともちゃんはこのおかずもよく食べました。

 ところが寝室に行ってから、体はかっかと暑くなるし、興奮しているようです。何度も抱っこの向きを変えて8時過ぎに眠りましたが、夜中の12時半に目が開いてしまいました。それからが大変でした。ウトウトとはしますがぐっすりは寝られず、何度も一瞬硬直するけいれん発作が起こっています。明け方には硬直と弛緩を繰り返すような体がガクガクとする大きなけいれん発作も起こってしまいました。

 月曜日は前夜ぐっすり寝られなかったものですから、食事もなかなか進まずウトウト、ウトウトと細切れに眠っています。おしっこも午後になって3度出ただけです。ともちゃんは寝ている間におしっこをすることはほとんどありません。(脱水状態ではなくて)昼間おしっこが出ないということは、ともちゃんの体のリズムが昼夜逆転している証拠です。逆にその夜は眠りながら2回もおしっこをしてしまいました。

 火曜日の昼寝は連続4時間もしていました。抱っこして2時間、その後布団の上に置かれてもまだぐっすり眠り続けました。ともちゃんは昼寝だと思っているときは、抱っこのまま寝て、布団に置くと目覚めてしまいます。夜寝るときは抱っこで寝かせた後は布団に置いて朝まで眠るのです。よく寝たので夕方から表情がよく出るようになってきました。お父さんに「昼夜逆転して、今夜も起きていようと思っているな。」と言われて、「へへーん」と笑っていました。

 水曜日、昨夜は予想に反してよく寝たし、ともちゃんの体調も良くなってきたので、少し外に出て太陽の光を浴びさせました。太陽の光を浴びると脳の中でメラトニンという物質が分泌されてしっかりと目覚めることができると聞いています。この日の昼寝は40分、これで元のリズムに戻ってくれそうです。今までともちゃんは体調が悪いときは、それが治っても慎重すぎるほど家で静養していました。その方が安心だからです。でも、今度からは昼夜逆転という新たな敵も出現して、このことも考慮して、養生しなくてはいけません。もちろん、にんにく料理も要注意です。

 今日木曜日は知的障害児の通園施設のプールを養護学校小学部の保護者で借りている日です。この通園施設は障害児の在宅支援事業の施設になっており、夏休み中のプールを障害者団体に開放しているのです。ともちゃんは病み上がりなのでプールは無理です。それに長時間の外出もしんどくなります。でも、1時間程度、友達の声を聞いたり、気配を感じたりするという目的だったら、ともちゃんの気分転換に良いかもしれないと出かけました。ともちゃんはお母さんに抱っこされて、友達と大きなブランコに乗って大喜び。たくさんの友達の気配を感じてすっかり元気になりました。

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1998年8月14日(金)

ちょうど今週はお父さんの夏休みなので、日帰りで何度もお出かけしました。1学期、ともちゃんの体調が悪かったので、昨年のような1泊旅行の計画は立てていません。毎年泊りがけで出かけていた京都のおばあちゃんの家も今年は日帰りで行きました。

 ともちゃんの公園めぐりがこの間に再開できたのは嬉しいことです。昨年の5月に「大阪府営公園18カ所を全て制覇するぞ。」と公園めぐりを始めました。しかし、せんなん里海公園とりんくう公園の2カ所を残したまま体調を崩していました。本当は海水浴シーズンが始まる前に行きたかった公園です。海水浴シーズンで道路が渋滞していたり、公園での散歩は日差しがきつくて暑かったりしたけれど、夏の海の雰囲気を感じながら潮風をいっぱい浴びての散歩は楽しいものでした。

 通天閣の展望台にも初めて登りました。ともちゃんは通天閣のすぐ近くの病院で生まれました。そして、今でもこの病院で1年に1度健康診断を受けています。ともちゃんの家からは遠いので、ここで健康管理や治療をすることは普段はありません。しかし、ともちゃんはどこで何が起こるかわかりません。それとこの病院で育ててもらったという懐かしさもあって、1年に1度、検診に通っています。今年はちょうどお父さんの休み期間中で、お父さんの車で行くことができたので、通天閣にも寄ってみました。

 満員のエレベータを降りると、狭い展望台は人でいっぱいで、車椅子で移動するのに「すみません。」と声をかけてぶつからないようにしなければならないくらいでした。最初にともちゃんの生まれた病院を探したら、すぐに見つかりました。他にも最近できた遊園地や温泉もすぐ下に見えました。大阪ドームも見えました。ともちゃんはビリケンさんと一緒に写真を撮りました。ビリケンさんというのは通天閣に祭られている神様のことですが、ともちゃんのお友達にこのビリケンさんそっくりの子供がいるのです。弱視のともちゃんには大阪の景色がどのように映ったかわかりませんが、下りのエレベータでは満足そうに笑っていました。

 今日14日は、お母さんの提案で琵琶湖方面に出かけました。名神高速道路は京都まで片側3車線(トンネル区間は4車線)になったし、お盆が始まったばかりなのでまだ下りが混んでいるだろうと思っていました。しかし、予想に反して名神の上りは茨木インターを過ぎた当たりから大渋滞しています。2時半には帰宅したいともちゃんは、当てのない渋滞にはつき合えません。京都南で名神を降りて、急遽行き先を変更。京奈和自動車道を通って奈良に向かいました。奈良は去年泊りがけで行きましたが、そのとき行かなかった平城京跡の朱雀門を見に行くことにしました。その前にファミリーレストランで家族揃って食事です。ともちゃんはもちろんお粥ペースト弁当です。

 今までのお出かけでは、まずは公園内の休憩所のようにともちゃんがゆっくりと食事をできる場所を探します。そこで、ともちゃんはお弁当を食べるのですが、そこには食べ物を売っていないことが多いので、他の家族は食事ができません。それで、帰り道のサービスエリアの狭くて混んでいる食堂で、ともちゃん以外は慌ただしく食事をとります。ともちゃんの両親は食べるのが早いので、ほんの5分か10分くらいのことですが、ともちゃんはお父さんに抱っこされて待つことになります。ともちゃんはすでに食事が終わっているのですが、食堂でみんなが食事をしている雰囲気、食べ物の匂いを感じて、面白くなかったに違いありません。今日はファミリーレストランでみんなで食べようねと約束していました。

 朱雀門は平常宮跡の広い原っぱの中に立てられていました。駐車場や資料館のあるところからは、原っぱを横切る遊歩道がついていて、私鉄の踏切を越えて延々と歩いていきます。夏休みのお出かけでは、ともちゃんの車椅子の首を固定している枕が暑くなるのを防ぐために、アイスノンを持ち歩いています。これを枕と頭の間に挟んで、日傘を差して、往復1時間の道のりを朱雀門まで散歩しました。日差しも以前ほどは強くなく、赤トンボが飛んでいました。遊歩道をはずれると大人の背丈以上の草が生えている所もあって、今日は草の匂いをたくさん嗅ぎました。笑顔がたくさん出ていました。

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1998年8月16日(日)

お父さんの夏休み最後の今日は、舞洲障害者スポーツセンターに行きました。お盆なので阪神高速道路が空いていて、はやく着くことができました。地下の車椅子用の駐車場からは、雨の日でも濡れることなく、エレベータで1階の受付に上がれます。

 受付に着いたときには、まだ利用の申し込みが始まっていませんでしたが、前日から宿泊していた作業所のお兄さん達の団体がすでにずらりと並んでいました。ともちゃんのお母さんも、あわててともちゃんの身障者手帳を持ってこの列に加わりました。ボーリングとトランポリンとプールを申し込みました。

 長居のスポーツセンターに行ったときの経験から、まずボーリング場の予約に行きましたが、まだレーンは空いていてすぐに使えました。ともちゃんにとっては6カ月ぶりのボーリングです。投球する前から、隣のレーンの団体の歓声を聞いてニコニコしています。スロープを使ってボールを転がすときも、話しかけると良い表情で答えてくれて、腕も緊張せずにボールにふれることができました。

 今回は学校で行ったときのようにガーターを無くしてもらいました。ともちゃんの今回の目標スコアは100点。でも、そのためにはスペアをとらなくてはなりません。お母さん、お父さん、お姉ちゃんはスペアを次々にとって競っていますが、ともちゃんはなかなかスペアがとれません。ところが8フレームと10フレームでなんとストライクが2回も出ました。

 ともちゃんのスロープを一生懸命調整している家族にとっても、ストライクは感激です。家族の大歓声にともちゃんは驚いたのか、いったい何が起こったのというような困った表情です。そして、大逆転。ともちゃんは目標どおりのスコア、ちょうど100点で家族の中で優勝しました。他の家族ももちろん全力を尽くして投球していたのですが・・・。終わってから、ともちゃんすごいなあと声をかけるとうれしそうでした。

 ボーリングの後はトランポリンです。最初お父さんに抱っこしてもらって高く跳ぶとぎゃはぎゃはと声を上げんばかりに口を大きく開けて大喜びです。でも2回目はお父さんと跳んでも、お母さんと跳んでも嫌な顔をしています。あくびが出て、どうやら眠くなったみたいです。ともちゃんはトランポリンの陰に隠れて、お母さんの抱っこで昼寝をしました。この部屋の係りの人がともちゃんの車椅子を「キティちゃんの車椅子として売っているもの」と思っていたと聞いて、ちょっとうれしくなったお母さんでした。

 昼食後、ともちゃんが無理しないように午後からのプールは止めて帰ろうかと両親が話していると、お姉ちゃんがともちゃんが不満そうな表情をしていると教えてくれました。そういえばそうです。午後の設備使用は1時から始まります。どうしようか迷いながら、時間を待っていました。プールが見えるスペースがあるというので、ともちゃんと一緒にそこに来て、「プール入ってから帰るか。」と聞くと満面の笑顔。ともちゃんの意見を尊重して少しだけ入ることにしました。

 更衣室も家族更衣室というのがあって、この中にともちゃんが横になれるベンチもあって便利でした。子供用プールに少し入ってジャグジーで暖まって上がりました。楽しかったけれど、プールには大きな問題点がありました。子供用のプールに階段がありません。初めて入るともちゃん達は深さが分かりません。お父さんは家の近くにあるプールの子供プールの深さと同じくらいだろうと、ともちゃんを抱っこして、立ったままで片足を入れたら思ったより深かったのです。

 お父さんはともちゃんを抱っこしたままプールの中でころびそうになりました。監視員の人もあわててこちらにやって来ましたが、お父さんは何とか持ちこたえました。本当に危ないところで、今思い出してもぞっとします。そのときは何もできませんでしたが、何らかの方法で舞洲障害者スポーツセンターの方に危険だということを提言しなければと思っています。

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1998年8月26日(水)

 ともちゃんは生活のリズムをつけるために、毎朝1時間弱家の近くを散歩しています。今日は6年生のお姉ちゃんが、飼育当番として学校に動物の世話をしに行きます。ともちゃんは喘息の持病があるので動物は苦手なのですが、「よかったら小学校に散歩に来て、遠くから見たらどうや。」と誘ってくれました。

 それで、お姉ちゃんの小学校に行ってみることにしました。学童保育は夏休み中も小学校の教室でやっているので、保育所のときのお友達や交流で仲良くしてもらっている養護学級のお友達にも会えるかなとも思ったのです。しばらく遠くからお姉ちゃんの仕事ぶりを見ていました。いつもなら運動場で遊んでいるはずの学童保育の子供達がいません。学童保育OBのお姉ちゃんはあっさりと「教室に行ってみたらええねん。」と言います。学童保育の先生は、時々ともちゃんの下校時に声をかけて下さいます。お母さんも「今度遊びに行かせて下さい。」と話していたので、教室に行ってみました。

 今日は夏休み最後のお楽しみ会の準備をしているということで、みんな教室でいろんなものを作っていました。先生が畳の上を空けて下さり、そこにお邪魔させてもらいました。今は3年生は学校のプールの時間だということでした。2年生の男の子が「僕、保育所で同じ組やってんで。」と来てくれました。ともちゃんの保育所は4、5歳混合クラスだったのです。ともちゃんは久しぶりに子供の声がたくさん聞こえて、喜んでにこにこしています。知らないお友達もともちゃんのことを「細いねー。」、体重を聞いて「軽いねー。」、よく見て「毛深いねー。」、「これは薬の副作用やねんで。」と話しかけてくれました。

 3年生が泳いでいる小学校のプールサイドを覗いて帰ることにしました。でも、プールサイドへ行こうと思えば、シャワーのある入り口から入っていくしか方法がありません。思い切ってお母さんはともちゃんを抱っこして「交流に来させてもらっている者ですけど、プール見学させて下さい。」と入っていきました。そうしたら、プールサイドにおられた先生がともちゃんが横になれるようなマットを持ってきて下さり、その上「よかったらプールに浸かっていきませんか。」と声をかけて下さいました。

 お母さんはほんの少し覗かせてもらうだけのつもりだったのですが、こんなに親切にしていただいて恐縮してしまいました。プールに入る件は、ともちゃんがプールに入るには水温が高いなどいろいろと条件が整わないとだめなんですという理由を話して、お断りしました。ともちゃんは日差しがまぶしくて、ずっと目を細めていましたが、友達の気配、水しぶきの音、プールの水の匂いなど感じてくれたと思います。家に帰ると満足げにニコニコしていました。

 厚かましくも、いきなりお邪魔させてもらったのに、学童保育の先生もプールサイドの先生も快く迎えていただき、ありがとうございました。

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1998年8月31日(月)

 夏休み最後の日、ともちゃんはお母さん、お姉ちゃんと駅前の百貨店に行きました。実はこれには企みがありました。ともちゃんと一緒に路線バスに乗ってみようというのです。ともちゃんも、お母さんに抱っこバンドで抱っこされてなら路線バスに乗ったことがあります。けれどもともちゃんもだんだん成長してきて、抱っこバンドでは窮屈になってきました。

 今のともちゃんが外出する普通の状態で、路線バスに乗ってみたいと思いました。大阪市バスではリフト付きの路線バスも運行されていると聞いていますが、ともちゃんの地域の路線バスにはそういうバスはありません。乗車口のステップも高く、通路も狭いバスに折り畳んでも重くてかさ高い車椅子を乗せることは不可能です。おまけに首も座っていないともちゃんの車椅子は、体の様々な部位を支えるための付属部品が多くて、全ての付属部品も同時に持つことはさらに想像を絶することです。

 それで、車椅子に乗り換える前のともちゃんの愛車、身障者用のバギーに座位保持装置(子供用のカーシートのような格好をしていて、シーティングといいます)を取り付けたもので出かけました。この計画を立ててから、お姉ちゃんにはバギーの折り畳み方を練習してもらったので、お姉ちゃんはすばやく折り畳んで、シーティングと折り畳んだバギーを両手に抱えられるようになりました。

 とはいっても、往路はタクシーを利用しました。30分に1本しかないバスは混んでいることが多く、立っている人が何人かいれば、もうバギーを乗せることができなくなるからです。帰路は始発なので大丈夫でしょう。いつもバスは早めに到着して時間待ちをしていますから、バギーもゆっくりと積み込むことができます。もちろん、ともちゃんを抱っこしたお母さんも座席に座ることができるでしょう。

 タクシーに乗り込むときも、お母さんはともちゃんを抱いて先に後部座席に座りました。お姉ちゃんがバギーを畳んでくれました。百貨店に着いたときは開店したところだったので、店員さんがずらりと並んで「いらっしゃいませ。」とおじぎをしてくれます。大人にとっては少し恥ずかしいのですが、ともちゃんはこれが気に入ったようで、シャキッとした良い表情に少し笑みを浮かべてキョロキョロしています。

 開店したての百貨店は中をバギーで回っても、混んでいないのでスムーズに移動できます。買い物もして、3人でプリクラもとって、帰宅時間になりました。最初から11時15分発のバスに乗ろうと決めていました。早めに行って、ゆっくりと乗り込むつもりでした。バス停に着くとすでにベンチに座ってバスを待っている人が大勢いて、当てが外れました。座席には充分座れますが、後ろ方の座席になると、今度は運転席の横にある降車口まで向かうのが大変になります。

 乗車位置に一番に並んでバスを待ちました。おかげでともちゃんとお母さんは前の方の優先座席に座ることができましたが、逆にバスが見えるまでともちゃんがバギーに乗っていたので、お姉ちゃんの方は大変だったようです。何人も抜かされて、親切な方にバギーを持ってもらって、自分はシーティングを抱えて乗り込んできました。幸い一番前の席が空いていて、そこに落ちつきました。

 わずか15分程のバスの旅です。ともちゃんは窓の外の景色(というより明るさ)が移り変わるのが気になるのか、きょろきょろしていました。家の前のバス停に着きました。一番最後に落ち着いて降りることにしました。バスが時間待ちをしていた間にお母さんは運転手さんにともちゃんが障害者である旨を伝えて、運賃の確認もしていたので、安心でした。降りるときも親切な方(乗ったときと同じ方)がお姉ちゃんにバギーを持っておりましょうかと声をかけて下さいました。

 車椅子(バギー)で移動していると、他の人の親切に頼ならなければ移動できないこともあるので、こういう親切は大変有り難いものです。どうしても自分たちだけで不可能なときはこちらこら声をかけてで他の人の応援を頼まなければなりません。けれども、今回は3人で路線バスに乗れるかどうかの試行でもあったので、お礼を言って断り、お姉ちゃんに頑張ってもらいました。うまくバギーとシーティングを両手に抱えて、スムーズに降りてきてくれました。大成功。お姉ちゃんも大活躍でした。

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1998年9月11日(金)

 2学期が始まりました。ともちゃんも、ぼちぼち学校のある生活に慣れて、元気で登校しています。2学期早々うれしい出来事があります。1学期は体調が悪く、朝ウトウトしながら登校していたので、シーティング(座位保持装置)に座ってバスに乗ることは全くできませんでした。ずっとお母さんの抱っこでバスに乗っていました。それが2学期になってからは、もう何度もシーティングに座って登校しているのです。

 思い切ってシーティングに座ってみた日のことです。ともちゃんは何か新しい乗り物に乗ったとでも思ったのでしょうか、それともお姉さんになった格好いい姿をみんなに見せられるのがうれしいのでしょうか。大きな口を開けて満面の笑顔でうれしそうです。バスの先生に「ともちゃん、かっこいいな。」と言われて、またニコニコしています。ずっと気分は高揚しているようで、後ろの席のお兄さん達の声を聞いては、負けずに「おーおー」と声を出したり、次々に乗りこんでくる友達の気配に目をらんらんと輝かせたりしていました。

 健常児なら、赤ちゃんでも成長に応じて自分からどんどんと新しい世界を切り開いていきます。ともちゃんの場合は自分で世界を切り開いていくことは無理なので、周りから発達段階にちょうど良い環境を与えてあげなければなりません。その上ともちゃんは体調を崩しやすく、体調によってもその時々の最適の環境は異なります。ですから、ともちゃんに新しいことや久しくしていなかったことをさせてみるとき、それをともちゃんが受け入れられているのかとても心配です。

 今回のシーティングに座るということでは、今までにない積極的な喜びを示してくれました。お母さんにとっても、ともちゃんのこの笑顔はとてもうれしいものでした。もちろんずっと座っていけるというのではなく、昼寝したいときやしんどいときは抱っこでバスに乗っています。でも、ともちゃんは一つ成長のステップを上がったような気がします。

 そしてもう一つ、ともちゃんは文字どおり成長して身長が伸びました。いままでの座席では足をピンと突っ張ったときに、足が前の板に当たってしまいます。ともちゃんは手や足を突っ張ったときに障害物に当たるとよけいに緊張してしまいます。それで、1つ後ろの座席にシーティングを付け替えてもらいました。ここでは足を思いっきり伸ばしても前の席に当たることはありません。まだまだ身長が伸びても大丈夫です。新しい座席で元気に登校しているともちゃんです。

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1998年9月23日(水)

昨日は台風が来て暴風雨警報が発令されたために、思いがけなく学校が休校になりました。明日はリハビリの病院で整形外科の診察を受けるために、学校を休んで通院します。ですから、今日秋分の日のお休みには、家族で出かけたいと思います。でも日曜日に運動会が控えているので疲れない程度のお出かけ・・・ということで神戸方面に向う阪神高速5号湾岸線をドライブすることにしました。

 台風は和歌山、奈良、滋賀と通過していったので、神戸方面は台風の影響はないでしょう。また海沿いを走るので、途中でともちゃんは海岸の散歩もできるでしょう。ともちゃんはしばらくシーティングに座っているように進行方向に向いて座る格好で抱っこしてもらって、ご機嫌でした。お母さんが横向きにシートに座るのです。

 湾岸線は空いていて、どんどん走ることができます。ともちゃんがいつもの抱っこに向きを変えてウトウトしていている間に終点の六甲アイランドに着きました。南端の海岸まで道路を突き当たると公園になっているようで、すでにたくさん車が止められています。ともちゃんも車椅子に乗って行ってみることにしました。ここは「アオイア」という遊園地の裏側に当たるのですが、遊園地は現在休園中ということでした。

 コンクリートで固められた岸壁の下は鉛色の海です。南の空は海と同じ様な鉛色の雲が続いていてちょっと不気味ですが、北側の六甲山の上には青空が広がっています。この海岸線がちょうど天気の境目になっています。釣りをしている人が何人もいました。家族で散歩をしている人たちもいます。遊園地の裏側は海辺に沿って公園のようになっていて、ともちゃんも少し散歩を楽しみました。

 もちろん恐いので岸には近づきません。ともちゃんは空や遠くの海を眺めていました。木の枝や葉が落ちているのが台風一過という感じです。お母さんは台風のために海が鉛色なのかと思っていましたが、西宮育ちのお父さんに言わせると「神戸の海の色はこんなんや。」ということでした。来年の夏はともちゃんと明石海峡大橋を渡ってみたいと思っています。その下見も兼ねて、これからは神戸方面のお出かけも多くなりそうです。

 さて、今回で「ともちゃんの日常」は100話を迎えました。ともちゃんの養護学校入学を期に書き始めましたが、ともちゃんは3年生になりました。体重も15Kgを越えて、ちょうど出生時の10倍です。これからも楽しい経験をたくさん積んで、元気に成長して欲しいと願っています。そして、これからも、そんなともちゃんの日常を綴っていきたいと思っています。

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