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21日(火)
「お楽しみ会でおしまい」
13日(日)
「引越し」
17日(木)
「中学部卒業式」
せっかく家を建てるのなら、ともちゃんが生活していくのに便利なバリアフリーの家にしたいと思います。予算の許す限り、家族それぞれの思いを目一杯詰込みました。建築をお願いしている建築会社(本業は住宅販売会社)さんが、高齢者や障害者のためのバリアフリー住宅へのリフォームに力を入れている会社で、専門のコーディネータさんが細かい点まで色々とアドバイスしてくれました。
食物アレルギーのあるともちゃんの食事やミルクの準備をする時、他の家族の食材や調理途中の汁などが接触しないよう、とても気を使っています。新しい家では、シンクが2つあるキッチンにしたいというのが、お母さんの絶対的な希望でした。ガスレンジを挟んで、ともちゃん専用のシンクと家族用のシンクを設けてもらいました。今までは、ともちゃんのアレルゲンである卵料理はできるだけ避けてきたのですが、お姉ちゃんは好きな卵料理を作れると喜んでいます。
ともちゃんは、今までマンションにしか住んだことがありません。マンションでは、自宅のある階までエレベータで上がってしまうと部屋の中は平面的で、ともちゃんには都合が良かったのですが、一戸建ての家では平屋という訳にはいきません。2階建てにするのなら、ホームエレベータは必須です。2階の屋根は、フラットな屋上にしたらどうでしょう。そこから西山を眺められたら、散歩に行けない日でも「お出かけ」が楽しめるでしょう。
ということで、屋上までエレベータをつけることにしたのですが、屋上に上がっている時に、万が一停電や災害でエレベータが止ったらどうしましょう。心配性のお母さんは、こういうことまで考えてしまいます。そこで、家の外側に非常用のスロープ(滑り台)をつけてもらうことにしました。保育所などではよく見かけますが、普通の住宅でそういうスロープを取付けることは、まずありません。それでも、建築会社さんにスロープを作っている業者さんを探してもらい、お母さんの思い通りにすべく着々と話を進めています。
さて今日は、新しい家の上棟式です。今回のような鉄骨住宅の場合、一人の大工さんがすべてを仕上げていくのではなく、それぞれ専門の技能を持った多くの職人さんの連携によって家が完成します。上棟式では、建築会社の方を始め、基礎工事、鉄骨の組立、電気、水道、内装関係と家を建てて下さる職人の親方さんが一同に会し、ここまで無事に工事が進み、棟が上がったことをお祝いするとともに、今後の工事の無事を神様にお祈りします。
そして、ともちゃんの家族から職人さんに、工事を進めていただくお礼を直接申上げる機会(現在の自宅から工事現場が遠く離れているともちゃんの家では、しょっちゅう現場に行くことができないので)でもあります。ともちゃんの両親は、工事をして下さる方々との関係を大切にしたいと考えています。
ともちゃんが参加できないのなら、お父さんが代表して参加する予定でしたが、幸いともちゃんの体調も良く、暖かな上棟式日和です。ともちゃんも上棟式に参加することができました。式の前にミルクの注入を済まそうと、1時間前に現地に着くように出かけました。前回お母さんが訪れた時は基礎だけだったのに、鉄骨の骨組が出来上がっていて、実際の間取りもエレベータの位置も、完成したものをイメージすることができます。
家の際に車を止めて、2階や屋上の床になる鉄の波板を眺めながら、車の中でともちゃんの注入を行いました。そうこうする内に建築会社の方が来られて、工事現場で何やら準備を始めました。そう思って見ていると、瞬く間に紅白の幕が張られました。「ほら、ともちゃんのおうち、紅と白の縞模様の壁がでけたで。」、注入が終ったともちゃんは、穏やかな日が差す車外へ出ました。
工事関係の職人さんも集まって下さり、新しい家の周りは華やかなおめでたい雰囲気に包まれています。ともちゃんもそれを感じて、ギャハハギャハハと笑顔を振りまいてはしゃいでいます。上棟式の神様「べっぴんさんのお多福さん」も見せてもらいました。今回のものは目の穴を通して水引を結んでありますが、鼻の穴で水引を結んだものもあるそうです。「お多福さんも(酸素カニューラと経管栄養のチューブを鼻につけている)ともちゃんと同じやな。」
建築現場の敷地内はまだコンクリートで平らにされておらず、所々に鉄筋が出ている、掘起こされたままの地面です。凹凸が激しく、とても車椅子を押して中に入ることはでききません。ともちゃんは、お父さんと建築会社の方に車椅子ごと空中を飛んで運んでもらい、神様の祭壇近くまでやってきました。屋根の下に入るとさすがにひんやりするので、ひざ掛けをかけて上棟式に参加しました。
祭壇にお参りして、神様にお供えしたお酒を、お父さん達が安全を祈願して家の四方に撒きました。その後、それぞれの工程を担当される職人さんを紹介してもらいました。お父さんが挨拶をする時に、ともちゃんのことに触れて、「ともちゃんに便利な家にするので普通の家とは違ったところもあり、お手数をかけますが、どうぞよろしくお願いします。」と、しっかりと頼んでくれました。ともちゃんは、終始ごきげんで、ニコニコとこの様子を見守っていました。新しいお家が完成するのが楽しみです。
ナレーター、おもちゃの兵隊、王子様の3役をこなすY君のナレーションで劇が始まりました。おもちゃ王国では王様と美しいお妃様がダンスを踊っています。鏡がお妃様よりも森に住むハート姫のほうが美しいと言ったことから、お妃様はおもちゃの兵隊にハート姫をおもちゃ王国から追い出すように命令します。3年生の男子が演じるおもちゃの兵隊さんは色んな太鼓とシンバル(これは先生)のマーチングバンドでかっこよく登場しました。
森では小人たちが働いています。そこへ、ピンク色のバラの花の描かれたドレスを着て、ハートのついたキラキラ輝くティアラをかぶったハート姫のともちゃんが、優雅な音楽に乗って登場しました。客席からは見えませんが、お姫様の役とのことで、お姉ちゃんがくれたビーズのブレスレットもつけています。ともちゃんは穏やかな微笑みでお澄まし顔をしています。
小人さん達とのやり取りが始まりました。小人さんの台詞が始まると、ともちゃんはゆっくりと首を左右に動かして周りを見て、左足をピンと突っ張っています。ともちゃんの「・・・私もお手伝いするわ。」と(黒子の先生が)言う台詞に、小人さん達が「ありがとう。」と答えます。ともちゃんはにっこりと、本当ににっこりという表現がぴったりの、上品なロイヤルスマイルを浮かべると、また、お澄まし顔で小人さん達と一緒に舞台を去っていきました。
森にはいろんな動物が住んでいます。まずはタヌキさん達がやって来て、踊りを披露しました。タヌキさん達に、ハート姫も一緒に踊ろうよと誘いを受けて、ともちゃんが再び登場しました。タヌキさんに囲まれて、鳴子のカチャカチャという音を聞いて穏やかに微笑むともちゃん。ともちゃんも先生に鳴子を鳴らしてもらって、一緒に踊りました。タヌキさん達と一緒に花道を降りるとき、スポットライトを浴びて、ふわりと表情をほころばせていました。お姫様役はここで交代です。
その後はカエルさん達が、その次にはウサギさん達やって来て、合奏やら平均台やら、それぞれに得意技を披露していきました。2番手のハート姫のSちゃんは小人さん楽団と合奏をして楽しく暮らしています。そこへ、魔法使いに化けた王様とお妃様が毒リンゴを持ってやって来ました。ハート姫が困っていると、王子様が急いで止めに来ました。「そんなことをしてはいけません。みんな一緒に仲良くおもちゃ王国で暮らしましょう。みんなで踊りましょう。」、ここで大団円を迎えます。
学年ごとに全員が登場して、「ららら、らっせーら」を踊ります。まずは3年生から。下手からともちゃんも現れました。らっせ、らっせ、らっせーらの掛け声に、綱を持って踊る代わりに、ともちゃんは済ました顔で右足を伸ばしてピーンと突っ張らせていました。2年生、1年生と順番に踊ると、4度ともちゃんが舞台に登場しました。盛りだくさんな舞台です。
最後は中学部全員で「気球に乗ってどこまでも」を合唱します。ともちゃんは今度は足をだらんとリラックスさせて、時々口をアムアムさせていました。キャスト紹介では、ハート姫はトリです。お友達の紹介が済むのを待って、ようやくともちゃんの番が回ってきました。舞台中央に車椅子を押してもらって移動するとき、再びハート姫のロイヤルスマイルが見られましたが、ちょっとの差でスポットライトの花道ではお澄まし顔に戻っていました。
発表が終って、ともちゃん達中学部が体育館の入口付近に引上げたところをお母さんが訪ねました。ともちゃんを見つけて「上手にハート姫やったなあ。今日はギャハハ笑いせんと、お姫さまらしく上品にお澄まししてたやろう。かわいらしいお姫様やったわ。でもな、ホントはちょっと緊張してたんとちゃうか。」と声をかけると、舞台ではあんなにお澄まししていたともちゃんなのに、お母さんと先生の方を交互に見ながら大きな口を開けてギャハハハハと笑っていました。
ともちゃんの、ホッと安心したような甘えたような笑いが、「そうやねん。いつもと違う雰囲気やったから、緊張したわ。」と物語っているようでした。今年のむつみ祭は練習には全く参加できなかったので、いきなり舞台に出て、観客席から注目されている気配はするけど、観客席は遠いという舞台独特の雰囲気を感じて不安だったのでしょう。だから、いつもの大口を開けてのギャハハ笑いが出なかったのでしょう。
お母さんはともちゃんが楽しそうに笑っているのを見るとうれしくなります。けれど、今回は「緊張する」という感情の芽生えとその表情を見せてくれたことがうれしく感じました。これからも、ともちゃんが、成長するに従って、色々な表情を見せてくれるでしょう。そういう意味でも、ハート姫のちょっと緊張した上品な微笑が印象的なむつみ祭でした。えっ「ちゃうわ。お姫様になりきって、上品なロイヤルスマイルしてたんやで。演技派やねんで。」ですって。
防寒用の下着の他に、今年は毛糸の帽子も被ります。頭だけでなく耳の上も覆って、顎の下で紐を結ぶタイプのものです。白地にちょっとくすんだ赤と緑のイチゴの模様のこの帽子は、少し早いお姉ちゃんのクリスマスプレゼントです。「クリスマスに貰ったら、もう冬休みなので、学校にしていけない。」と言って、両親からのプレゼントのマフラーを1ヶ月も早くもらったお姉ちゃんが、ともちゃんにも前倒しでくれました。
「今年は帽子が流行ってるから、いろんなとこで売ってるけど、たくさん見て回って、ともちゃんに一番似合うイチゴの模様にしたんやで。ほんまによう似合うわ。」、確かに、イチゴの色目がフリースの上着とお揃いで、とてもおしゃれです。でも、脳の損傷のために頭の長さが健常者よりも短いともちゃんは、顎の下の紐をぎゅっと引っ張って締めると、帽子が目の上にまでかかってしまいます。そうならないように、ふわっと被ります。
家のドアを開けると、ビュービューと冷たい風が吹付けて、お母さんの言葉通りでした。ともちゃんの家の前はマンションの建物の切れ目で風の通り道になっており、一段と寒いので、ともちゃんが出かける時には大きな寒暖の差に用心しなければなりません。タクシーに乗込んでしまうと、再び温室のような暖かさにほっとします。窓の外には青い空に白い雲が浮かんでいて、まだ秋の空のようです。
今日は中学部のお楽しみ会です。学校に着くと先生や看護師さんが迎えに来て下さいました。「みんな体育館でお楽しみ会に参加しているんです。ちょうど、今から先生バンドの演奏が始まるところですよ。」、ともちゃんも体育館に行って、みんなの中に加わりました。ともちゃんは、最初、マイクを通した大きな音にビクッとびっくりしましたが、その後自分で大笑いしていました。そして、Sちゃんに手を繋いでもらって、一緒にニコニコ楽しそうに見ていました。
全員サンタクロースの扮装をした先生バンドは色々な曲を演奏し、歌ってくれました。ともちゃんが一番気に入ったのは、少し古い曲「アジアの純真」でした。「しーろーのパーンダを」のところから、ともちゃんはギャハハハと大笑いしていました。お母さんは、この曲が何の曲か分からずに聞いていましたが、そういえば以前お父さんやお姉ちゃんが、こんな歌詞を歌っていたことがあったなあと思い出しました。
みんなはプレゼントにPTAの予算で買ったきれいな缶に入ったお菓子を貰いました。お菓子はクッキーで、ともちゃんは食べられないので、ともちゃんからお姉ちゃんとお母さんへのプレゼントになりました。きれいな缶はともちゃんのものです。今学期は今日が最後の登校になるともちゃんは、プレゼントの他に一足早く通知表も貰って帰りました。
2学期の出欠状況は授業日数77日のうち、出席が15日、欠席が62日。今年は暖冬のお陰で2学期の出席日数が1学期の12日を上回りました。例年なら1学期、2学期、3学期と進むにつれて、出席日数が少なくなる傾向にあるのですが、今年は特別です。年の瀬も押し迫っているというのに、今日のような穏やかなお天気なら、少し遅くに家を出ると、ともちゃんも登校できました。3学期も暖冬が続いていればいいなあと、ともちゃんもお母さんも思っています。
[12月25日付記]
今日は本物のサンタさんがプレゼントを置いていってくれました。今年のプレゼントはパウダービーズのキティちゃん抱き枕です。ともちゃんは側湾が強くなって、横向けに寝ていても、じわじわとうつ伏せや仰向けに潰れてしまいます。「キティちゃんを抱きかかえたり、足に挟んだり、側湾の背中の凹部に敷いたり、自由に使ってね。中がパウダービーズなので、キティちゃんも自由自在にくねくね曲がるよ。」というサンタさんの思いが込められています。
新年に入ってぐっと寒くなったために、ともちゃんはすっかり冬モードに入ってしまいまいた。特に体調を崩しているというわけではありませんが、朝食のお粥ペーストを食べる速度が遅くなっていて、そのせいで一日の予定がどんどん遅れていきます。寝る時間は決まっているので、一日24時間を食べることや排泄、身体をきれいにすることなどの生活を維持する活動だけに使って過ごしています。
ともちゃんの朝食が遅くなっているので、集合時刻の9時までに、名神高速道路を走って京都の学校まで行着くことはとてもできません。事情をお話しして、遅刻して到着する旨を伝えました。ともちゃんは、状況が分かっているかのように、今日はいつになく頑張って朝食を食べています。これなら、大幅に遅刻することなく到着できるかもしれません。
ともちゃんの荷物を入れたリュックには、今日の試験の無事合格を願って、長岡天満宮の合格お守りと天橋立の文殊堂のお守りを付けました。「遅刻は、30分遅れまでやったら、試験会場に入れるねんで。」とか、「ともちゃんは、1級(身体障害者手帳)、A(療育手帳)のうえに、学校推薦も貰っている(転校するための書類を今の養護学校で書いてもらって提出している)から大丈夫や。」とか、名神高速を走る車中の話題も、すっかり受験生です。
ともちゃんの養護学校の高等部受験は遅刻で入室できないなんてことはありませんが、予想外に早く15分遅れで到着しました。会場である音楽室に入ると、他の子供達(地域の中学校からの受験生)は神妙な顔つきで緊張しています。ともちゃん以外の子供達は、実際に午後から数学や国語の筆記試験を受けます。そんなお友達を尻目に、ともちゃんは一人ギャハギャハ大きな声で騒いでいます。
ともちゃんは、新しい学校に来たというので、興奮してはしゃいでいるのでしょうが、他の子供達には大変迷惑な話です。ともちゃんは、いつもなら楽しい気持ちを共有してくれるはずのお母さんに、まじめな顔で「静かにせんとあかんよ。」と叱られてしまいました。それで、今度はお父さんに笑いかけましたが、「ここでは、大きい声出したらあかんよ。」と取り合ってもらえませんでした。
今日は午前中に高等部の先生、リハビリの先生、神経科のお医者さんと3回の面接を受けて、午後は筆記試験の予定なのですが、鉛筆を持つこともできないともちゃんは、面接が終れば試験はおしまいです。ともちゃんを抱っこできるようにみんなとは別に教室を用意していただき、面接時間の合間にミルクの注入をできるようにと面接時間も配慮していただきました。
ともちゃんの待機している教室に、前回見学に来た時に「サツマイモ」を下さった先生が入って来られました。ともちゃんにも色々と声をかけてくれるのですが、今回はニコニコとそれに応えることはせず、ともちゃんは神妙な顔ですましています。ちょっと疲れたのかなとお母さんは思っていたのですが、先生が出て行くとともちゃんはこらえていた思出し笑いを吐出すようにギャハハハと大笑いしました。
「ともちゃん、さっき怒られたから、笑ったらあかんと思ってこらえてたんか。音楽室では他の子がいたから静かにせなあかんねん。この部屋では笑ってもええねんで。先生が声かけてくれたら、ギャハギャハしたら、ええねんで。」、両親の説明を、ともちゃんが理解したのかどうかは分かりませんが、次からは教室に来られた先生に声をかけていただく度に、元気な笑顔でうれしそうに応えていました。
面接でも、ともちゃんはニコニコとごきげんです。書類提出の時に、お父さんが書類に本当ならともちゃんの名前を書かなければならないのに、間違えて自分の名前を書いてしまっても、電話連絡の時間の話でお母さんが「いや、電話に出られない時は、居留守使ってますから。」と失礼なことを言ってしまっても、ともちゃんは愛想よく微笑んでいました。
新しい学校の高等部に入って大きく変化したことは、今までの通級とは違って、訪問学級籍にしたことです。お出かけ、学校、友達が大好きなともちゃんですから、できるだけ学校に通わせてやりたいという両親の思いも汲んでいただいた上で、「スクーリングに制限はなく、登校できる時にはいつでも登校していただいて結構です。訪問籍にしておくと、登校できない時に先生の方から訪問するのが(手続き上)簡単なんです。」ということでした。冬ごもりの時期のことを考えて、とりあえず今年は訪問籍にしてもらいました。
最後は、神経科のお医者さんの面接を受けました。ともちゃんの障害の状態や日常生活(日帰りで修学旅行に行ったことも自慢しました)について話しました。「お出かけは大好きなのですが、冬の間は冬ごもりになって、お母さんが買物に行った時などは、大声でオーオー(私もお出かけに連れてってよー)とよく怒っています。」と言った時、ともちゃんは、その通りやと言わんばかりに、タイミングよくギャハハハと大笑いしたので、「(状況が)よく分かっていますね。」と誉めてもらいました。
[後日談(2月1日)]今日、ともちゃんの家のポストに新しいM養護学校からの手紙が届きました。中にはしっかりと「合格」の二文字が書かれていました。「合格おめでとう!」
ところが幸いなことに、11日からの3連休あたりから、ともちゃんは元気を取戻し、体験入学に出席できることになりました。ともちゃんは開始時間に30分遅れての到着です。最初の集合場所である音楽室に入る時、ともちゃんは気合一発、満面の笑顔で「ハハーン(おはよう)!」と声を出していましたが、残念なことにすでにそこには保護者だけが残り、子供たちはそれぞれのクラスで体験学習に入っていました。
音楽室にはお父さんだけが残り、ともちゃんとお母さんは高等部1組のクラスに入れてもらいました。高等部は、学年とは関係なく障害の状態別にクラス分けがされていて、1組は重症心身障害児のクラスです。今日は美術の授業で、発泡スチロールのカセットテープボックスに色を付けた紙を貼って仕上げます。実際の作業に入る前に手や腕をほぐして、動きやすくするために手遊びをしました。
直径が10cmくらいある大きな押しボタンに電源を繋いで、このボタンでスイッチが入るようにしたカセットテープデッキが登場しました。それぞれの手遊び歌を担当している生徒が一人ずつ前に出て、それぞれの状態に応じて、曲を選んだり、テープ入り口を開けたり、大きなボタンを押して曲をスタートさせたりします。
その前に、音楽に合せてみんなで代表者の周りを車椅子でぐるぐる回って、代表者を盛上げます。先ほど肩透しを食らってしまったともちゃんは、今度こそニコニコと楽しそうに参加していました。手遊びやおもしろい場面では大きな口を開けて笑っていました。みんなが色の付いた紙を貼っているのを見学しながら、教室でミルクの注入をさせて頂きました。
そして、今日は、会いたかった先輩のNちゃんにお会いすることができました。Nちゃんは、現在高等部に通学して経管栄養を行っている唯一の先輩と聞いています。登校時間も10時半から11時頃ということや、痰の吸引を行っているなど、今のともちゃんと共通するところが多くあります。そして、Nちゃんもキティちゃんグッズを学校に持ってきていて、どうやらキティちゃんのファンでもあるようです。
養生訓練の時間になると、Nちゃんがリハビリの訓練をしている部屋にともちゃんも一緒について行き、そこで水分補給をさせてもらいました。ともちゃんは、N先輩にもフレンドリーな笑顔をたくさん向けていました。4月からは、きっと、Nちゃんと一緒に過ごす時間がたくさんありそうです。仲良くして頂けて、学校や地域のことなども色々と教え頂けたら、嬉しいなと思います。
そろそろ疲れが出てきて、ともちゃんの笑顔に陰りが見えてきました。ぼーっとしている時間が長くなってきたなと思う頃、ちょうど体験入学もおしまいの時間になりました。帰りに、新しい家の前を車で通って、車の中から出来上り具合を見ました。ともちゃんのお城も着々と仕上っていて、サーモンピンク色(米国サンタフェの赤土日干し煉瓦の家を模したもの)の外壁を塗り終えて、外構工事に入っていました。
2月22日、昨年末から2ヶ月ぶりに登校しました。タクシーの中で咳込んでしんどそうにしていたので、お母さんはちょっと登校を急ぎすぎたかなあと気にしていました。けれども、学校に到着して、いつものようにパルスオキシメータで動脈血中飽和酸素濃度と心拍数を測定するために保健室に入ると、ぐるりと周りを見回して「おっ、ここや、ここや、学校や」と言うように、ニコニコ笑顔を浮かべました。新しい養護学校で見せた興奮してはしゃいだ笑いとは、ちょっと違った安心した笑顔です。
ミルクの注入の前に、もう終りかけている自立訓練の授業を少し覗きに行きました。みんな訓練が終って、車椅子に乗込んでいるところでした。麗らかな日差しが差込む訓練室で、声は出さなくても強い存在感を発している重症心身障害児のお友達の気配を感じてにっこり。自立訓練はともちゃんのちょうど登校時間に当るので、たまに少し早く登校した日には、遅れて参加できました。お友達と顔を見合せながら、マットの上に横になって、身体を伸ばしてもらいました。
訓練室では先生に「ともちゃん、2月に登校できるなんて、すごいやん。」と声をかけてもらって、また笑顔がこぼれます。静かなお友達に語りかける先生方の賑やかな声を聞くのも、ともちゃんは大好きです。みんなと一緒に部屋を出て、エレベータでともちゃんの教室のある3階に向いました。3階のエレベータホールではSちゃんがともちゃんを迎えてくれました。Sちゃんがともちゃんの顔を覗込むようにして笑うと、ともちゃんもSちゃんに顔を近付けて笑い合っています。
教室に入ると、ともちゃんの好きなざわめきが満ち溢れています。先生の声、友達の声、友達の発する音や気配が混り合ったワクワクするような、そして落着くようなざわめきです。H君が、ともちゃんにパンフレットを見せてくれました。ともちゃんが休んでいる間に校外学習で行った海遊館(水族館)のパンフレットです。「ともちゃん、ワニ。」、H君はワニが大好きです。目の前の写真にキョトンとするともちゃんに、先生が「H君、もっと、かわいいものを見せてあげて。」、「じゃあ」とH君がページをめくり、「ともちゃん、イグアナ。」
ともちゃんの学年は全員で11名です。一応2クラスに分かれていますが、教室は2クラス一緒で、クラス単位で行動する時は、いつも11名で行動します。元気なお友達も、人とかかわるのはちょっと得意ではないというお友達もいます。障害の種類や状態は様々なクラスメイトですが、とてもよい集団にまとまっています。登校日数も少なく、登校時間も短いマイペースのともちゃんも、この集団の中にちゃんと居場所があります。嬉しいことです。お母さんは、このクラスをまとめている先生方に、ともちゃんの居場所も見つけて下さったことをとても感謝しています。
2月25日はクラス単位の生活の授業で、みんなが散歩に行っている間にともちゃんが登校しました。みんなが帰ってくるまでにミルクの注入を済ませて、みんなが帰ってきた教室で給食前に卒業式の歌の練習と、「たびだちのことば」の練習をしました。歌はミルクの注入をしながらもテープで聞かせてもらっていたので、練習の時はともちゃんもアアーアーと大きな声を出していました。
「たびだちのことば」はいわゆる答辞で、学校生活、特にこの1年を振返っての出来事の感想をそれぞれのパートに分かれて言います。一人一人のセリフが、実にその子にぴったりで、子供達が全員自分の気持ちを伝えられたら、きっと印象に残っている行事はこれで、こう言うだろうなと思われる楽しいものです。
ともちゃんのせりふは3つです。プール遊びのところで「足をつけたら、冷たかった。」、修学旅行のところで「友達と一緒に新幹線に乗った。」、そして最後に1人転校して行くともちゃんに「ともちゃんも新しい学校で元気に頑張ってね。」と声をかけてもらったことに対して「はい。みんなも元気でね。」と答えます。練習では、ともちゃんは自分のセリフのところで、声を出して笑っていました。
3月に入り、いよいよ卒業式まで秒読み段階となりました。家でも卒業式の歌のテープを聴いています。卒業式当日のともちゃんは、緊張するかもしれないなあとお姉ちゃんは笑いながら心配してくれています。でもまあその時はその時で、ともちゃんがともちゃんなりに卒業式を感じてくれればいいとお母さんは思っています。それまでに、いつもの学校の楽しさをたくさん味わって欲しいと思います。今日もともちゃんは登校できました。無理はせず、あと何日登校できるでしょうか。とても名残惜しいです。
昨日は、朝から引越し屋さんの梱包作業の人が来ていて、ともちゃんは落着きませんでした。少し前から、お父さんにもお姉ちゃんにも「ここのお家で過ごすのも、あとわずかやなあ。」とか、「いよいよ引越しやで、お家変るねんで。」とか言われてきたのですが、引越しとはどういうものなのか、ともちゃんにはよく分りません。
ピリピリとした緊張感の中でテキパキと作業は進んで行くのですが、それが余計に、ともちゃんの不安をかき立てたようです。「いつもと違うで。この人らいったい誰や? 私の知らんとこで何してんの?」、朝からともちゃんの顔にはいつものような豊かな表情がなく、険しい表情をしています。もちろん笑顔はありません。硬直発作を頻繁に起していましたが、とうとうガクガク発作まで起ってしまいました。
ともちゃんがいるリビングの荷物の梱包は一番最後に回してもらって、主にはお母さん、時々はお父さんが引越し屋さんの応対をして、捨てていく物と持っていく物を選分けています。ともちゃんが頑張って一日の予定をこなしていく間に、他の部屋の箱積め作業はどんどん完了していきました。引越し荷物の分別は一段落したので、しばらくの間引越し屋さんの対応はお姉ちゃん一人に任せ、昼食を終えたともちゃんはお父さんの運転する車でお祖母ちゃん宅に向かいました。
ともちゃんが出発する前に、お母さんは、経管栄養用品、薬、食事道具、食物アレルギー用のご飯、着替え、吸入器、吸引器、消毒用のミルトン一式、パルスオキシメータ、携帯用酸素ボンベ、酸素濃縮器など、ともちゃんの日常生活の必需品を忘れ物がないようにいように気をつけて積込みました。ともちゃん用の荷物だけで10個以上になる大移動になりました。一足先にともちゃんの引越しです。
車の中でも、強張った表情を崩さなかったともちゃんは、お祖母ちゃんの家に着いてなおも不安げな様子でした。 仏間をともちゃん専用の部屋にしてもらい、酸素濃縮器をはじめ、ともちゃんの生活用品一式を配置しました。いつでも、誰にも邪魔されずに、経管栄養の調乳を行えるよう、部屋の前にある洗面所もともちゃん専用に空けてもらい、イルリガートルを浸したミルトンの容器を置きました。何でもこの部屋で済ませられるようにしてもらって、まるで和室の個室に入院しているようで快適です。
しばらく布団の上に置かれて、神妙に様子を伺っていたともちゃんは、お祖母ちゃん宅に来ていることがわかったのか、安心した穏やかな表情に変り、ニコニコとたくさんの笑顔が溢れました。「今日は引越しの梱包作業があったから、しんどかったなあ。お祖母ちゃんのお家でゆっくりくつろごな。」、夕方のミルクの注入の用意をしていたお母さんは、くつろいでいる場合ではないことに気がつきました。注意深く梱包したつもりだったのに、水薬の一式を忘れていました。
痰切りの薬は一日くらい飲まなくても平気ですが、抗けいれん剤はそういう訳にいきません。血液中の抗けいれん剤の濃度を常に一定に保っておくことが大切で、それによってけいれん発作を抑制しています。一時的にでも血中濃度が薄くなれば、大きなけいれん発作が起こりやすくなります。頼みの綱はお姉ちゃんです。お父さんが家に帰り着くのと入れ替りで、今度はお姉ちゃんが薬を持って電車でお祖母ちゃん宅に来てくれました。
お母さんに抱っこされて、すっかりくつろいでいたともちゃんは、思いがけなくお姉ちゃんも来てくれて、大喜びでした。それにしても、昨日は国公立大学の後期試験日で友達は受験しているというのに、早々と浪人確定のお姉ちゃんは引越しで大活躍でした。きっと、今日も頑張ってくれていることでしょう。ドタバタの引越しでしたが、昨夜安心してぐっすり眠ったともちゃんは、元気を取り戻しています。明日の朝、多くの荷物を引き連れて帰る先は、新しいお家です。
今までは、大阪から京都の新養護学校に向って名神高速を走っていたのですが、今日は逆方向です。京都府N市の自宅から大阪府M市の養護学校に向うと、家から名神高速までの一般道と、名神から入った近畿自動車道が思いがけなく混んでいました。その上、近畿自動車道をいつもとは違う養護学校近くのランプで下りたために、一方通行に阻まれて、なかなか養護学校に近づけなかったりして、逆方向の時よりも大幅に時間がかかりました。けれども、卒業式に遅刻はしないぞと、張切ってかなり余裕をもって出発したおかげで、開会に遅れずに到着することができました。
ともちゃんは小学部の卒業式にも、中学部の入学式にも着たひざ掛け兼用のお姫様スカートを履いています。キティちゃんの柄が布の織模様に入ったピンクのフリース生地に、白いレースを飾ったロングのジャンパースカートで、お母さんがデザインして、お祖母ちゃんに縫って貰いました。今回はこの上に、新しく買った白いレースの丈の短いカーディガンを羽織りました。カーディガンにはお姉ちゃんが作ってくれたピンクのコサージュを付け、髪はイチゴの飾りの着いたゴムで結わえています。
学校に到着して、先生や看護士さんに「ハート姫の再来やなあ。」と迎えて貰ったともちゃんは、急いで卒業生みんなが集合している待機場所に向いました。両親は保護者席に着席です。卒業式が始り、卒業生が入場してきました。お友達、特に女の子たちは制服を意識した(養護学校には制服はないのですが)装いなので、白いレースとピンクのお姫様ドレスのともちゃんは、とても目立っています。今日のともちゃんは、緊張する様子もなく、ごきげんでニコニコと笑顔を振りまいています。
ともちゃんは、今日でこの学校に通うのが最後になるということは、きっと理解していないでしょう。9日ぶりに登校できたことや、友達や先生の声を聞いたり気配を感じたりしたこと、その上今日は式典で何やら賑やかしいことが嬉しくて、笑顔が溢れたのだと思います。大好きだった養護学校の最後の日を緊張したり、しんどかったりして十分楽しめないまま終らせるのはとても残念な気がするので、ともちゃんがはしゃいでいるのはうれしいことです。
一人一人が名前を呼ばれて校長先生から卒業証書を授与される時には、子供たちの個性(ともちゃんのような重症心身障害児はの個性はこの場だけでは計り知れないところもあるのですが、特に元気に動ける子供たちの個性)がそれぞれ見られて、とても微笑ましい気持になりました。中でも愉快だったのは、トトロのような大きな身体とゆったりした動作で癒し系のSちゃん。自分の席から斜めに最短距離で校長先生の所まで行き、証書を読上げる校長先生の演台にドンと手を着きました。お相撲さんのような貫禄で前屈みに迫るSちゃんに対して校長先生が小さく見え、会場が暖かい笑い声に湧きました。
ともちゃんは、名前を呼ばれて校長先生の前に出た時は、とても神妙な顔をしていました。賞状を読終えた先生が、演台の前からともちゃんの車椅子のところまで来て、賞状を手渡して下さいました。担任の先生に手を添えて貰って、賞状を持たせて貰うと、「ありがとう」と言わんばかりに、大きな口を開いて、満面の笑顔を見せてくれました。ともちゃん、すごい。カメラを構えていたお母さんは、感激で思わず手ぶれしてしまいました。
ともちゃんのもう一つの「すごい」は「たびだちのことば」(答辞)です。式典の間中、ともちゃんは、終始ごきげんで、時々キョロキョロと周りを見回しては、笑っていました。「たびだちのことば」になっても、友達が話すときは、ケラケラ笑っていましたが、自分の番になって、マイクを向けられると「ん」と口をつぐんで、お澄ましをしてしまいます。「ともちゃんって、そういうところがあるもんなあ。」とお母さんが納得していると、ともちゃんは嬉しい裏切りを見せてくれました。
最後の方で、Hくんが「ともちゃん、新しい学校に行っても、元気で頑張ってね。」と言ってくれたのに対して、ともちゃんは「はい。みんなも元気でね。」と答えます。マイクをともちゃんに向けて、先生がセリフを言ってくれました。そのときです。ともちゃんは大きな声でマイクに向って「ははん、はああーん、はああー、ああーあー。」とお話ししました。ああ、ビデオ持って来れば良かったと後悔しました。
私のこと、特別に言ってくれたので、私もちゃんとみんなにお礼を言いたいよ。きっと、ともちゃんはそう思っていたのでしょう。それで、思い切ったように、頑張って大きな声でお話ししたのでしょう。つくづく、ともちゃんも中学を卒業して、4月から高校生になるのだなあと思います。本当に立派に成長しました。ともちゃんの楽しい学校生活を支えてくれたM養護学校の先生方、お友達、本当にありがとう。皆様のお陰で、みんなの中で、ともちゃんは、こんなに感情豊かに成長することができました。
在校生が送ってくれる花道をギャハギャハの笑顔で通った後(みんなはスクールバスでそのまま下校したのですが)、ともちゃんは静かになった教室に戻って、先生や看護士さんにミルクの注入をしてもらいました。「出席日数が足りひんから、卒業式の後も、補習授業があるんと違うか。」とお父さんに言われながら、3年間ミルクの注入をしていただいた教室を、ゆっくりと見回していました。そして、先生方に見送っていただいて、名残惜しい学校を後にしました。
リビング(4月11日朝)
昨日の夜は、入学式はともちゃんの体調次第、寝不足で体調が悪ければ欠席しても仕方がないとあきらめていたお母さんも、朝になれば張切っています。もちろん、ともちゃんは気合十分です。ミルクの注入が終った後、寝不足がたたって癲癇のガクガク発作が起こってしまい、その後スーッと眠ったものの、10分程で起きてきて、しっかりとした表情で頑張ってお粥も食べました。
高等部1組の教室
養護学校に着いたともちゃんは、休憩するために教室に入りました。そこには、前の養護学校でともちゃんの担任だったO先生が来ておられて、「ともちゃん」と迎えて下さいました。ともちゃんの顔に思わず笑顔がこぼれます。O先生は入学式の来賓として来て下さったのです。卒業式の写真も持ってきてもらい、新しい先生にも見ていただいて、和やかな雰囲気にともちゃんはリラックスしてニコニコとご機嫌です。
音楽室
もうすぐ式が始まるという時間になって、ともちゃんは高等部の新入生が集合している音楽室へ移動しました。部屋に入った途端、明らかにともちゃんの表情が強張っています。24名の新しいお友達とその保護者の数、みんなが真剣に入学式で名前を紹介された時に自分の出身校を言う練習をしている様子に圧倒されたのでしょう。緊張が強くビクビクするので、ともちゃんはお母さんに抱っこしてもらいました。
体育館
会場の体育館には花のアーチをくぐって入場し、在校生と対面で設けられた席に着きました。目の前には知らない人が大勢います。ともちゃんは、ここでも顔をしかめて身体を硬くするので、何度も隣の席のお母さんに抱っこしてもらいました。ともちゃんの名前が呼ばれた時は、先生が「大阪府立M養護学校中学部出身です。」と言って車椅子を押して一歩前に出して下さいました。ともちゃんは神妙な表情をしていました。
高等部1組の教室
クラスに戻って畳の上で抱っこしてもらうと、ともちゃんの気持ちは急激にほぐれました。ともちゃんは1組。2年生が1人、1年生が3人、いずれも重症心身障害児の女の子ばかりの華やかなクラスです。「入学おめでとう」と桜のデコレーションを施した教室でお友達の紹介があり、N先輩から一人一人チューリップをもらいました。ともちゃんはリラックスした表情で、「よろしくね」とばかりに微笑みかけています。名前を呼ばれると、ハハーンと笑顔を返して、ご機嫌でチューリップを受取っていました。
再び体育館、そして教室
入学式の写真撮影の時間が来て、ともちゃんは、もう一度体育館に行きましたが、やっぱりここでは緊張していました。教室に戻って来ると安心するのか、にこやかで表情豊かなともちゃんに戻ります。1年生のお友達はバスの下校時間が来たので帰ってしまいました。ともちゃんは早速居残りで、N先輩とミルクの注入をしました。注入の間、懐かしいO先生に抱っこしてもらってくつろいでいました。
お友達がいなくなった教室
N先輩も両親が迎えに来て帰ってしまいました。教室には、先生やリハビリの先生や看護士さん、大人はたくさんいますが、子供はともちゃん一人だけになってしまいました。すると、ともちゃんはオーーオーーと大声でおしゃべりを始めました。社交的なともちゃんですが、お友達がいる時は、いくらか遠慮があったのでしょうか。誰もいなくなると、引込み思案の子供が自我を出すかのように騒いでいます。
学校からともちゃんの家へ(4月11日午後12時15分)
ともちゃんのミルクの注入もようやく終り、家に帰ります。初日から居残りのともちゃんですが、賑やかで愉快な先生やお友達に囲まれて、楽しい高校生活になりそうです。新しい学校の先生に見送っていただいて、お父さんの車で帰宅しました。はるばる京都まで車で来て下さったO先生には、お父さんの車について来てもらい、ともちゃんの家に寄っていただきました。自慢のキティちゃんコレクションも見てもらいました。
寝室(4月11日午後11時30分)
8時前に眠ったはずのともちゃんが、目覚めてギャハハギャハハと声を出して笑っています。「よっぽど、楽しかったんやなあ。よかったなあ。また学校に行けるからな。もう寝よな。」、お母さんが腕枕をして背中をトントンしていると、しばらく笑っていたともちゃんは、いつの間にか眠っていました。
寝室(4月12日午前3時15分)
ともちゃんがまた目覚めて、ギャハギャハ声を上げて笑っています。
【乙訓寺】1200年前に弘法大師空海と伝教大師最澄が出会ったという歴史のあるお寺です。ともちゃんは、空海の高野山も最澄の比叡山もお参りしているので、是非ここも訪ねておきたいところです。乙訓寺(おとくにでら)は牡丹の寺としても有名ですから、訪れるにはちょうどよい時期でしょう。連休初日、久しぶりのお出かけに喜ぶともちゃんは、お父さんに車椅子を押してもらって、山門を探して住宅地の坂道を上りました。
それほど大きいお寺ではないのですが、門の前には露店も出ていて、観光バスの団体さんまでやって来ます。いきなり5段程の石段がありますが、受付に声をかけて門の右手の駐車場のスロープを上がり、駐車場からお寺に入る門を開けてもらうと、車椅子でも難なく中に入ることができました。入ればすぐに、道の両側の牡丹の鮮やかな色が目に飛び込んできます。ともちゃんも「見てごらん。きれいやなあ。」の声ににっこりです。
牡丹の間を通って、弘法大師の像を見て、本堂でお線香をあげました。境内には所狭しとばかりに2000株の牡丹が咲き誇っていました。日よけの傘を差しかけてもらっている牡丹もあります。「(日傘を差している)ともちゃんと一緒やなあ。」このところの晴天続きで、少しくたびれている牡丹もありました。これも、写真撮影のために日傘を閉じると眩しい日差しに笑顔が失せるともちゃんのようでもあります。お土産にお姉ちゃんとお揃いで牡丹の描かれた鈴を買いました。
【光明寺】連休の合間に登校した養護学校からのお散歩で、友達や先生と一緒に行きました。学校の裏門を出ると、竹薮と畑の間の農道がお寺まで続いていて、お友達にとってはお馴染みの散歩コースです。ともちゃんは、登校できただけでもうれしいのに、みんなと散歩できるなんて楽しくて仕方ありません。学校の隣の障害者施設では、鯉のぼりが青空に元気よく泳いでいます。しばらく仰ぎ見て、鯉のぼりの歌を歌いました。絶好のお散歩日よりです。
農道の下は排水溝になっているので、あっちの通気坑で「おーい」と言うと、こっちの通気坑から聞こえます。左手に続く畑に植えられている作物の名前を先生に教えてもらいながら行きました。右手の竹薮の中では、あちこちからニョキニョキと、たくさんの竹の子が伸びてきていて、その生命力に驚かされました。車の通る道に突当たり、そこを渡るともう光明寺の門前です。正面は階段が続くので、左の坂道を上って行きました。
坂道を右に折れて、さらに登ると本堂に至るというところが目的地です。門の向こうには、新緑のモミジの枝が幾重にも覆いかぶさるように茂る参道が、坂の下へと続いています。ここは「紅葉参道」という紅葉の名所で、光明寺の紹介写真でよく見かける撮影スポットです。ともちゃん達もここで記念撮影をして、今度は「紅葉参道」を下りました。
紅葉のモミジも楽しみですが、新緑の黄緑色のモミジもとてもきれいです。葉っぱの重なり具合によって、太陽の光の透過具合が異なるので、透けるように輝く黄緑色から落着いた緑色まで、様々な色調を見ることができました。下に降りて来ると、枝の先が赤く縁取られたように、花を付けているモミジの木もありました。リクライニングした車椅子に上向き加減で座っているともちゃんは、文字通り「目に青葉」のさわやかな5月の散歩を満喫しました。