ともちゃん の日常29


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2004年7月以前(ともちゃんの日常28へ)

2004年8月

6日(金)
「あわくらんどから鳥取へ」

8日(日)
「水間観音」

10日(火)
「黄檗山萬福寺」

14日(土)
「梅田で特大キティ」

22日(日)
「徳島阿波おどり会館」

2004年9月

4日(土)
「天橋立」

2004年10月

2日(土)
「運動会2004」

17日(日)
「サバーファーム」

21日(木)
「新しい学校、体験学習」

31日(日)
「おもちゃ王国」

2004年11月以降(ともちゃんの日常30へ)


2004年8月6日(金)

先週の木曜日まで、ちょうど一週間隔日で登校できたのに、先週末からはその疲れと夜のエアコン調節の難しさから、ちょっと体調がすぐれなかったともちゃんです。リハビリもお休みして、少し家でゆっくりと静養していたおかげで、ようやく食事もスムーズに食べられるようになり、体調も整ってきました。

 よいタイミングで、今日からお父さんの夏休みが始まりました。今日は朝から興奮して、ご機嫌で早起きしてきたともちゃんですが、食事のほうはどうかな。スムーズに早く食べられたら、遠くまでお出かけしようと、両親は様子を見ています。「もし、早く食べられたら、遠出して四国まで行こか。」、今日の場合、問題はともちゃんの食事ではなく、徳島の天気でした。雨の予報です。

 「せっかく行くのに雨ではなあ。」、「それやったら、(天気予報が雨でない)鳥取に行ってみよ。」、「鳥取は高速がないから、遠いで。」、「鳥取市内まで行かんでも、鳥取県に一歩でも踏込んで、『でん』して帰って来たらええやん。」、「それやったら行けるわ。作用インターで中国道を降りて、国道373号線を北上したら、鳥取県の智頭に着くわ。373(みなみ)を北へとはしゃれてるで」、「この辺に道の駅でもあったらええなあ。」と調べて、あったのが「あわくらんど」、今日の目的地です。

 道の駅「あわくらんど」は岡山県ですが、鳥取県との県境の村、西粟倉村にあります。国道373号線は兵庫県から少しだけ岡山県をかすめて、鳥取県に入ります。「あわくらんど」でミルクの注入をしてからさらに北上し、鳥取県に入ったらそこでUターンして、来た道を戻ることにしましょう。ともちゃんにとって、初めての山陰地方、鳥取県です。

 中国自動車道を走っている時は、「中国道は(山陽道に比べて)山深いなあ。」と言っていましたが、国道に入ると一段と山深くなりました。目の前に屏風のように立ちはだかる山肌を右に左に避けて、縫うように谷線を進みます。一度道なりに西に向いた373号線がまた北に進路を取るようになる大原町では、国道沿いに商店や高校が並び、少しだけ街並が現れました。

 山と山の間の狭い隙間に道路も川も鉄道も集まって、絡み合うようにして通っています。中国山地を縦断して鳥取に向っていることを実感しながら、細い道が続くままに走り続けると、志戸坂バイパスとの分岐路に「道の駅あわくらんど」の看板が現れました。「岡山地鶏」ののぼりを見て、ここが岡山であることを再認識しますが、2階の入口の前には立派なスイカがたくさん積まれて、格安で売られていました。「スイカの名産地」と言えば鳥取です。

 11時に開店したばかりのレストランに一番乗りです。ともちゃんはミルクの注入、両親は食事、長旅でみんなお腹が減っています。外では本格的に雨が降出しました。ともちゃんが建物に入ってから雨になったので運がよかったわけですが、窓の外には木の回廊が巡っているのが見えて、天気がよければお散歩できたのにと、ちょっと残念です。

 お土産コーナーには、山陰の名産「ホタルイカの佃煮」の大きな垂幕がかかっていますが、山里の幸も岡山のお土産品もあります。鳥取を目指してここまで来たのですから、ともちゃんは鳥取キティちゃんを探しました。そして、20世紀梨キティのファスナーマスコットとタオル、因幡の白兎キティのタオルを買いました。

 レストランの窓から見えた志戸坂バイパスは急勾配の登坂でした。これから、いよいよ中国山地の峠越えに入るのでしょう。そして、峠の県境を越えると鳥取県なのでしょう。バスや乗用車が何台もバイパスを登ってゆくのですが、ともちゃんの両親はバイパスがどこまで続くのか分らなかったので(鳥取県に入ってすぐに引返せないと困るので)、おとなしく旧の国道373号線を行くことにしました。

 山道を上って、やがて志戸坂トンネルに入りました。3桁の国道のトンネルなので、高速道路のようにオレンジ色のライトがまぶしく輝いていることはありません。暗闇の中に、ぽつりぽつりと白い蛍光灯の明りがついているだけの薄暗いトンネルです。出口が見えていれば、それに向って突進むことができますが、このトンネルは先に出口の明りが全く見えません。「このトンネル、ちゃんと出口があるんやろな。冥界に続くトンネルとちゃうやろな。」

 自分の車のライトの照らす道をなぞりながら進むと道は大きくカーブしていて、その先に出口が見えました。「あー、よかった、出口や。あっ、(ここから)鳥取県って書いてあるで。」、「おっしゃー、ともちゃん、鳥取県に来たで。」、時折当たる蛍光灯の光の下でしかともちゃんの表情は確かめられませんが、ともちゃんはしっかりと起きていて、声かけに反応しています。「鳥取県って真っ暗なとこやなあ。」と、ともちゃんは思っているかもしれません。

 ともちゃん、鳥取県に初上陸です。ともちゃんは、ミルクの注入が済んで少し散歩したり、買物したりすると、車の中で昼寝をすることが多いのですが、今日はあくびをしながらも、眠らずにがんばっていました。鳥取県に『でん』したので、トンネルを出ると適当な場所で車をUターンさせました。すると、ともちゃんはもう目的を達したことが分ったのか、すぐに眠りにつき始めました。

 帰りは道なりに行くと、そのまま志戸坂バイパスに入ってしまい、「あわくらんど」の裏の急な坂に出ました。「あわくらんど」の駐車場に、ともちゃんが住む街の路線バス、赤と白の柄のおなじみの京阪バスが止っているのを見つけて、お母さんがうれしがっています。きっと、鳥取行きの高速バスなのでしょう。

 行きには気がつかなかったのですが、帰りには智頭急行の電車も見かけました。堤防の土手ような盛土の上に敷かれた線路を走る列車は、一両だけのかわいい列車です。白地に赤と青で塗分けられた車両が、山の緑に映えていました。

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2004年8月8日(日)

ともちゃんは阪和道を南へ、貝塚市の水間観音を目指しています。ETC車載機を搭載したともちゃんの車は料金所を止ることなく通行できるので、お盆前の日曜日で少々混合った高速道路の料金所前で通常ゲートに並ぼうとフラフラと左右に振分けられる車列をかいくぐり、ETCゲートをすり抜けました。「こんだけ待たんと通れるんやったら、(ETCを)付けた値打ちあるなあ。」とお母さんはとても大阪人的なコメントをしてます。

 今日のともちゃんはとても眠そうです。朝はミルクの注入の後、お粥ペーストを食べるまでに少し眠って、目覚めた後は機嫌もよく食事も早く進んだので、遠出は止めて近場にお出かけすることにしました。けれども、車に乗ると気持よく眠ってしまいました。昨夜3時ごろ眠りが浅くなっていましたが、ひょっとするとそのまま起きていたのかもしれません。お母さんは眠ってしまい、そこまでは把握していません。車の中でしっかりと眠って、体調を維持して欲しいと思いました。

 貝塚市というと、ともちゃんがかつて行った二色の浜を思出し、海沿いの街という印象が強いのですが、山間部まで広がっています。今日阪和道を降りた貝塚インターチェンジは、周囲を山々に囲まれた山間の街でした。この街にある水間(みなま)観音は、JR貝塚駅からここ水間観音のある水間駅まで水間鉄道という単線の鉄道も走っているくらい有名な厄除けの観音様です。駐車場に車を止めて、車から降りると芳しいお香の香りが漂ってきます。

 蝉時雨の境内に入ってまず感激したのは、本堂のお賽銭をあげて鐘を鳴らして手を合せるところまで、階段だけでなくスロープが付けてあったことです。今まで訪れた多くの寺社では、スロープがないのでともちゃんは階段下でのお参りになっていました。石段が2段、木の階段が8段の合計10段分の高さを上るのですが、角度は15度か20度位あるかなり急な木製のスロープです。

 足下が滑らないように細かい間隔で斜面に直角に横木が打付けてあるのですが、それでもともちゃんの車椅子を操作するお父さんは一歩一歩ゆっくりと踏みしめながら上ります。車椅子の小さい前輪が横木に引っかかると、車椅子の向きが斜面に対して横を向きそうになります。車椅子が斜面に対して横向きになると、支えきれなくなって横転するので大変危険です。特にこのスロープの角度を考えると、真剣にならざるを得ません。

 上まで上がったともちゃんはほっと安心です。でも、お参りする時のすぐ背後はスロープなので、お母さんと鐘を鳴らす時もお賽銭をあげる時も大胆な行動には出られず、控えめな行動でした。他の人が鳴らしたガンガンガンという鐘の音にともちゃんは喜んでいました。しばらくは、この高廊下の上でお守りの鈴を買ったり、周りを回って境内を見渡したりしました。

 薄曇なのでちょうどいい具合と、境内のベンチで蝉の声を聞きながらミルクの注入を行っていたら、雲がどんどん薄くなって、眩しくなってきました。慌てて日傘をさします。境内図を見れば、水間観音は山の中の水間公園の方にかけてずっと広がっていて、お堂などが散在しているようです。ちょっとともちゃんには厳しいかなあと思いつつ、山の方を目指しましたが、いきなり段差があって断念。でも、ともちゃんには、この後にも予定が控えているのでちょうどよかったのでしょう。

 帰りには、岸和田サービスエリアに寄って水分補給をします。ここで、気に入った大きなお土産があれば、お父さんがくれた「誕生日永久不滅ポイント」を使って買ってもらえます。岸和田SAは、以前特大の紀州鯨キティのぬいぐるみ(ただし非売品)があったところですから、期待は大きく膨みます。先にレストランで両親は食事、ともちゃんは水分補給を済ませて、お土産品コーナーを訪れました。

 ところが、期待は大ハズレ。広いスペースを占めていたおもちゃやグッズの売場がうんと縮小されていて、食品売場が広くなっています。キャラクターもキティちゃん以外のものがあって、キティちゃんはともちゃんがすでに持っている紀州鯨キティのぬいぐるみ(特大の非売品ではなく小ぶりの物)だけでした。ともちゃんはがっかりです。

 「しゃあないなあ、また今度買うてもらおか。」と簡単に諦めたお母さんは、食品売場で鯨の佃煮(以前に「一度鯨の肉が食べてみたい」と言っていたお姉ちゃんへのお土産)やら、水ナスの漬物やらを嬉々として品定めしています。ともちゃんはそんなお母さんに腹が立ったのか、大きな声でオーオーと抗議していました。お父さんが「大丈夫、ええもんがあるまで(ポイントは)ずっと貯めておけるから。心配せんでええで。」と慰めてくれました。

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2004年8月10日(火)

京都は宇治、黄檗山萬福寺に車椅子で訪れたなら、黄檗公園のプール横にある駐車場に車を止め、「参拝順路 入口(矢印)」の表示に従って入口(総門)方向に進みますが、総門に行く途中にある南門から「出口、ここからは入れません」という看板を無視して中に入りましょう。三門前の拝観受付まで段差なく進むことができ、事情を話すと快く了解して頂けます。

 蝉時雨とプールの歓声を聞きながら、車から元気に降りたともちゃんの場合は、「参拝順路」の表示に従って、歩道のない坂道を時折通る車に注意しながら下りました。途中、南門にも、その後の文華殿の入口にも気が付いたのですが、「ここからは入れません」という掲示に従い、入口で拝観料を支払うべく、そのまま通り過ぎました。

 しかし、目指した総門には階段と高い敷居があって、車椅子では門を通ることはできません。しばらく辺りをウロウロして、結局来た道を引き返して、文華殿の入口から中に入りました。ここから逆に総門まで戻ろうとしていたところ、三門の前に拝観受付があり、そこまでは段差なく行くことができました。車椅子であるため文華殿入口から入った旨を告げて、拝観料の支払いを済ませました。そして、帰りは段差なしで駐車場横の南門まで行けることも教えてもらいました。

 延宝6年に建立されたという三門は重要文化財で、正面の額「萬福寺」は隠元禅師の書によるものです。この山門の真下に床机がいくつも並べて休憩できるようにしてあったので、ここに座ってミルクの注入を行いました。途切れずに参拝客が訪れるので、ちょっと晴れがましくて申し訳ない気もしますが、こんな機会は滅多にありません。門の影にすっぽりと入っているので、地面からの照返しもなく、風が門を通り抜けると、俗界を離れた気持ち良さがあります。

 330年の歴史を見上げながら、蝉の声に浸っての注入でした。11時半頃、ジージージーという蝉の大合唱の中に、ツクツクボーシ、ツクツクボーシという鳴き声が混ざっているなあと思っていたら、急に一斉にジージージーの声が止みました。今までうるさかった境内にはツクツクボーシの声だけが響いています。蝉は種類によって鳴く時間が決まっているというので、ちょうどジージー(クマゼミ)の休憩時間になったのかもしれません。

 黄檗山萬福寺は、玉をくわえた魚の形をした「かいぱん」(木魚の原形といわれる)で有名です。木魚といえば、ともちゃんの養護学校の昨年のむつみ祭の劇で、小坊主さんの役でポクポクと木魚をたたいていたお友達もいましたが、ともちゃんもぜひ「かいぱん」を見てみたいものです。聞くと、「かいぱん」のある斎堂までは段差なしで行けるとのこと。「かいぱん」を探しに行きました。

 三門から天王殿の前まで、両脇にハスの鉢が並んだ参道に、龍の背に見立てた石條と呼ばれる正方形の平石が埋められているのですが、これに車椅子の車輪がとられないように注意して進みました。寺の玄関である天王殿で記念撮影をした後、白壁沿いに行くと坂道で回廊に上がることができました。天王殿と本殿である大雄宝殿は回廊で繋がっています。

 回廊の高低差があるところにはスロープが設けられていて、車椅子でも回廊をぐるりと回ることができます。受付でもらった地図では、斉堂はもう少し先にあるはずなのですが、斉堂も回廊で繋がっているのでしょうか。キョロキョロあたりを見回していたお母さんは、ともちゃんと他を探そうとしていたお父さんに叫びました。「あった、あった、あっちや。」

 大雄宝殿へ行く曲り角の近くに、ほとんど回廊の幅と同じくらいの長さの大きな魚が吊り下げられています。お母さんの位置からでは、真正面に回廊の幅の魚の側面が見えています。思い描いていたものよりずっと大きくて、お母さんはすぐには気が付きませんでした。「かいぱん」に触れられないように、周りには竹の柵が巡らせてありました。

 「おっきい魚やねえ。」、ともちゃんはにっこりと笑顔で「かいぱん」の前で写真に納まりました。回廊を下りたところにあるお土産屋さんでは、どうしても「かいぱん」の形の記念品を探してしまいます。本物の半分くらいの長さ(もっと短いかもしれません)のミニチュアが、何と13万円で売られていますが、ともちゃんにはもっと小さくてカワイイ魚を選びましょう。

 店内でのやり取りを一部始終聞いていたお店の人が「こちらに、キーホルダーがありますよ。」と教えてくれました。柘植の木に手彫りされた小さな「かいぱん」は、それぞれに微妙に色や表情が異なります。お父さんにどれがいいか選んでもらいましたが、お父さんが選んだのは少し色が濃くて小ぶりのものでした。このところのお出かけで少し日に焼けたともちゃんのような「かいぱん」です。

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2004年8月14日(土)

ともちゃんは大阪一の繁華街、梅田に行って、誕生日プレゼントの永久不滅ポイントで大きな大きなキティちゃんのぬいぐるみを買ってもらいました。梅田はとにかく人が多いので、賑やかなことが大好きなともちゃんは往来の人混みに嬉しそうにしています。事前に調べていたこともあって、道行く経路については車椅子でもそう不便は感じませんでした。しかし、雑踏には車椅子にとって思いがけない危険も潜んでいました。十分に注意して、これからも繁華街でのお買物を楽しみたいですね。

 「次のお出かけは梅田のキディランドに行って誕生日プレゼント買おか。梅田は賑やかで、人がたくさんおるで。」と言われて楽しみにしていたともちゃんは、車の中でウトウトしていたのに、もうすぐ阪急梅田駅屋上駐車場に入るという頃、ニコニコ笑って起きてきました。駐車場ではエレベータ棟の前に車椅子用スペースが設けられていました。繁華街の商業駐車場にもこんな配慮があったとは、とてもうれしいことでした。

 この駐車場は阪急三番街の真上にあるので、エレベータで三番街に行くことができます。エレベータは1機で、北館の地下1階までしか通じていない(それ以外の所に行きたい時はインフォメーションに申し出て、案内してもらって荷物用のエレベータに乗せてもらう)のですが、幸いにもキディランドは北館の地下1階です。最初、エレベータのB1のボタンが点灯せず困ったのですが、10時になって店が開いてからエレベータが止まるようになりました。

 「30年前、阪急三番街にはしょっちゅう行ってたから、キディランドもよう知ってるで。」と言っていたお父さんの案内で、ともちゃんはキディランドにやってきました。辺りをきょろきょろ見回して、ともちゃんはケラケラ笑っています。「にゃんこ温泉行き」の大きなバス停時刻表があります。扇風機、キャリーバッグなど、キティちゃんの小物が楽しませてくれます。けれど、ここでは取扱っているキャラクターの種類が多すぎて、お目当てのキティちゃんのぬいぐるみは一種類しかありませんでした。

 それならと、次は阪急百貨店のサンリオコーナーに向かって、1階フロアを移動しました。ともちゃんは大都会の散歩がとても楽しいようで、行交う大勢の人の中でニコニコしています。ともかく人が多く、みんなセカセカ歩いている梅田では、足元ではなく、少し先を見て歩かなければなりません。はしゃぐともちゃんが乗る車椅子を押すお父さんも、少し遠くを見て人の空いているところを探し、流れに乗って縫うように車椅子を進めていました。ところが、車道を横切るところに段差があったのです。

 歩行者にとってはわずかな段差なのでみんな何気なく越えていて、人の流れに支障はありませんから、お父さんは段差に気付かず遠くを見ながらずんずん進んでいました。吸引器を抱えて後を追いかけていたお母さんが、車椅子の姿を見逃すまいと進路をしっかり見据えていたために、すぐ先に段差があることに気付いて大きな声を出しました。

 本当に危機一髪でした。あのまま、お父さんの進む速い速度で車椅子が段差の下に前輪を落としていたら、ともちゃんを乗せた車椅子は前のめりに転んでいたことでしょう。思出してもぞっとします。急ブレーキで止ったともちゃんは、すぐ横にあったスロープを通って無事段差を越えることができました。

 阪急百貨店のサンリオコーナーには、いました、いました、とても大きな3Lサイズのキティちゃん。イチゴの付いたドレスを着ています。ともちゃんは大きくてびっくり。いつものオーバーオール姿の2Lサイズのキティちゃんもいます。キティちゃんのビデオも流れていて、ともちゃんは目移りしてしまいます。でも、やっぱり、3Lサイズのイチゴのキティちゃんに決めました。

 こんな大きなのがあったのかと感心する特大のサンリオのショッピングバッグに入れてもらって、車椅子にぶら下げました。持運ぶだけでも大変ですが、逆に誇らしくうれしい気持ちもしています。さあ、これから、特大キティちゃんを連れて、大丸百貨店の15階のうどん屋さんに行き、JR梅田貨物ヤードを見ながらミルクの注入をしましょう。

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2004年8月22日(日)

今年もともちゃんは四国に行きました。このところ、四国はともちゃんの夏休みの「遠くのお出かけ先」の定番です。今回は、お祭好きのともちゃんにぴったりの阿波おどり会館(徳島市)に行きました。雑踏は危険なともちゃんなので、あえて阿波踊りの期間は外してのお出かけです。

 トンネルを通る時に断続的に顔を照らすオレンジ色のナトリウムランプは、ともちゃんにとって刺激になるようです。今回も明石海峡大橋を渡る手前のトンネルに入ると、ウトウトから覚醒したともちゃんは「ヘエーン、ヘーン」と甘えるような声でさかんに話しかけてきました。

 「うーん、楽しみやねえ。」、「そうやんなあ。ともちゃん、お祭大好きやもんなぁ。」、「賑やかやねんでぇ。チャンカチャンカ、チャンカチャンカ、やで。」と、ともちゃんとの会話を楽しみながら、明石海峡大橋を渡ります。今日の海峡は曇り空の下、霧が出ています。白灰色に煙る海に黒く船が浮かんでいるのが見えますが、水平線は見えず霧の中で、そのまま同じ色の空に繋がっています。そのまま異世界に繋がっていそうで不気味な景色でした。

 淡路島を走抜けて、次は大鳴門橋を渡ります。相変らずどんよりとした天候で、空も渦巻く海も灰色ですが、水平線は分りました。水平線が見えるとちょっとほっとします。鳴門市に入りました。神戸淡路鳴門自動車道からそのまま高松自動車道に入ると、以前讃岐うどんを食べに行った津田の松原サービスエリアに行きます。今日は鳴門市で高速道路を下りて、国道11号線を南下します。

 吉野川の河口の橋を渡ると、右前方に眉山と思われる山影が見えました。徳島市の中心地は、吉野川と眉山に挟まれています。そして、眉山を背にして目的の阿波おどり会館が建っています。会館の5階にロープウェイの駅があり、眉山山頂へ上がることができます。眉山に近付くと、ロープウェイを通すために木々が刈取られた筋道が山肌に見えます。

 阿波おどり会館は、1年中阿波踊りの実演をしている阿波おどりホールと、阿波踊りの衣装や歴史の展示がある阿波おどりミュージアムを備えています。ともちゃんが到着した時、「阿波踊りの実演が始まっていますよ。」と受付で教えてもらいました。でも、長い道のりをやって来たともちゃんは、お腹が空いています。まずはミルクの注入で腹ごしらえです。

 会館5階のロープウェイ駅の前にある喫茶店に入って、徳島の街を眺めながら注入を行いました。徳島駅の方向を望む窓からは、徳島公園の城山とその手前のビル群が見えました。ともちゃんの後側には、こちらもガラス張りで、発着するロープウェイが見えています。元気一杯のともちゃんは、注入中もニコニコしながら、足に力を入れてピンピン突っ張ってくるので、「暴れたら、あかんよ。」とお父さんに諭されては、また笑っていました。

 ともちゃんはロープウェイには乗らず、その姿だけ見送って、阿波おどりミュージアムに向いました。心配性のお母さんがロープウェイには乗せてくれません。非常事態が生じた時、体は大きく首も座らないともちゃんは、地上何十メートルの上空からどうやって救出されるのかと考えると、とても乗せられないとお母さんは思います。ロープウェイに限らず、陸地を走らないもの(船や飛行機)は、非常事態のことを考えて、ともちゃんは乗せてもらえません。

 阿波おどりミュージアムに流れるリズムに、ともちゃんはお祭好きの血が騒ぐのでしょうか。気分が高揚して、ギャハハギャハハとはしゃいでいます。喫茶店でもらった阿波踊りの団扇を持たせたら、「これは私がもらった団扇やねん。」とばかりに上手に握っていました。展示を見て、最後には映像による阿波踊りの講習までありましたが、車椅子ではステップが踏めないのが残念でした。

 阿波おどりホールでは、できれば本物の踊りを見せてあげたいと思いましたが、次の実演時間は午後2時でした。それまではずっと阿波踊りの映像を流しています。せめて雰囲気でも味わおうと行ってみました。車椅子でもスロープで舞台の上に上がることができたので(実演時には観客も踊りに参加できるようです)、他の見学者が来られるまでの間、お父さんに音楽に合わせて車椅子を動かしてもらって、映像と一緒に踊った気分に浸りました。

 会館の1階は徳島県の物産品の販売店になっています。ともちゃんはただでさえ遠い徳島までやって来て、その上阿波おどりミュージアムもホールも見学したのに、お母さんはいつもの調子で、ゆっくりと買物まで楽しんでしまいました。「1時間40分も会館の中にいてんで。このままどこにも寄らずに帰っても、3時10分帰着やて、カーナビが言うてるで。」とお父さん。大変、大変、どこにも寄らずに安全運転で帰りましょう。

 ともちゃんの水分補給も、パーキングエリアに車を止めただけで、車から降りずに行いました。ともちゃんもお母さんもウトウトしています。気の毒な運転手のお父さんは「次のパーキングエリアで缶コーヒーを買うわ。」と車を止めて、自販機に向かいました。車が止まって覚醒したともちゃんは、サービスエリアに着いたので自分も降りると思ったらしく、大きな声でオーオーと訴えていました。でも、両親になだめられて車は出発。無事に3時15分に家に帰り着きました。

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2004年9月4日(土)

夏が過ぎることを惜しむともちゃんは、9月になっても元気にお出かけしています。今日は舞鶴若狭自動車道から綾部宮津道路に入り、終点の宮津天橋立まで行きました。ともちゃんにとって、初めての日本海です。

 はりきって朝の予定をこなした後、心地よい車の振動でボーっとしてきたともちゃんに「ここは前にも来たことがある知ってる道やから、寝てても安心やで。」とお父さんが声をかけてくれました。舞鶴若狭道は、以前に西紀サービスエリアを目的地にして、春日インターチェンジまで乗ったことがあります。ともちゃんは、タオルケットをかぶって、静かにしていました。

 しかし、綾部の手前まで来ると、それまでおとなしくしていたともちゃんがギャハハハハと声をあげて笑いかけてきました。しっかりと覚醒しています。大きな声で「ハアーン。アーン。アーン。」と、にこやかな表情でさかんにお話ししてくれます。「そうやなあ。この辺知らん道やもんな。」、この辺りでは、高速道路は幾つもトンネルを通り、抜出ると高架橋で、高い位置から山間の田畑や集落を見下ろしています。

 道路が曲がりくねっていて、自分の行先の高架橋を横から眺めることができるので、よけいに高さが際立って感じられます。田畑のうち、緑に見えるのは畑、黄色く見えるのは稲穂が色づいた田んぼでしょう。この間の台風で稲が倒れていたり、早くも刈取られて黒い土の上に茶色く枯れた稲の切り株が点々と並んでいる田んぼも見えました。トンネルを抜けるごとに、晴れたり雨が降ったりと不安定な天気ですが、天橋立で降らなければと願います。

 さすがは日本三景の一つ、天橋立です。曇空の元、閑散としているかと思えば、海水浴シーズンは過ぎ、秋の観光シーズンにはまだ早いというのに、観光バスからも、電車の駅からもぞろぞろと観光客がやってきます。股覗きで有名な展望台にも惹かれますが、ともちゃんは文殊堂で有名な智恩寺の駐車場に車を止めました。日本海を見ながらミルクの注入を行った後、智恩寺にお参りし、天橋立の松並木にも足を踏入れてみましょう。

 駐車場は奥が海に面していたので、一番奥まで進入して、後部を海側にして車を止めました。いつものように後部ドアを開け、後部座席を後向きに回転させてお父さんに抱っこしてもらうと、ちょうど天橋立で囲まれた宮津湾の内海、阿蘇の海が正面に見えました。対岸は煙っていますが、右手には天橋立の出っ張りの部分の松林と橋立明神の鳥居が見えています。

 ここでのミルクの注入をしていると、ゆったりとした気分で日本海を五感で感じられました。暑くもなく寒くもなく、海からの心地よい風に乗って潮の香りが漂っている中、ともちゃんはお父さんの膝の上でにこやかにくつろいでいます。遊覧船は汽笛を鳴らしてからゆっくりと、モーターボートはエンジン音を響かせながら素早く通過ぎていきます。すぐそこにある海面は船が通ると波立ち、中を覗くと魚が泳いでいます。沖の方でポチャンと魚が跳ねました。

 「船が通るで。汽笛や、ちょっと、びっくりしたなあ。」、「ほら、鳥が飛んでるわ。」と、お父さんやお母さんが感じるままにともちゃんに話しかけると、ともちゃんは笑顔で答えてくれます。のんびりと海辺の穏やかな時間を過ごしましたが、ミルクの注入が終る頃にはポツリポツリと雨粒が落ちてきました。

 わずかな雨なので、車椅子に屋根を取付け、雨避けのビニールカバーをすっぽりとかけて文殊堂に向いました。文殊堂の前には人の流れが絶えず、正面にはご灯明の火が炊かれているので、なかなか車椅子では近付けません。あきらめかけた頃に人の流れが途絶え、ともちゃんもお堂の前でお参りしました。お堂の上に上がるには階段しかないので、お賽銭はともちゃんが触れた後、お父さんが黒子になって階段を上り、賽銭箱に入れました。

 文殊堂は智恵の神様(いや仏様か)を御祭りしているので、今年は受験生のお姉ちゃんの代参でもあります。お母さんがお堂の上のお守り売場でお守りを選んでくれました。お母さんは、今まで見たどの社寺よりもお守りの種類が多くて、とても迷っていました。結局、ともちゃんには「キティちゃんの智恵守り」と「亀の形の交通安全・長生きストラップ」を、お姉ちゃんにはシンプルに「合格守り」と「合格鉢巻」を授りました。

 雨も上って、ビニールカバーをはずして廻旋橋を渡り、さらにもう一つ大天橋を渡ると松林の砂洲に出ました。ここがまさしく天橋立。ともちゃんも天橋立の先っぽに車椅子で乗入れましたよ。もう少し根元に向って散歩して、海岸の砂浜の方にも行ってみたくなるのですが、ともちゃんのお出かけは遠出になるほどのんびりとお散歩はできません。ここで、引返します。

 お土産屋さんには天橋立キティちゃんがいるかなと期待したのですが、いたのは京都キティちゃんばかりでした(確かに宮津は京都府ですが)。そこで、昔ながらのいかにも観光地のお土産というデザインの天橋立キーホルダーを買いました。お土産屋さんでも、あれもこれもと見て回りたくなるのですが、徳島での教訓を活かして我慢しました。その代りに、今日はちゃんと西紀サービスエリアのレストランで水分補給をする時間が取れました。

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2004年10月2日(土)

小雨が降る中、ともちゃんの養護学校の運動会が始ります。ともちゃんは、年に一度、運動会の時にしか着ない学校の体操服(校内服)のハーフパンツに履き替えさせてもらって、半袖体操服の上には私服のニットの長袖カーディガンを着込んでいます。昨日までは真夏日だったのでこんなに涼しいとは思わず、学校のジャージを着て来ることには思い及びませんでした。

 雨対策は、車椅子に屋根を取付けて、ビニールカバーをすっぽりと被せてしまえば問題はありません。しかし、ビニールカバーの温室の中に入ってしまうと、ともちゃんはせっかくの運動会の臨場感を感じることはできないでしょう。小雨なので、他の車椅子のお友達は雨具なしで開会式に出席する様子です。ともちゃんを雨に濡らしたくないし、運動会の雰囲気も味わって欲しい。お母さんはどうしようかなと思っていました。

 すると、先生がちょうどいい提案をして下さいました。「ビニールカバーは首から下に掛けようと思うんですけど。」、これくらいの雨なら車椅子の屋根だけでも首から上は凌げるでしょう。ともちゃんは座位がとれないので、車椅子はかなりの角度でリクライニングしています。そのため、車椅子の屋根や傘では足元の雨を防ぐことはできず濡れてしまいますが、ビニールカバーを散髪屋さんのケープのようにかけて(後ろをガムテープで止めて)足の先まで覆うと、濡れることはありません。

 さらに、ビニールカバーで覆われている身体は熱がこもって暑いくらいでしょうから、少しくらい顔面に雨がかかっても肌寒く感じることはないでしょう。こうして準備万端のともちゃんは白組のテントに入って行きました。お友達や先生と入場行進に向けて待機しています。お父さんはビデオを持って、お母さんはカメラを持って、それぞれに保護者の席に陣取りました。これからは、レンズやモニター画面を通して、ともちゃんの姿を追いかけます。

 高等部の生徒たちが演奏する「となりのトトロ」の曲に乗って、入場行進が始りました。ともちゃんは好奇心いっぱいの目を見開いて、あたりをキョロキョロしています。上向き加減に車椅子に収まっているともちゃんには、視界を遮る屋根が気になるかもしれませんが、そこは仕方ありません。ビニールカバーを蹴り上げるように左足をピンピンして元気一杯です。

 開会式の間は、先生に微妙に屋根の角度を調節してもらって、ともちゃんは何度も大きな口を開けて、楽しそうに笑う姿を見せてくれていました。小雨の中でも運動会の楽しい雰囲気を十分に感じているようです。式が進むにつれて雨脚が少し強くなってきて、雨具なしで参加したお友達も、先生に傘を差しかけてもらったり、ビニール袋を膝に掛けてもらったりして、雨を凌いでいました。ともちゃんは、余裕で相変わらず、キョロキョロしてはギャハハハと笑っていました。

 開会式の間は最前列にいたともちゃんも、応援合戦になると隊形が変り、保護者席から遠くに離れてしまいました。お父さんとともちゃんの間には、小学生の領域があります。お父さんはビデオカメラを持つ手をモニターを見ながら動かし、小学部の子供達の隙間を縫ってうまくともちゃんの姿をとらえますが、子供達が動き回るのでまた隠れてしまいます。一方、さっさと場所を移動したお母さんのカメラは太鼓の音に大笑いしているともちゃんの姿を写していました。

 ともちゃんが出場するのは、中学部の演技「おどれ!五輪ピック2004」です。ともちゃんのお父さんも、オリンピックのことをふざけて「五輪ピック」と言うので、お母さんはプログラムでタイトルを見た時お父さんと同じオヤジギャグの感性にムフフフと笑ってしまいました。「栄光の架橋」、「手のひらを太陽に」ともう一つお母さんの知らない曲の3曲をつなげて、演技をします。

 ゆずの歌う「栄光の架橋」にのって、ともちゃん達が入場してきました。この曲はNHKのオリンピック番組のテーマ曲ですが、「ともちゃんの運動会もオリンピックやパラリンピックに決して負けてはいないよ」と、この曲を聴きながらお母さんは思います。オリンピックやパラリンピックのものとはちょっと異りますが、ここに至る努力もその影にあるドラマも、ともちゃんにもお友達にもそれぞれあります。

 人数の多い1年生だけ3つのグループに分かれ、2年生、3年生と合せて5つのグループで、それぞれのグループが異なる色の長くて太い一本のロープをみんなで持って入場です。ともちゃん達のロープの色は白色です。5グループで5色というと、五輪カラーかと思うのですが、そうではありませんでした。実はこのロープ、中にペットボトルが芯として入っているので弛むことはなく、ボトルの継目で関節のように自由に曲がります。

 「栄光の架橋」と「手のひらを太陽に」では、このロープを使ったマスゲームをします。「栄光の架橋」はゆっくりとした曲のリズムに合せてロープを上げ下ろししたり、円形から長い一列になったりするのですが、開会式であんなに華やかに笑っていたともちゃんがちょっとおとなしい感じです。口をアムアムするので、お父さんはお腹が減ったのかなと思いました。お母さんは開会式ではしゃいだので疲れたのかなと思いました。

 けれど、「手のひらを太陽に」になって早いリズムで車椅子を動かしてもらうと、また、ともちゃんに笑顔が現れました。ところが移動が早くなると、ともちゃんの姿がお友達や先生の姿で遮られることも多くなり、カメラマンは苦労しました。最後の曲では、ロープを置いて、みんながペットボトルにビーズを入れたマラカス風の楽器を打ち鳴らして踊ります。みんなが打ち鳴らす、あちこちから聞こえる音をキョロキョロしながら探したり、先生に耳元で鳴らしてもらったりして、ともちゃんはここでも満面の笑顔を見せてくれました。

 演技が終って、ともちゃんがミルクの注入に行った時、お母さんはともちゃんに尋ねました。「よう頑張ったなあ。栄光の架橋の時、しんどかったんか? いつもみたいにギャハギャハせんと、先生とコソコソしてたやろ。」、それに対して先生が「内緒話しててんな。」とともちゃんに話しかけると、ともちゃんは答えるように、パッと笑顔になって大きな口を開けてギャハハハハ。大丈夫、ともちゃんは元気です。

 ミルクの注入が終ると、ともちゃんの帰宅時間です。中学部も出場する競技が午後からもたくさんあるので、未練が残るような気がします。けれど、今年のともちゃんは全体練習に何度も参加できて、「大玉送り」も、それぞれの子供の状態に合せた籠がいくつも用意されている「玉入れ」にもちゃんと出場しました。大声援の中、目の前を大玉が転がっていく迫力も、手に玉を持たせてもらって車椅子に乗ってポトンと籠に落した感触も、しっかりと経験できました。そして、玉を放り上げて数を数える時には大笑いしていました。

 ですから、今日はともちゃん、後は家に帰ってゆっくりと体を休めましょう。みんなで運動会のビデオを見ながら、お姉ちゃんにも、頑張っていたともちゃんの様子をお話してあげましょう。

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2004年10月17日(日)

今年も秋になると農業公園に足が向きます。今日は富田林市農業公園「サバーファーム」に行きました。久しぶりのお出かけにともちゃんも嬉しそうにしています。サバーファームは金剛山麓の丘陵地帯にあります。高速道路を降りて国道に入り、さらに府道へと進むと、ススキやセイタカアワダチソウの茂る山肌の中に石材屋さんや養鶏場が現れて、その先にサバーファームがありました。

 ゲートを入ると、坂道の下にあるコスモスと赤く色付いたほうき草の美しい花畑が目を引きます。早速見に行きたいところですが、まずゲート横のレストランに入ってミルクの注入を行いました。11時前なので、店内は空いていました。ともちゃんは窓際の日差しが差込む温室のような席にお父さんに抱っこされて座り、ゆったりとくつろいでいました。けれど、11時を過ぎると食事ができる(それまでは飲物だけ)のでレストランは急に混み始め、予約の団体客もやってきて、少し早く店内に入れたことを喜びました。

 今日はさわやかな秋晴れで、散歩日和。風が吹くと心地よくて、ともちゃんも終始ごきげんで笑顔がたくさんこぼれています。満開のコスモスも魅力的ですが、珍しいのは細いたくさんの枝がかたまって直径30cmくらいの赤い球状になった植物です。これが「ほうき草」であることは、レストランに飾ってあった写真に添えられた名前で知りました。赤いのは、細い枝についている細長い葉っぱが紅葉しているのです。昔はこの枝で本当にほうきを作ったそうです。

 先にほうき草畑の周囲を回りました。「赤くて丸い、おもしろい木やねえ。見てみぃ。」、ともちゃんは、赤い葉の中に緑の枝が透けて見える不思議な木の横を通りながら、車椅子の心地よい揺れにギャハハ、ギャハハとはしゃいでいました。昨年も各地の農業公園で自然に咲き乱れるコスモスの花を見て秋を感じましたが、今年はきれいに整備された花壇の満開のコスモスの前で写真を撮りました。

 サバーファームは今までにともちゃんが行った他の農業公園とは異なり、動物が全くいません。一般の人には物足りないかもしれませんが、アレルギー体質で動物が苦手なともちゃんにとっては大歓迎です。また、観光農園(今はブドウ狩)がメインの小さな農業公園ですが、お花畑が手入れされていて美しいのが特徴です。ともちゃんは、コスモスを見た後、小さな温室にあるパパイヤやサボテン、ハーブ園と回って、バラ園にやってきました。

 入口に「青いバラ展示中」と書かれていたので、興味津々で探してみました。入って比較的すぐのところに薄い藤色のバラがありましたが、これがそうでしょうか。バラの花は品種によっては、ちらほら咲いているものも、たくさん咲いているものもありました。白いバラは木いっぱいに咲いていました。バラ園の奥まで来たとき、足元の小さなバラに「青いバラ」の標識が掲げられていました。

 色はやっぱり薄い藤色、萎れそうな花が2輪付いていました。落ちた花が2輪、標識の横に置かれていました。「青いバラ」は小さな体に大きな看板をしょって、ちょっとお疲れのようでした。じっくりと見ていくと、様々な色のバラはそれぞれに美しいのですが、お母さんは黄色い花びらの先だけがオレンジからピンクにグラデーションになっているバラが、黄色のTシャツの上にピンクの上着を羽織っている今日のともちゃんに一番似合って、かわいいかなと思いました。

 ぶどう園にはネットが掛けられていて、その中ではぶどう狩が行われています。多くの人が別料金を支払ってネットの中に入り、ブドウ棚の下に敷かれたシートの上で食べ放題を楽しんでいました。小さいころブドウジュースは飲んだことがありますが、酸味があまり好きでないともちゃんは、最近はブドウは食べていません。そんなことを思いながら、ネットの外からぶどう狩の光景を眺め、サバーファームのほとんど端っこまで散歩しました。

 サバーファームは程良い広さで、ともちゃんの散歩にはちょうどいいコースでした。入口近くの売店に戻り、屋外のベンチでお母さんはブドウのソフトクリームを食べ、ともちゃんは水分補給をしました。ともちゃんは強力な卵アレルギーがあるので、成分表示がはっきりしないソフトクリームは残念ながら食べられません。

 帰りにはお土産屋さんにも寄りました。以前、この地にはフクロウが住んでいたということで、フクロウのマスコットが何種類か置かれていました。その中から、ともちゃんはピンク色のちりめん生地で作った和風のマスコットを買いました。お姉ちゃんには、紅茶に入れるとハーブティーになる乾燥カモミールをお土産にしました。お父さんがともちゃんの荷物を車に積込んでいる間、お母さんは急いで駐車場の前の産直売店へ行き、ともちゃんが好きな秋の果物、柿を買いました。

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2004年10月21日(木)

 ともちゃんが養護学校小学部に入学した頃、お母さんは当り前のように、ずっとこの土地で暮らしていくものと思っていました。ともちゃんが生れた頃は共働きだったともちゃんの両親は、職場の近くに居を構えました。お母さんが会社を辞めた後も、お父さんの職場が近いので、何かと手のかかるともちゃんを両親で育ててきました。ともちゃんはこの養護学校に高等部まで通い、卒業した後も養護学校に一緒に通ったお友達と小規模な作業所を作り、地域に根ざして暮らしていきたいと希望していました。

 けれど、4年生の冬、ともちゃんの厳しい入院生活の間に、お父さんが毎週岡山の工場に出張しなければならないという事態を経験しました。お父さんの勤務先は家の近くで、夕方になれば病院に来て助けてもらえると思っていたお母さんにとっては、大きな痛手でした。そして、家族が一緒に過ごす時間を長くするためには、引越も仕方ないという考えを持つようになりました。養護学校と病院がある街なら、どこに引っ越してもその土地に馴染んで暮らしていこうと思い始めました。

 そして、その思いは現実のものになりました。お父さんの勤務地が、京都府のN市になったのです。現在のともちゃんの家からは、往復の通勤に3時間を要します。都会なら、片道1時間半の通勤時間は珍しいものではないかもしれません。しかし、お父さんも家事、育児、介護の要員であり、家事ではお母さん以上に働いているという状況では、通勤で3時間というのは厳しい毎日です。

 そんなわけで、ともちゃんの一家は来年の3月に京都府N市に引っ越します。ともちゃんは、高等部から新しくN市のM養護学校(今の養護学校もイニシャルはMですが)に入学することになりました。今の養護学校はともちゃんが大好きな学校ですから、もう3年間往復3時間の通勤時間を我慢して、高等部を卒業してから引越しをすることも考えました。一緒に育ってきたお友達や、ずっと成長を見守ってきて下さった先生方とは離れがたいものがあります。

 けれども、この新しい土地に根ざして生きていくのであればこそ、新しい養護学校で、新しいお友達や新しい先生方にともちゃんの存在を早く知って欲しいと思います。そして、この地域で共に生きていく仲間として、その輪に加えて欲しいと願わずにはいられません。きっと新しい養護学校も、ともちゃんは大好きになってくれるはずです。

 さて今日は、新しい養護学校で「高等部体験学習」がありました。ともちゃんは、両親と一緒に初めて新しい学校を訪れました。「高等部体験学習」は、来春からM養護学校高等部入学を希望する生徒を対象にしたもので、既にM養護学校中学部に在籍している内部進学者は対象外です。ですから、参加者のほとんどは地域の中学校在籍者で、重症心身障害児はともちゃんだけです。けれども、事前に現在の養護学校の先生がM養護学校を訪ねてともちゃんの様子を伝えて下さっていたおかげで、とてもスムーズに受入れていただきました。

 お父さんから、「新しい学校に行くねんで。名前を呼ばれたら、ちゃんと返事をするねんで(ともちゃんの脳の損傷状態からは言葉を理解しているとは思えないので、これはまあ雰囲気です)。楽しみやねえ。」と何度も、何度も、言い聞かされてきたともちゃんは、とても張切っています。学校に到着するなり、爛々と目を輝かせながらキョロキョロして、「ハハン、ハハン」と周囲に笑いかけています。

 最初、みんなで校長先生のお話を聞いたあと、各クラスに分かれて体験学習をします。M養護学校は学年混合で障害別のクラス編成をとっていて、ともちゃんは重症心身障害児クラスです。いつものミルクの注入の時刻にかかるので、少しだけ教室を覗いて、先に保健室で注入させていただきました。こういう細かいことも、現在の養護学校の先生が新しい養護学校の先生に既に伝えて下さっていて、ありがたく思いました。

 ともちゃんがお母さんとミルクの注入をしている間、お父さんは他の保護者や地域の中学校から付添ってきた先生と一緒に残って、入学手続きについての説明を聞いていました。ミルクが終ったともちゃんは、今度は一緒に授業を受けさせてもらうために、再び教室に向かいました。M養護学校は京都府で最初に設立された養護学校で、当初は肢体不自由児校でした。そのため、とても広い敷地にすべて平屋建ての校舎で、迷路のように続く長い廊下が印象的です。

 「名神高速道路を走って、遠く大阪から来てくれた友達です。」と紹介してもらったともちゃんは、4人のお友達と車椅子を並べて、「うた・リズム」の授業に参加させてもらいました。目の前に漂う風船のくらげや、先生がぶら下げて見せてくれる本物そっくりに作られたさつまいもに興味津々のまなざしです。先生に歌いかけてもらい、手を取って体を揺すってもらうと、楽しそうな笑顔がいっぱい溢れていました。新しい養護学校もすっかり気に入ったという顔です。

 リハビリの訓練の様子も見学させてもらい、給食時間にはみんなが給食を食べる様子を見ながら、水分補給をさせてもらいました。今年3年生のお友達は入違いに卒業してしまうので「今日会えてよかったね。」と握手をした後、ともちゃんが気に入った作り物のさつまいもをお土産にいただきました。ともちゃんが初めて訪れた新しい養護学校も、とても楽しいところでした。ともちゃんが新しい学校に馴染んでくれるかなという両親の不安も、暖かく迎えて下さる先生方と、ともちゃんのうれしそうな笑顔で、すっかり打消されました。

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2004年10月31日(日)

ススキとセイタカアワダチソウがゆれる中国自動車道を走って、ともちゃんは東条湖おもちゃ王国を目指しています。昨日までの雨と、天気予報がうれしい方へ外れたおかげで、いつもなら混んでいる宝塚トンネルの辺りもスイスイと全く滞りなく流れています。

 ともちゃんの養護学校中学部は、修学旅行で2日目に岡山のおもちゃ王国を訪れました。日帰りで修学旅行に参加したともちゃんは行けなかったのですが、お友達は開園と同時におもちゃ王国のキャラクターに出迎えられて、乗物に乗ったり、レストランで食事をしたり、パビリオンでおもちゃで遊んだりと楽しい時間を過ごしました。

 それで、今年のむつみ祭(舞台発表の文化祭)には、3年生が馴染んだおもちゃ王国のキャラクターが登場する劇をすると聞きました。ともちゃんはハート姫の役をするそうです。それならば、是非おもちゃ王国に行ってハート姫をはじめキャラクター達に会って来ようというわけです。岡山のおもちゃ王国は遠くて行けないけれど、同じ系列の東条湖おもちゃ王国ならともちゃんのお出かけにはちょうどいい距離です。

 おもちゃ王国は小さい子供向けの遊園地の中に、ダイヤブロックとか、絵本とか、プラレールとか、ままごと遊びとか、各おもちゃメーカーのパビリオンが建っています。靴を脱いでマット敷きのパビリオンの中に入って、雨の日でも寒い日でも、自由におもちゃで遊ぶことができます。このやり方が当ったのか、昔、遊園地だったところが、今はおもちゃ王国に変っているところも多く、おもちゃ王国は各地にあります。

 東条湖方面は、以前からともちゃんのお出かけに目をつけていた場所だったので、「むつみ祭はおもちゃ王国」と聞いて、早速出かけることにしました。雨天の平日で、貸切り状態に近かった修学旅行の時とは異なり、行楽日和の日曜日は家族連れで混合っています。K重工労組の社内レクリエーションが観光バスを何台も仕立てて、すごく大きな団体で入場ゲートに並んでいたのですが、その横を抜けて行く一般客はそれ以上の多さです。

 開園時間に行くとキャラクターが出迎えてくれるのですが、ともちゃんの家からでは、これには間に合いませんでした。王国の中に入ると、自動シャボン玉作り機が作るシャボン玉が飛んで来て、楽しい気分をいっそう盛上げてくれます。本物には会えなかったので、大きなパネルやダイヤブロックで作ったキャラクターと記念撮影しました。パネルなのに、一緒に写真を撮ると何となくワクワクするのが遊園地の魔法です。

 まずは「腹ごしらえ」がともちゃんのお出かけの決りごと。11時前のレストランはお客もまばらで、車椅子でも気兼ねなく店内を好きな場所に移動することができました。ちょうど、荷物を一杯ぶらさげたともちゃんの車椅子でも楽に置ける、後ろが広く開いている席があって、そこに着席しました。ともちゃんはミルクの注入、お父さんは遅い朝ご飯、お母さんは早いお昼ご飯です。

 注入が終って、レストランの窓から見えていたパビリオン「まなびのハウス」を覗いてみましたが、小さな子供でいっぱいでした。ともちゃんを抱っこして入るには危険なので、パビリオンは諦めて、こちらもずっと気になっていた、池の周りをぐるりと一周する子供汽車「イエロー・ロコモーション」に乗ることにしました。チューチュートレインよりは小さいけれど、枚方パークやエキスポランドの子供汽車よりはずっと大きいので、ともちゃんも楽しめるでしょう。

 汽車の駅に行くまでに、魔女と出会いました。今日はハローウィンなので、魔女や道化師の仮装をしたスタッフに「トリック、オア、トリート」と言うとアメをもらえるという特別なイベントをやっているのです。お母さんがともちゃんを連れて「トリック、オア、トリート、やんな。」とともちゃんに同意を求めるように言いました。魔女さんはともちゃんに言って欲しかったようですが、ともちゃんは知らん顔。でもアメ(ドロップ1個)はしっかりゲットです。

 汽車の駅で、ともちゃんが車椅子に乗っていることを話すと、ホームの中まで車椅子を乗入れて下さいと、とても快く迎え入れて下さいました。お父さんがともちゃんを抱っこして汽車に乗り、お母さんはカメラを持って、吸引器や荷物と一緒に一つ前の席に座りました。汽車がぐるりと回ると日の光の当り方が変ります。それを感じたともちゃんは、好奇心いっぱいの目できょろきょろして、にこーっと笑顔を見せてくれました。

 王国内を散歩した後、お土産屋さん「トイ・スタジアム」へ行きました。店内に入った途端、たくさんのおもちゃに囲まれた雰囲気を感じたのか、ともちゃんはパッと満面の笑顔になって、まわりを見回していました。色々目移りしましたが、ともちゃんは、NHKキャラクターグッズのコーナーで「でこぼこフレンズ」のメロディーヌのおしゃべりぬいぐるみと、王国のキャラクターのタオルを買い、お姉ちゃんには王国のチョコサンドクッキーをお土産にしました。

 次の王国のキャラクターショーは1時からなので、これを見てからだと、帰り着くのが遅くなります。心残りですが、そろそろ王国を発って、家路につかなければなりません。往路で高速を降りてすぐに見かけた「道の駅とうじょう」に寄って水分補給をしました。レストランを覗くと、とんかつやエビフライといった、しっかりした食事だけのようなので、情報・休憩コーナーで注入しました。

 レストランの前はすぐに立去ったのですが、両親はそれぞれに同じものが気になっていました。料理のサンプルに出ていた異様に長い長いエビフライです。太さは普通なのに、長さが20cmはあるような代物でした。本物も同じ形をしているのでしょうか。そんなに細長いエビがいるとも思えないので、何らかの加工をしてあるのでしょうか。今度は、道の駅とうじょうまで、謎のエビフライの正体を見定めに行きましょう。

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