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12日(土)
「長岡天満宮」
14日(月)
「奈良春日大社」
16日(月)
「抗けいれん剤の調整2」
25日(水)
「本番に強いぞ、音楽会」
22日(金)
「お父さん不在」
けれども脳が活発に活動するようになると、今度はけいれん発作がだんだん多くなってきます。6月の半ば頃からは、悲鳴を上げて全身をガクガクとさせる状態が1分くらい続く大きな発作が頻繁に起っていました。けいれん発作とはうまく付合っていかなければならないと思っていますが、大きな発作の頻度をもうちょっと少なくしたいものです。それで、まず血液中の抗けいれん剤の濃度を調べてもらいました。
14日にその結果を聞いたのですが、デパケン(バルプロ酸)が35(適値100)、アレビアチン(フェニトイン)が5(適値10余)と思いがけなく非常に低い値を示していました。昨年秋に調べた時も、入院中も、血中濃度は適値範囲内ということだったのですが、「ともちゃんの体重が増えてきたことと、経管栄養になったために水分が十分に摂取できるようになったこと(薬が体外へ排泄されやすくなる)が影響しているのでしょう。」とのことでした。
抗けいれん剤の量を増やして、血中濃度を調整しなくてはなりません。今までもともちゃんの体重が増える毎に薬の量を増やして血中濃度を調節してきました。薬を増やした当座は、ともちゃんの身体が薬の量に慣れないために、ボーっとしんどそうな日がしばらく続いていました。今回もそれは覚悟しなければなりません。けれども、むしろ夏休みの間に薬の調整が済んでしまえば、2学期が楽に過せるでしょう。
21日の血液検査の結果では、デパケンが49、アレビアチンが9まで上がっていました。この1週間は大きな発作も起っていません。いい調子です。しかし、夏休に入ってから、ボーっとして朝食がなかなか進まない状態が続いています。もちろん、自力での排便もなくなりました。ボーっとしているので、夏風邪気味で少し痰が増えても、深い呼吸をして痰を切ることができずにロボタ(酸素濃縮器)のお世話になっています。今は早く薬の量にともちゃんの身体が慣れてくれることを待ち望んでいます。
今回のお出かけは、ともちゃんが体調を崩して以来初めてのお出かけであり、お出かけ先でミルクの注入を行う初めての機会でもあります。今回は、お出かけの時にミルクが注入できるような準備(事前に注入の場所を確保したり、車椅子にイルリガートルを吊り下げるためのハンガーを取付けたり)までする余裕がありませんでした。とりあえず車の中で注入してみて、問題点があったら改良するという方向で考えることにしました。
ともちゃんの久しぶりのお出かけだというのに、行きの高速は渋滞していました。お姉ちゃんも隣で眠っていることだし、ともちゃんも今のうちに寝ておこうとお母さんはともちゃんを寝かそうとしましたが、ともちゃんは「今日はいつもと違うぞ。」と分かって、少しワクワクしているようです。ちっとも寝てくれません。
9時に自宅を出発したのに、神戸に着いたのは11時過ぎでした。ともちゃんの注入時間なのでポートタワーの見える場所に車を止めました。哺乳ビンに作ったミルクをイルリガートル(経管栄養剤を入れるビニールの袋)に入れて、イルリガートルを車の後部座席の窓の上の手すりにS字フックを使って吊り下げました。高低差を作るためにお母さんは車の床にともちゃんを抱いて座りました。
ともちゃんの車は1300ccの小型車なので、助手席を目一杯前方に寄せても、ともちゃんを抱っこしたお母さんが床に座るととても窮屈です。しかし、ともちゃんの姿勢も確保できて、ゆっくりとミルクが落ちています。この様子を見ていたお父さんがS字フックがなくなるとその分高低差が大きくなるだろうと、イルリガートルを手で持ってぶら下げてくれました。おかげでいつもの速度で注入できました。
ともちゃんのお腹も落着き、南京町を目指しました。最初は少しこわばった顔つきでしたが、車を降りてアーケードのある元町商店街を通る時に、車椅子の両横からお姉ちゃんとお母さんが話しかけたり、手を握ったりすると、リラックスして笑顔が出ていました。商店街の賑わいも、ともちゃんのお出かけの気分を高めました。
南京町に着いてからは中国ムードあふれる門や建物の前で写真を撮ったり、店の前で売られている品物を見ながら散策しました。以前からお母さんはともちゃんにチャイナドレスを着せてみたいと思っていたので、お土産に赤い上着を買いました。長袖で、大きめのを買ったので、涼しくなった時に上着として学校に着ていくことができます。
昼食のお粥は家に帰って食べる予定です。行きの渋滞で到着時間が遅れたため、散策は早めに切上げざるを得ませんでした。ともちゃんは帰る頃には人込みのざわめきにお出かけの楽しさを思い出したのか、たくさん笑顔を見せてくれました(ともちゃんは、眠くなると喜怒哀楽がより大きく現れるということもあるのですが)。
南京町にはアーケードがないので、日傘をさして氷枕をしても、灼熱の暑さです。ともちゃんは暑さで疲れたのと、お出かけに満足したのとで、順調に車が流れる帰り道では家に着くまでぐっすりと昼寝をしていました。しっかり活動して、ぐっすり昼寝をするというメリハリのあるよいお出かけのリズムが復活したことをお母さんはうれしく思っています。
長岡京市に近付いて国道に出ると、対向の下り車線はひどい渋滞です。高速の渋滞を避けた車が一般道にも流れて来ているようです。これでは、帰りのことが思いやられます。お父さんやお母さんの心配をよそに、ともちゃんはお姉ちゃんのマンガの話を聞きながら(内容はともかくお姉ちゃんの声を聞いて)ゴキゲンにしています。
少し道に迷いながらも、長岡天満宮に到着。出発時間が遅かったこともあって、まずは駐車場でミルクの注入です。ともちゃんの家の狭い車では、注入中はお姉ちゃんの座るところがないので、車外で待たされています。今回はその間に車椅子で天満宮の社殿まで行けるかどうかを偵察してきてもらいました。残念ながら、社殿のところに行くには絶対に階段を上らなくてはならないとのことでした。その代わり、境内にある池の周りはともちゃんにぴったりの散歩コースになっているとのことでした。
注入が終ってさあ散策です。最初は池の周りの木陰の道をセミの声を聞きながら進んで行きました。木の低いところに茶色い羽をしたアブラゼミが止まっていたので、お母さんが手を出すと簡単に捕まえられました。少し弱っているようです。ともちゃんにセミを見せてあげました。目の前に差し出すと「何が目の前に来たんだろ。」とまずは驚きの表情。しかし、そのうち「平気だよ。」と表情が緩んで、あとは「興味がない。」と知らん顔。
ともちゃんの手にセミを這わせてみました。弱っているセミなので暴れることはありませんが、セミの足についているトゲトゲでともちゃんの皮膚を引っかいています。ともちゃん自身は知らん顔ですが、見ていてチクチクと痛そうなので、もうセミは逃がしてやりました。ともちゃんはセミよりもでこぼこ道で車椅子がゆれる方がお気に入りで、笑っていました。
後半は池の中に作られた木製の遊歩道を行きました。散歩の間中、お姉ちゃんはずっと車椅子に乗ったともちゃんと手をつないでくれていました。池には魚やカメがいたのですが、残念ながらともちゃんの車椅子からは見えません。蓮池のところで写真を撮ろうとして家族でわいわい騒いでいると、賑やかさがうれしかったのかともちゃんも一緒に笑っていました。
帰りは来る時に見た渋滞を避けて、山道を抜けようとしたのですが、思っていた場所のずっと手前で山から下りてしまい、結局大変な渋滞に巻込まれてしまいました。ともちゃんの昼食は遅くなりますが、せめて水分はしっかりと補給させてあげたいので、コンビニの駐車場に車を止めてお茶の注入をしました。帰りは時間がかかるからと、お母さんはともちゃんを寝かせようとしましたが、ともちゃんは興奮気味で元気一杯、ずっと目を開けていました。
今日はお父さんの夏休みの最後の日なので、遠くへ行ったなあという気分にはなれるけれど、実際は道路も空いていて比較的短時間で往復できる奈良に行くことにしました。奈良は3年前にともちゃんが始めて(そして、今のところ唯一の)お泊りをした場所でもあります。今回はその時行かなかった奈良公園の奥の春日大社に行くことにしました。
車に乗る前から、興奮気味だったともちゃんは春日大社の駐車場に車を止める頃には少し疲れが見えてきました。鼻のチューブからお茶を少し注入して様子を見ていました。ともちゃんの目の動きが止まって、目が空ろになってきました。お母さんが「ともちゃん、寝そうやで。」と小声で言うと、ともちゃんは「えへぇーん。」と声をだしてニコニコ。「寝ませんよーだ。」と言っているようです。また、目が輝きを取り戻しました。
木立の中の山道を車椅子で散歩しました。奈良公園から歩いて春日大社に向う参道は階段が続いています。でも、車を停めた本殿近くの駐車場からは石ころや砂利の坂道になっているので、車椅子でも境内を散歩することができました。ただ、本殿は石段を上ったところにあって入れませんでした。すっかりお馴染みになったセミの声を聞きながら、お父さんが砂利の坂道で車椅子を押してくれました。ともちゃんは車椅子がガタガタゆれるのが楽しいようです。
今夜は偶然にも春日大社の参道に並ぶたくさんの石灯籠にろうそくを灯す万灯籠の日でした。ともちゃんも坂道を通って石灯籠の並ぶ階段の道まで出てみました。まだ午前中だというのに人通りも多く、鹿もたくさんいました。喘息で動物が苦手なともちゃんなので、あまり近づくことは避けたいのですが、鹿を見せてあげたいという気持ちもあります。少し離れて「ともちゃん鹿がいるで。」と声をかけながら、鹿と写真を撮ろうとしましたが、鹿の方が逃げて行ってしまいました。
散歩の後、車の中でミルクの注入をしたのですが、お父さんもお母さんも、車の中での注入の要領を覚えて手際よく行なうことができました。当分はともちゃんの注入は、車の床にお母さんに抱っこされて座って、お父さんがイルリガートルを手で持つという方式で間に合いそうです。
今日こそ、遅くならずに昼食の時間通りに帰宅できました。帰りの車の中で眠っていたともちゃんは、家に帰っても元気一杯ではりきっています。声を出したり、足を動かしたり、つっぱったりしています。「今日のお出かけはもうおしまい? もっと、長くお出かけしたかったよー。」と言っているのかもしれません。来年は注入セットとお昼のお粥弁当を持って、もっと遠出できるようになっていればいいですね。
けれども、今年のともちゃんは鼻腔から胃まで通した経管栄養のためのチューブをつけています。この経管栄養チューブは頼もしい味方です。痰がからんで口から飲食しにくい時でも、確実に水分や栄養をともちゃんに与えることができるのです。
ともちゃんの2学期は、みんなより1週間遅れて9月7日に始まりました。無事2学期のスタートを切れたのも、鼻のチューブのおかげです。元気になって登校し始めると、ともちゃんの生活にもメリハリがついてきました。先週は、1週間のうちの4日も登校することができました。
学校では、10月1日に行われる運動会に向けての練習が始まっています。ともちゃんのいるたんぽぽ組でも、ダンスの衣装や小物作りですっかり運動会気分です(作って下さるのは先生で、ともちゃん達は頭のサイズを計ってもらったり、試作品を持たせてもらったりしています)。
昨年の運動会は、ともちゃんは自分の出番だけは参加できました。けれども、練習は体調不調であまり参加していません。今年はすでに全体練習に何回も参加しています。入場行進のときには高等部のお兄さんお姉さんの生演奏を聞いてにっこりしたり、応援合戦ではキョロキョロしたりしています。
これからも、しんどい時には口から食べることで苦労したりせず、経管栄養の注入回数を増やして大きく体調が崩れることを避けたいと思います。2学期のともちゃんの目標は「昨年よりも元気に過して、1学期と同じ程度の登校日数を維持する」ということです。行事もたくさんある2学期、まずは元気に運動会を迎えましょう。
今年のともちゃんは、季節の変り目の喘息発作に襲れそうになりながらも、何とかマイペースで登校を続け、練習にも参加することができました。今年の競技は、「くぐって、とんで、みんなでリレー」です。まず全員がそれぞれ縄跳びを披露し、その後、紅白に分かれてリレーをするのです。演技は「ディズニー・オン・パレード」で、ディズニーのキャラクターになってサンバを踊ります。
競技は開会式後のラジオ体操に続いて始りました。知的障害の子どもたちにとって、運動会は体育の授業で学んだことをみんなの前で披露するという意味を持っています。今年は、授業で縄跳びとバトンの受け渡しを練習したようです。もちろん、知的障害のお友達も発達段階はそれぞれに異なりますから、目標も、できることもそれぞれ違います。
ともちゃんのような重症心身障害児にとっては、できるようになったことを頑張って披露するというのではなくて、むしろ運動会の雰囲気を楽しむということに重点が置かれています。それで、縄跳びはいくつものコースに分かれています。
ともちゃんも含めて、重複障害の子どもたちは先生に抱っこされて、ぬいぐるみやビーチボール、テープのぶら下がったトンネルを通り抜けた後、先生に抱っこされて大縄を跳ぶ感触を楽しみます。その他には、平均台を渡った後に縄を潜り抜けるコース、大波を跳ぶコース、大縄のまわし跳びのコースがあり、それぞれに先生と一緒に跳ぶお友達や一人で跳ぶお友達など、様々な跳び方があります。
重複の子どもたちのコースは最初に行われ、その中でもともちゃんは一番にスタートします。ともちゃんは先生に抱っこされて、ぬいぐるみやビーチボールに触れながらトンネルをくぐってきました。この時、すでにともちゃんの顔には笑顔が見えました。大縄をぴょんぴょんと高く飛んでもらった時はケラケラ嬉しそうに笑っていました。5回数えて跳びました。
ともちゃんは、トランポリンなどのジャンプや大きなゆれが大好きです。ですから、縄跳びもきっと喜ぶだろうなあとお父さんもお母さんも思いました。けれども、ともちゃんは最初から縄跳びを喜んだわけではありません。練習の時は、跳んでいる間は驚いた表情をしていて、終った後にニコニコしていたとのことでした。
跳び始めると、ともちゃんは「いきなり、何が起ったんだろう。」とびっくりして、跳び終った後には「なーんだ。ぴょんぴょん跳んで遊んでるんや。」と、安心感とおもしろさがじわーっと沸いてきたのかもしれません。本番で縄跳びが楽しめて、笑顔を見せることができたのも、ともちゃんが練習に参加した成果です。「今日が一番いい表情やったなあ。」と先生に誉めてもらいました。
次はリレーです。知的障害のお友達は、体育の時間に、バトンを貰って、それを持って走って、次の人に渡すということを発達段階に応じて学んでいたのでしょう。重複のお友達の中にも、車椅子に乗っていても次の人に渡すまで手にしっかりとバトンを握っていることができる子もいます。
手の握力もコントロールできないともちゃんは、物干し竿を挟む大きな洗濯挟みにバトンを挟んでもらいます。洗濯挟みに紐をつけて、ともちゃんの手首に引っかけた上で、ともちゃんの手の平に洗濯挟みを置いてもらい、ふわっと握らせてもらいました。抱っこで次の走者にバトンを渡しに行くのですが、そのちょうど真ん中の位置、お母さんのカメラの前で、ともちゃんはポトンとバトンを落してしまいました。
実は練習の時も同じ所でバトンを落して、先生から「本番でもバトン落すの?」と聞かれて、ともちゃんはガハハハと笑っていたそうです。運動会から帰ってから、お姉ちゃんに「ともちゃんバトン落したやろ。」と言われても、やはりともちゃんはガハハハと嬉しそうに笑っていました。ともちゃんにしてみれば「予定通りの行動や。」ということでしょう。
今年のダンスは衣装に注目です。どのクラスもミッキーマウスの柄のエプロンを着けたり、ミッキーの耳のお面をつけたりしているのですが、ともちゃんたちのたんぽぽ組はさらに凝っています。子どもたち6人がミッキー、ミニー、ドナルド、デイジーにそれぞれ扮するのです。
ともちゃんはデイジー、女の子のあひるです。ピンクのTシャツと、先生が作って下さった紫色のヒラヒラのスカート、そしてスカートの下には黄色の半ズボン(デイジーの足が黄色なので)をはいています。頭には、子どもたちそれぞれの頭のサイズに合せて作ってもらった帽子をかぶっています。
帽子にはキャップのつばに当たるところにデイジーの黄色いくちばしがついていて、その上にデイジーの目もまつげも本物そっくりに描かれています。頭にはピンクのリボンもついていて、とてもかわいいのです。この衣装を身に着けたともちゃんは、とても良く似合っていて、一段と素敵です。
すっかりデイジーになりきったともちゃんは、先生に抱っこしてもらって、サンバのリズムに合せて、ミニサイズのペットボトルで作ったマラカスを鳴らしています。さらに驚くことには、子どもたちを抱っこした先生のおそろいのプーさんのTシャツの背中には、抱っこしている子供の顔と子供が演じているキャラクター、それに「たんぽぽ2000」のロゴがプリントされているのです。
練習の時、ともちゃんはマラカスの音に驚いていたそうですが、だんだんと慣れてきて、大きな音を出すほど、喜ぶようになったということです。当日も余裕の表情で、先生に手を添えてもらって鳴らしていました。
今年も、運動会に完全参加というわけにはいかず、ミルクの注入を済ませて、午前中で早退しました。家に帰ると、昼食を食べながら早速運動会のビデオを再生しましたが、入場行進の高等部のお兄さん、お姉さんたちの演奏する「ドレミの歌」が聞こえると、キョロキョロそわそわしていました。しっかり運動会の雰囲気を楽しめたようです。
家族でのお出かけの場合は、ともちゃんの体調に合せて出かければ良いのですが、学校行事の時はいつも悩むのです。なにしろ、ともちゃんは学校大好き。先生や友達と一緒に学校行事にはできるだけ参加させてあげたいのですが、学校行事の日程ばかりは、ともちゃんの体調に合わせて変更する訳にはいきません。
今回のお話はお母さんが音楽会への参加を迷ったけれど、ともちゃんが元気に満面の笑顔で楽しく参加することができたというハッピーなお話です。
昨年は、体調不良のために参加できなかった市内の小学校合同の音楽祭ですが、今年は体調も安定して、練習にも何度か参加しました。ともちゃんが演奏する楽器は、積み木ブロックの鉄琴です。ばらばらの積み木ブロックの一つ一つに一音づつの鉄琴がついているもので、その中から、ともちゃんが演奏しやすい大きさで、演奏曲目に合う音を3音選んで先生がガムテープでひとつにつないで下さいました。
ともちゃんは、先生に積み木ブロックを持ってもらい、手を添えて鳴らしてもらっています。練習の時?一音づつの小さな音色には耳を澄まして、和音のように全部を一緒にダイナミックにたたくと喜んでいたと聞いていました。学校を休んだ日に、家でマグカップをスプーンでたたいて練習(?)していた話を連絡帳に書いたところ、先生が積み木ブロック鉄琴を貸して下さったので、家でもお父さんやお姉ちゃんと練習していました。
今日は音楽会だというのに、ともちゃんの体調が勝れません。昨夜、久しぶりに大きなけいれん発作があって、今朝の表情も元気がありません。お母さんは、ともちゃんが朝の予定を済ませていく中で、このまま笑顔を見せてくれなかったら、大事をとって音楽会を休ませようと思っていました。
朝の予定は思っていたより順調に進んでいます。お母さんがともちゃんに「音楽会に行くんか?」と尋ねると、ともちゃんはニコーッと満面の笑顔で答えています。「これはカラ元気では」と心配なお母さんに反して、ともちゃんは自力で排便も済ませて、行く気万々です。こんなに張切っているのですから、いざという時の装備を万全にして参加させてあげようと思いました。
お母さんは、音楽会ではともちゃんにこの夏神戸で買ったチャイナ服を着せたいと思っていました。短かすぎてオダンゴにはできない髪に飾れるように花のついたゴムも予め作って用意していました。ともちゃんに着せてみると、白いズボンの上に赤い長袖のチャイナ服が映えます。髪に2つ付けた花もとてもかわいく、ともちゃんはチャイナ服がよく似合います。
スクールバスで登校したともちゃんは健康観察、水分摂取の後、再びスクールバスに乗り、みんなと会場である市民会館に向かいました。お母さんは、学校から交換用の酸素ボンベを持って、自転車で一足先に市民会館へ向かいました。ともちゃんはいつも持ち歩いている携帯用酸素ボンベの交換用ボンベを学校にも置かせてもらっているのです。もし、痰の絡んでいる時にけいれん発作が起これば、たくさんの酸素を吸入し続けなければならないし、そうなるとボンベが一本では不安です。
ともちゃん達は出番の少し前に到着して、2校ほどの演奏を鑑賞した後、出演します。そして、その後は長居はせずに、すぐにスクールバスで学校に戻ります。お母さんは、ともちゃんのスクールバスが着くのを待って、ともちゃんと一緒に先生が持ってきてくれた吸引器を受け取りました。出演中でも、ともちゃんに吸引が必要になれば、ともちゃんは舞台の袖に連れて行ってもらうことになっています。それを見て、お母さんは客席から、吸引器を持って駆けつける手筈になっています。
お母さんはいざという時、すぐに動けるように、通路に陣取って、鑑賞していました。ともちゃん達の出番です。ともちゃんは前列の中央で先生に抱っこされています。赤いチャイナ服のともちゃんはよく目立っています。ともちゃんが大きな口を開けているのが分かったので、お母さんはお友達のお母さんの双眼鏡を借りて、表情を覗いてみました。ともちゃんはうれしそうに、楽しそうに、大笑いです。
よかった。やっぱり、ともちゃんを音楽会に参加させてよかった、とお母さんも心からうれしくなりました。舞台上のともちゃんは終始、楽しそうに笑っています。鉄琴ブロックを先生と一緒にたたいて、ガハハ。先生や友達の歌声に合せて、リズムを取るように、先生に身体をゆすってもらいながら、ギャハハハハ。けいれん発作も吸引の必要もなく、元気に音楽会に参加できました。ともちゃんにとっても、お母さんにとっても、とてもハッピーな音楽会でした。
物語は全6幕で構成されていて、猫のシーン、泥棒のシーン、鶏、泥棒、犬のシーンと来て、最後は泥棒と動物たちが全員登場します。猫、鶏、犬たちは御存知のようにそれぞれ農家を追い出されてブレーメンを目指すわけですが、例えば鶏なら途中に川があるので、平均台の橋を渡らない行けないという設定で、子供達が一人づつ順番に舞台の上で、平均台を渡る技を披露します。もちろん、身体的障害を併せ持つお友達はボートに乗ってゆらゆら渡るという見せ場が別に用意されています。
泥棒たちの見せ場は動物たちとはちょっと違います。同じの技を順番に披露するというのではなくて、それぞれに得意なことを活かしながら泥棒グループの演技を盛り立てていきます。おしゃべりが得意なお友達は台詞でお話をリードしていきます。数字に興味を持っているお友達は宝物を数えます。果物の名前が上手に言えるお友達は果物を配ります。重量挙げ、チャンバラ、ロールマット乗り、一輪車乗りの技を披露して泥棒の凄みにそれぞれ磨きをかけてくれるお友達もいます。
泥棒たちは一人で得意技を披露するだけでなく、友達の台詞にツッコミを入れたり、お宝箱を別の泥棒に渡したりと、泥棒同士のかかわりも見所です。劇中2度歌われる「立派な大泥棒の歌」でマラカスや太鼓を鳴らしたり、パーティでごちそうを食べる真似もします。
泥棒の家は舞台の右下に作られていて、劇の構成上、残念ながら泥棒たちは舞台上で技を見せることはないのですが、舞台裏に消えることもありません。動物たちの演技の間も、泥棒たちは家で静かに自然に出番を待っています。泥棒たちは個々の発達段階には大きなばらつきがありますが、それぞれにさすがに小学部高学年といった役どころです。
さて、ともちゃんの役はピンクのベストとちょうちんパンツがかわいい泥棒の子分。第2幕で、先生に抱っこされ、ピンクパンサーの音楽に乗って抜き足差し足で登場します。他の子分二人とお宝を盗んできたという設定で、ともちゃんのいざという時に必要な酸素ボンベも「お宝の袋」を被せて、ともちゃんと一緒に泥棒の家に持ち込まれます。
ともちゃんの得意技は何と言っても笑顔ですから、ともちゃんが喜んでくれそうな場面もいくつか用意してあります。第2幕でともちゃん達が持ち帰った宝石をお友達の数える掛声に合せて投げ上げるところ、ともちゃん達の後に金貨を盗んで家に帰ってきた泥棒たちの金貨をばら撒くところ。第4幕の泥棒たちのパーティーでは、スイカが食べたいと言う泥棒に得意の「ともちゃんキーック」で蹴ってスイカを割るところ。第2幕と第4幕の最後に泥棒みんなで歌う「立派な大泥棒の歌」ではマラカスを振ります。
先生も両親も、金貨をばら撒く時に周りの雰囲気が盛上がると、ともちゃんの得意のグヒヒヒ大笑いが出るかもしれない、足に触ったスイカをエイッと蹴ってスイカが割れて歓声が上がると満面の笑顔が出るかもしれないと期待しています。音楽会で大喜びしていたともちゃんですから、歌と演奏を楽しんでくれるかもしれません。
ところが今回のむつみ祭は、運動会や音楽会とは違って、ともちゃんは全く練習には参加できませんでした。寒くなってきたため、小さな不調が重なって、学校を休むことが多かったのです。今日も体調は好調とはいえませんが、ぶっつけ本番での参加です。朝から元気のないともちゃんにお母さんが「学校に行こうか。今日はむつみ祭やで。」と声を掛けても、とろんとして、笑顔を返してくれません。
学校にともちゃんの様子を話して、少し遅れて登校する旨を伝えていると、少し笑顔が出てきました。お父さんからは「今日はむつみ祭の本番の日やで。音楽会の時みたいに、『本番に強い』やったら何よりやけど、元気が出んかったら『泥棒稼業も疲れるぜ』という顔をしてたらええんや。」と言われていました。
果してともちゃんはどんな泥棒を演じてくれるのでしょう。お母さん達は小学部高学年の保護者用に優先的に開放してもらった、泥棒の家の前に設けられたマット席で見ていました。泥棒は舞台に上がらないので、通常の椅子席からだとよく見えないのです。ともちゃんは終始おすまし顔。2度目の歌のところでようやく少し笑顔が出てきました。
「出番を待っている時はたくさん笑顔が出ていたのですけど、(劇中では)スポットライトの光がちょうど顔に当たって眩しかったのもあったのかな。」と先生はおっしゃっていました。ともちゃんにすれば「泥棒稼業も疲れるぜ。」という顔だったのでしょう。とにかく、今年はむつみ祭に参加できて本当に良かったです。
朝は、早起きのともちゃんより少し前に起きて、ともちゃんの薬やミルクの準備をし、ともちゃんの食事の調理をし、昨夜洗濯して乾燥機に入れてあった洗濯物をたたむのがお父さんの仕事です。夕方は、主に食事の後片付けをし、洗濯機を回します。この間、お母さんは、ともちゃんの介護で手一杯です。朝は登校の準備で忙しく、夕方は7時には寝に行くともちゃんの予定を消化するのに追われています。
ともちゃんがお父さんの顔を見られない日は、京都からお祖母ちゃんが家事の手助けに来てくれました。お祖母ちゃんは、ともちゃんがまだ赤ちゃんの頃、お母さんが会社に勤めていた間は、ともちゃんの世話は何でもこなしてくれていました。でも、お母さんが会社を辞めてともちゃんの介護専門になったので、お祖母ちゃんはともちゃんの世話から遠ざかっていました。
この間に、ともちゃんの身体は大きく成長し、食事の状態や生活の様子も変化しました。一方、お祖母ちゃんは70歳を越えました。歳を取っても、ともちゃんのためならと、助っ人に来てくれるお祖母ちゃんはとても有難い存在です。お陰で、お母さんがともちゃんの世話に専念できます。お祖母ちゃんは、最近は足が痛いと言いながら、大きくなって緊張も強くなったともちゃんを抱っこしてくれました。ともちゃんもお祖母ちゃんが声をかけるとハハァンと笑っていました。
お姉ちゃんも頑張って協力してくれました。お姉ちゃんは、以前からともちゃんとよく遊んでくれるのですが、今回は抱っこに挑戦です。ともちゃんは胃に入ったものが食道に逆流することを避けるために、経管でも、経口でも食事をした後は、できるだけ長く、最低でも30分抱っこするようにしています。お母さんがともちゃんの食事の後片付けをする間、お姉ちゃんはともちゃんを抱っこして、ともちゃんと仲良くお話をしてくれました。
ともちゃんは薄暗くした寝室で、お母さんに抱っこされ、背中をトントンしてもらって眠りに就きます。眠ってしまうと、横向きの姿勢で布団の中に置かれるのですが、眠りが浅くなった時には、誰かに背中をトントン(隣にいるよ、安心して寝なさいという合図)をしてもらわないと、不安になって目を覚ましてしまいます。お祖母ちゃんが来られなかった日は、ともちゃんが眠った後にお母さんがお姉ちゃんと交代して後片付けをしました。その間お姉ちゃんは添い寝をして、ともちゃんの背中をトントンしてくれました。
こうしてお祖母ちゃん、お姉ちゃんの協力を得て、お父さんが不在の間もともちゃんの生活のリズムを崩さないように全力を尽くしていました。しかし、今まで、お父さんが不在の時に、ともちゃんが病気になるという事が何度もあって、どうしても守り重視の生活になっています。その上、音楽会以降、微熱が続いたり痰が絡んだりと、ともちゃんの体調不調が続いていたので、お母さんの神経はピリピリしていました。夜パソコンに向かう暇など全くありませんでした。
幸い、むつみ祭の頃から、お父さんは土日はちゃんと休めるようになりました。ともちゃんも、久しぶりに、お父さんに相手をしてもらうとうれしそうです。「このごろおらんかったやろ。どこに行ってたんや。」とばかりに、ニコニコしながらお父さんの方を見て、オーンオーンとお話ししています。夜もお父さんに寝かせてもらいました。やはり、家族が揃うと、ほっとみんなの心が和みます。
さて、今日は2学期の終業式でした。むつみ祭の後も、ひどくはありませんが体調不調が続き、ともちゃんは登校できずにいます。通知票と「冬休みのくらし」は担任の先生が家まで届けてくださいました。ともちゃんの出席率は27勝(出席日数)、59敗(欠席日数)で、1学期とほぼ同じ出席率でした。9月から12月となるにつれて、出席日数がだんだん低下しています。
「今年の夏は厳しいぞ」というサブタイトルでスタートした「ともちゃんの生活17」ですが、家族で近くへのお出かけができた夏休み以来、「2学期も厳しいぞ」と思いながらも、運動会、音楽会、むつみ祭の学校行事には参加できて本当に良かったと思います。お父さんが忙しいのは一段落というわけでもないようです。これからもお父さん不在の日はたびたび訪れるでしょう。けれど、家族協力して、ともちゃんを守っていきましょう。冬休みも3学期も、ともちゃんが元気で、楽しい毎日が過せますように。