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25日(日)
「春のお買物」
13日(金)
「高等部3年生のスタート」
30日(月)
「大型連休前半」
「今日もウトウトとよく寝るし、ご飯も全部食べられへんかってん。昨日は(訪問学級で)先生が来てくれはったけど、その間にも寝てしもてんで。今までやったら、そんなことはなかったのに。ともちゃん、どこか、しんどいのかなあ。何となく、体調が不調なんかなあ。」、昨日、文化祭を翌日に控え、お母さんは心配していました。「頑張って文化祭に出て、その後入院するのも嫌やし。そやから言うて、大事をとって、ともちゃんが楽しみにしているのを止めてしまうのも、(大げさに言うと)生きる意欲を失くしてしまうような気がするし、どうしたもんかなあ・・・」、両親で相談した結果、様子をよく観察してともちゃん次第ということになりました。
昨晩はよく眠り、ともちゃんは思ったよりも速いペースで朝ご飯(お粥ペースト)を食べています。今日はともちゃんのビデオを撮るために、お父さんは午前中だけ会社を休んでいます。ともちゃんは、朝ご飯をお父さんが食べさせてくれているので、頑張っているのかもしれません。ともちゃんの出番は11時35分からなので、今日はいつもよりゆっくり登校することになっています。それで、もしも朝の用意が早く済んだら、少しウトウトしてから登校できたらいいなあと、お母さんは思っていました。
ところが、食事の後半はゆっくりとしたペースになりました。食後も(ウサギの役なのですが、衣装としてウサギの耳は付けないので、)いつもは一つに束ねる前髪を二つに束ねてみたり、食事の間に汚してはいけないと着ていなかった、劇のための白いフリースと茶色のズボンに着替えたりしている間に、ちょうど出発の時間になりました。お父さんの車に乗込むと、ともちゃんは大喜びです。満面の笑顔で、ハハハン、ハハハと嬉しそうな声で話しかけてきます。お母さんが学校の先生に「今から行きます」と携帯電話で話している横でも、アアーアー(元気で登校するよー)と大きな声を出していました。ともちゃんは、すっかり行く気満々です。
今年のともちゃんの劇(ともちゃんのような重症心身障害児を含む重複重度の子供達のクラス、高等部1組と2組で演じる劇)は「What a wonderful world!~森の中では~」というタイトル(英語のタイトルがさすがは高校生)で、3冊の絵本のお話を合わせた3幕からなる劇です。黒ウサギの郵便屋さんが届けてくれたお手紙は、アナグマさんからの持寄りパーティのお誘いでした。ネズミ、リス、ウサギ、モグラがアナグマさんの家にやってきます。ともちゃんは、そのウサギのともさんの役です。ネズミは帽子を持って、リスはケーキを持ってやって来ます。ウサギは花束を持ってきました。モグラは何も持って来なかったので、しょんぼりしていましたが、アナグマさんから「来てくれただけでいいんだよ。」と言われ、手品を披露します。
ブラックライトで蛍光塗料が美しく光る蛍ホテルでは、虫たちが大きなバルーンのベッドでフワフワ遊んでいます。そこへ、カエルが泊めてくれとやって来ました。虫たちは、カエルに食べられては大変と、蛍が葉っぱの形に並んで光る葉っぱお化けを作って、カエルを追返しました。最後の場面では(ともちゃんのウサギとは違う)白ウサギが郵便屋の黒ウサギを待っています。黒ウサギは白ウサギに「これからもずっと一緒にいようね。」というお手紙を渡して、ウサギ達の結婚式になります。みんなはお祝いに集まってきて、森の中では日々素晴らしい世界が展開しているのだよとWhat a wonderful world!を一緒に歌ってフィナーレになります。
修学旅行に行った後は、ともちゃんは家でゆっくりと静養をしていたので、学校での練習には1度しか参加していません。しかし、その分、訪問学級では劇の音楽を聴いたり(この劇には各場面で歌があります)、先生に各場面のお話を聞いたりしてきました。その甲斐あってか、登校して友達と一緒に練習したときには、What a wonderful world!をみんなで歌う場面で楽しくてたまらない様子で、満面の笑顔を見せてくれました。その場の雰囲気に敏感なともちゃんなので、できるなら本番までに一度全体練習に出て、あらかじめ舞台の雰囲気を知っておいて方が緊張することなく劇を楽しめるのではないかと思っていました。けれどそれは叶わず、ぶっつけ本番になってしまいました。
登校したともちゃんは、ナレーション役の大きな切株さん(に見立てた張りぼて)を見せてもらい、切株さんの声役の1組の先生や、アナグマさん役の1組の先生を紹介してもらいました。特にアナグマさんとはやり取りがあるので、しっかりと声をかけてもらって劇への気分を盛上げてもらいました。教室には、今まで他のクラスの劇を見学していた友達も戻ってきて、衣装を付け始めました。ともちゃんもウサギの衣装を着ます。家から着てきた白いフリースと茶色のズボンの上に、持寄りパーティーに行く森の動物たちお揃いの茶色のベストを着て、首にはサーモンピンクのタオルをマフラーのように巻きました。
さあ、いよいよ出番です。ともちゃんも、友達と一緒に体育館に向かいました。ともちゃんに同行したお母さんは客席に、ともちゃんは先生と舞台の袖に納りました。いきなりの本番ですが、ともちゃんが劇を楽しめたらいいなあとお母さんは思いました。舞台の上で切株さんのナレーションが始まりました。舞台の前では、黒ウサギの郵便屋さんに扮した3年生のM君が、歩行器に乗って熱演しています。招待状が届けられ、舞台前方に作られたスロープを通って、舞台の上に設けられたアナグマさんの家に森の動物たちが集ってきました。
さあ、ともちゃんの登場です。「集まれ、集まれ、持寄りパーティー、何が出るかな、お楽しみ・・・」と歌に合わせて、順番にスロープを登っていくともちゃんの表情はにこやかです。訪問学級の時に先生に歌って貰っていた歌なので、すっかり馴染んでいるのでしょう。でも、舞台に上がると、ちょっと神妙な顔つきになって、何が起っているのかジーッと様子を伺っているようでした。何度も歌を歌って、ネズミさんに帽子を被せてもらい、リスさんがケーキのロウソクに火を灯すのを見ているうちにともちゃんは穏やかな表情になって、キョロキョロと顔も動かすようになっていました。
そして、ともちゃんの演じるウサギさんの番です。前に出て、スポットライトが当って、ウサギさんが持ってきた花束をアナグマさんに渡す場面になると、ウサギのともちゃんはニコニコと満面の笑顔を見せてくれていました。なんとなく楽しい雰囲気になってきたところでアナグマさんに話しかけてもらい、みんなに注目してもらったので、すっかり嬉しくなったのでしょう。いきなりの舞台でも、ともちゃんが楽しめている様子に、お母さんも嬉しくなりました。それにしても、この笑顔の絶妙のタイミング、みごとな大女優さんぶりでした。
蛍ホテルの場面になると、ともちゃん達は舞台を降りて待機しています。暗がりに目を凝らして見てみると、ともちゃんは、車椅子に座ったままウトウトと眠っています。ともちゃんは場の雰囲気に敏感なので、賑やかなときには神経が高揚して寝られなかったのですが、今日は珍しく体育館で寝てしまいました。やはり、このところ疲れやすいのかもしれません。少し寝るだけでも、また元気になれるので、今はゆっくりとお休みという気持ちで、お母さんは見ていました。舞台では場面が変って、白ウサギさんと黒ウサギさんのお話が演じられている頃、ともちゃんは元気を回復してニコニコしながら起きてきました。
エンディングでは全員が再び舞台に上がるので、ともちゃんはちょうど良いタイミングで休養できました。1,2組の生徒達だけではなく、見学していたお母さん達も、高等部の他のクラスの生徒達も、一緒に舞台に上がって、What a wonderful world!を歌います。たくさんの人達が舞台に上がっているので、体育館の後ろの隅でずっとビデオを撮り続けていたお父さんのいる場所からでは、車椅子のともちゃが見えなくなってしまいました。これは大変。お父さんは、慌てて人と人の間から何とかともちゃんの姿が見える場所に移動しました。ビデオカメラを通して見えたともちゃんは、にこやかな顔つきでみんなの歌声を聞いていました。ともちゃんは文化祭を十分楽しむことができました。
ともちゃんのツリーは、もう10年以上も使っている作り物の樅の木(ちょっと安っぽい?)で、それにその年々の気まぐれにオーナメントや電飾を飾っていました。今年も古い電飾を飾ろうとして、電池が朽ちて液が漏れていることに気がつきました。ともちゃんのツリーを出したのがクリスマスの2週間前。新しい電飾を買おうとお母さんが色々と探し回りましたが、この時期では50%オフになったクリスマス飾りの残り物ワゴンの中にも、もう電飾は残っていませんでした。
仕方なく、ツリーは裸のまま放置されていたのですが、23日にお姉ちゃんとお母さんが四条に買物に行って、30%オフになっていた電飾飾りを見つけて買ってきました。今まで持っていた電球の物より小刻みに瞬くので、豪華な感じがします。ともちゃんの枕元に飾ると、ともちゃんもうれしそうにしていました。派手なツリーに惹かれて、いいえ、ともちゃんがよい子にしていたので、クリスマスイブにはサンタさんがやって来て、ともちゃんにプレゼントを置いていってくれました。
プレゼントは、横幅が1m、縦が80cm位ある大きな大きなキティちゃんの顔の形をしたクッションでした。足を曲げて寝転がると、ともちゃんの体が大きな顔の中にほぼ収ります。ともちゃんを抱上げて、「ドッスーん」と言いながら(でも、動作はゆっくりと)フワフワのクッションの上に置くと、楽しそうにニコニコしています。ともちゃんだけではありません。サンタさんに貰った時は、その大きさに「どこに置くんや!」とあきれていたお父さんも、サンタ代行でこのキティちゃんを電車で苦労して連れ帰ったお母さんも、ともちゃんを抱っこしながらもたれるのに、すっかりキティちゃんのお世話になっています。今では、ともちゃんの定位置の横に、大きなキティちゃんの顔がしっかりと陣取っています。
ともちゃんのクリスマスはこれだけではありません。今年は12月14日に学校の1組と2組で行われた「親子のつどい」のクリスマス会にも参加できました。ともちゃんが、スクーリング(登校)したのは文化祭以来です。防寒対策として、赤いフリースの上から白いモコモコのボレロを着て、毛糸の帽子を被って、ブーツを履いたともちゃんは、先生から「ともちゃん自身がサンタさんみたいやなあ。」と言われていました。
クリスマス会は文化祭の1組と2組の劇「What a wonderful world!」の中の持寄りパーティの場面をなぞらえて行われました。友達が、それぞれ三角帽やツリーを飾るリースを持って来て、みんなに配ったり、飾付けたりします。ともちゃんは、劇中ではウサギさんになってお花を持って行きました。今回は花吹雪の代りに、雪(紙吹雪)を先生と一緒に紐を引いて降らせました。(登校が遅かったので)少し遅れて参加したともちゃんは、最初は何が起っているのか分からないようで、落着かない様子でしたが、じわじわと楽しさが染みてきて様子が分かってくると、そこからは大きな口を開けて笑顔で気持ちを表していました。
もちろん、ここでもプレゼント交換がありました。黒ウサギの郵便屋さんがみんなに順不同で配ったプレゼントを曲に合せて交換しました。このプレゼントは、校外学習としてみんなでショッピングセンターに買物に行って、それぞれに買ってきたものです。ともちゃんは校外学習はお休みしたので、ともちゃんの分は先生が買ってきて下さいました。曲が止った時に、ともちゃんの手元にあったのは一番大きくてかなり重いプレゼントでした。
開けてみると、ちょっとおしゃれな白と黒のカップ4客セット、バレリーナのようなルームソックス、カラフルな毛糸の帽子、コースターと盛沢山な内容でした。決った予算内でプレゼントを選んだのですが、その時お店にあった福袋を買った友達がいたということでした。ともちゃんは大当りです。「でも、こんなに大きく重い物、持って帰るのが大変やな。」とお母さんが困っていると、そこに神様の助けが・・・。お母さん用に用意されたプレゼントで、ともちゃんのお母さんはコンパクトに折りたためる布製のショッピングバッグが当りました。大きさもぴったりでした。
そして、ともちゃんは、20日の終業式は訪問学級で迎えました。2学期の授業日数はスクーリング、訪問合わせて25日でした。7月の不調を取戻すかのように、9月は、1ヶ月に9日も授業を受けることができて、運動会の練習もたくさんしました。2学期は運動会、修学旅行、文化祭、親子のつどいクリスマス会と楽しい行事にもしっかり参加できました。何と言っても、広島までの日帰り修学旅行に行けたことは、ともちゃんにとても貴重な経験になりました。実りの多い2学期でした。
ともちゃんのクリスマスツリーの効果でしょうか、一昨日の朝、起きてきたともちゃんの定位置の枕元に、キティちゃんの絵柄の大きな紙袋が置かれていました。お姉ちゃんのバイト先のコンビニで、キティちゃんのお楽しみ袋が売出されていたということで、お姉ちゃんが買ってきてくれたのでした。キティちゃんの顔の形の時計やマグカップ、お宝入れ、書類入れ(市役所から来た書類を入れましょう)と、またキティちゃんグッズが増えました。洗面所のともちゃんの脱衣ベッドの向いに掛けてもらった時計を見上げて、ともちゃんは笑っています。今年も後1日、来年も楽しいことがいっぱいありますように。
始業式では、マペットの獅子舞のお獅子に頭を噛んでもらいました。先生がお獅子の口を開閉させて歯をカチカチと鳴らすと、ともちゃんは大笑いしていました。今日の訪問での初授業では、雅楽を鳴らしてお正月気分の中で書初めをしました。ともちゃん達の書初めは、今年の抱負を漢字1字で表して書きます。去年の書初めでは、ともちゃんは座右の銘である「人生を楽しむ」の「楽」の字を書きました。そして文字通り、ともちゃんは去年も人生を楽しむことができました。
さあ、今年は何を書きましょうか。先生とともちゃんとお母さんの3人で相談しました。母「去年の書初めの後、お姉ちゃんに話をしたら、今度は智美(ともちゃんの本名)の『美』という字でもええやんと言ってましたわ。」。先生「(文化祭の)What a wonderful world!やないけど、What a beautiful world!みたいに、この世は何て美しいっていう感じでいいかもしれませんね。」。母「でも、最近、総理大臣が美しい国日本って言うてから、よく美しいって聞きますよね。(それを)パクったみたいに思われるのもいややなあ。」。
母「ともちゃん、遊ぶのが大好きやから『遊』でもええけど、画数が多くて難しい漢字やしな。ともちゃん向きやないわ。」。母「去年と似てるけど、快・不快の『快』。楽しむと一緒でともちゃんのモットーみたいなもんやし。」。先生「爽快の快、快適の快ですね。」。母(お母さんは、以前何かの本で、赤ちゃんの感情な発達の分化の第一歩は「快」と「不快」であると読んだことがあるので)「でも、ともちゃんは、快・不快以外にも、色々と思うもんな。もっと、違う方がええかな。」。
母「お出かけが好きやから、『外』っていうのはどうかな。お出かけ以外にも、今までとは違う外の世界にも目を向けるというか、外に世界を広げるみたいな・・・。でも、これって来年かな。」。先生「外に飛躍するみたいでいですね。でも、やっぱりこれは3年になってからやねえ。」。母「そうやなあ。そしたら、今年は友達と一杯接してほしいから『友』は。でも、卒業しても友達はいるわなあ。」。母「そうや。ともちゃん、学校の『学』はどうや。今年は高校3年、学校生活最後の学年になるんやし。」。先生「ともちゃんは学校大好きやから、『学』いいですね。」。ともちゃん「ギャハハハハ」。
それまでは、話しかけても、先生に抱っこされてボーッと休憩モードに入っていて反応が鈍かったともちゃんでしたが、今はニコニコ笑って、いつの間にか話に寄っています。ともちゃんの鶴の一声で、今年の書初めは学校の「学」に決定しました。その後も、ともちゃんは期待するように目をキラキラ輝かせながら、「ハハン、ハハン」と笑顔で声を出しながら、硯に墨汁が入れられたり、ともちゃんが書きやすいようにボードに留めた半紙や筆が手の届く範囲に置かれたりするのを待っていました。
でも、いざ実際に先生に手を持ってもらって、筆を握らせてもらうと、ともちゃんは緊張したようなこわばった顔をしていました。書き終って筆を離してもらうと、ホッと表情がゆるみました。そして「すごいなあ。すごく上手やなあ。」と先生からも、お母さんからもたくさん褒めてもらいました。今年は高等部3年生。訪問でも、スクーリングでも、目一杯学校生活を満喫して欲しいと思います。
「あーん、あーん」、しばらく大きな声を上げて泣いていたともちゃんは、お姉ちゃんまで来てくれたことをフーンと首を大きく回して見届けると、お母さんに抱っこされて再び眠りにつきました。ともちゃんが夜中に泣くのは、側湾のある身体の筋緊張が強くなり、左腰から左足がピンと反って右腰が縮んだ状態になり、痛いのに自分ではどうすることもできないからです。左足を膝の関節で折曲げてもらい、丸く抱っこしてもらうことで筋緊張がいくらか緩み、痛みも和らいでともちゃんは安心して眠ることができます。このまま抱っこで朝まで眠ります。
昨年秋ぐらいから側湾の筋緊張が強くなって、夜中に左足を突張って「んーー」と痛そうに顔をしかめることがあって、そうなったら抱っこしてきました。それが、最近は大きな声を出して泣くようになりました。はっきりと誰か(お母さん)に向って、「(嫌やから、)助けて!」と訴えているようです。こんなところでも、ともちゃんの発達の変化を感じるような気がします。ともちゃんの訴えを聞いたら、すぐに楽にしてあげたいと思います。
側湾や筋緊張など、成長のその時々に注意していかなければならない問題は抱えていますが、それ以外大きな病気もせず、ともちゃんは順調に訪問学級で勉強しています。例年のごとく冬籠りの状態で、ウトウトと眠り(今年は夜の眠りが浅いためか、例年よりも遅くまで寝ています)、朝食からの日課をこなすのが遅くなっているのですが、ともちゃんは1日おきの訪問学級をとても楽しみにしています。
朝起きるのも、朝食を食べ終るのも遅くなった日でも、「今日、先生に来て貰うか?」と問いかけると、ともちゃんはニコニコ笑って答えます。ともちゃんの気持に押されて、もし先生が来られた時に朝食を食べ終っていなければ、先生にともちゃんの食事の様子を見て頂くつもりで、訪問をお願いしました。でも、ともちゃんは、ちょうど訪問をお願いした午前11時に朝食を食べ終えました。反対に、張切って朝食を食べた後疲れてしまい、先生が来られた時には眠っていたということもあります。
訪問学級では、ともちゃんは節分の豆まき(本当はビーズまき)をしたり、歌を聴いたり、絵本を読んでもらったり、絵本の中に出てきた雪玉に見立てた冷たいスライムに触ったりしました。中でも3学期最も頑張ったのは、作品展に出品するための作品作りです。作品展は、2月15、16日に市の産業文化会館で行われました。養護学校高等部の文化祭の劇「持寄りパーティー」と「ほたるホテル」の場面をイメージして、絵具をつけた紐を紙に挟んで引いて紙に模様を付けたり、指に絵具をつけて別の色を足したりました。
冬籠りのともちゃんは作品展を見学することはできませんでしたが、会社帰りのお父さんと学校帰りのお姉ちゃんが見に行ってくれました。「ともちゃん、すごく上手やったなあ。ともちゃんの作品、一杯(文化祭の絵だけではなく、他の作品も)展示してあったで。立派やったで。」、ともちゃんはたくさん褒めて貰ってうれしそうでした。お父さんは作品の写真も撮ってきてくれました。ともちゃん高校2年の冬は、筋緊張の痛みに悩まされながらも、充実した訪問学級生活を送っています。
1日の予定がどんどん後にずれ込んでいき、寝室に行く時間が遅くなっていたのを意識して早く行くようにしました。「(3月)1日は学校に行こな。」と何度も話しかけて、ともちゃんの意欲を盛立ててきました。今はともちゃんの体調が安定しているので、起床時刻も食事の時間も、少しずつ早くなりました。寒がりのともちゃんが風邪を引かないようにとたくさん着込んで出かけましたが、タクシーの中には春の日差しが差込んで温室のようで、登校途中の畑は菜の花の黄色が鮮やかでした。
久しぶりの登校に、ちょっと硬くなっていたともちゃんですが(車椅子の頭部支えの角度調整がうまくできていなくて、乗り心地が悪かったのも一因)、教室に入ってAちゃんが握手に来てくれると笑顔が出ました。やっぱり学校大好き、友達大好きです。「励ます会」では、出し物として文化祭でみんなが演じた"What a wonderful world!"の劇を先生が演じて下さいました。ともちゃんは、もぐらさんの手品のところで大笑いしていました。卒業生のNちゃんとM君の誕生から現在までの写真もみんなで見ました。
M先輩は、ともちゃんがこの養護学校に体験入学に来た時に、最初に出会った友達の一人でした。N先輩はともちゃん同様医療ケアが必要で、お母さんに色々と教えていただき、卒業後はともちゃんもNちゃんと同じ施設に通いたいと思っています。ともちゃんは卒業式には出席できないので、励ます会に参加できてNちゃんとM君にお別れができたことを嬉しく思いました。そして、まだまだ続くと思っていたともちゃんの学校生活も、残り後1年になってしまったんだと、改めて実感させられました。
3月20日は終業式。ともちゃんは訪問学級で迎えました。3学期の出席日数は24日(うち1日は登校)でした。1学期が20日、2学期が25日でしたから、学校のある日が少ない3学期なのに、ずいぶん追上げた格好です。1学期は熱が出たり、呼吸がしんどかったりで出席日数が少なくなりました。2学期は修学旅行を初め、運動会や文化祭に出席するために、うまく体調を整えるためにお休みした結果です。3学期の追上げは、冬籠りのともちゃんの生活に、訪問学級がちょうど良いがんばりどころとして定着してきたからでしょう。
ともちゃんの活動性が低下して、朝起きるのが遅くなったり、食事に時間がかかるようになっている時でも、ともちゃんに「今日、先生に来てもらう?」と聞くと笑顔でハハハンと答えます。ともちゃんは訪問学級をとても楽しみにしているのがよく分ります。以前は、訪問学級が始るまでにともちゃんの朝食を終らせないといけないと気になっていたお母さんでした。しかし、そんなともちゃんの楽しみを察して、ともちゃんが訪問学級の時間までに朝食を食べられなくても、「その時は、その時。ともちゃんが食事をしている様子を先生に見てもらえばいい。」と考えるようになりました。ともちゃんも頑張って、先生が来られる直前に食べ終ったりしていました。
来年度はいよいよ高校3年生。学校生活最後の年になります。ともちゃんの大好きな学校生活を無理のない形で、でも十分に、楽しませてあげたいものです。そして同時に、卒業後の進路についても、しっかりと検討していきたいと思います。
ショッピングセンターに着くと、まずはフードコートでミルクの注入をします。車椅子に取付けられた点滴棒に、ミルクを入れたイルリガートル(注入専用の袋)を掛けて、ともちゃんの鼻から胃に通したチューブに繋いでミルクを注入するので、座席の横に車椅子を置いても邪魔にならないよう、隅っこの席に陣取りました。ともちゃん以外の家族は、何を食べようか楽しげに迷っていますが、ともちゃんはいつも通りのミルクなので、車の中とは一転して少しつまらなさそうな顔をしています。讃岐うどん屋さんが流行っていようと、カフェオレが(コーヒーカップではなく)カフェオレボウルで出されようと、イチゴクリームのクレープが今の季節にぴったりだろうと、ともちゃんには関係ないことなのです。
ともちゃんのお買物と言えば、やっぱりキティちゃん。フードコートの先にあるサンリオショップに向いました。車椅子で移動中に「キティちゃん買いに行くで。」と声をかけてもらって、ともちゃんは気を取直して元気に笑っています。売場には、今春発売されたと思われる新しいシリーズも色々と並べられていて、家族で時間をかけて手にとって楽しみました。ともちゃんが買ったのは、キティちゃんの顔の形のバスキャップ(帽子にもするつもりです)、手足が細い線になったちょっと不思議なキティちゃんが描かれたタオルハンカチ、そして実用的なバスタオル(もちろんキティちゃん柄)です。商品を詰めて貰った袋をともちゃんの膝の上に載せて、その上にともちゃんの手を添えてあげると、落とさないようにしっかりと袋を押さえ、満足気に大笑いしていました。
お姉ちゃんが雑貨やアクセサリーを売っている店を覗くというので、ともちゃんは店の前で両親と髪飾りを見て待っていました。お父さんとお母さんは、代る代る「これ、どうや。」と、色々な飾りの付いた髪括りゴムやピンを見せてくれましたが、ともちゃんはどうもキラキラするものが好みのようでした。この店はそのまま離れたのですが、お姉ちゃんにこの話をすると「ともちゃんはいつもお土産で髪括りゴムを買ってきて貰うから、自分でも選んで買ってみたいんと違うか。」、階下に降りるとまた髪飾り売場があったので、今度は買うことにしました。ともちゃんが選んだのは、金色の花の形の金属枠にピンク色の花びらと花心がキラキラと輝く物でした(やっぱり)。
こちらの買物も嬉しかったようで、お姉ちゃんに右手に握らせて貰った商品は、腕が動いてもしばらくの間しっかりと握っていて(この時はサンリオの袋は車椅子の取っ手に掛けています)、車椅子で移動しながら何度もニカーッと笑っていました。お姉ちゃんが洋服屋さんに入っている間、ともちゃんは笑顔を浮かべて店の前で待っていました。結局何も買わずに出てきたお姉ちゃんは「ともちゃん、ごめんなー。ともちゃんに似合いそうな服も探しててんけど、ピンクとかの服がなかってん。今度は、一緒にともちゃんの好きそうな服を売ってる店に行こか。」、ともちゃんは、次の買物の約束までして貰いました。
ともちゃんが冬籠りの間も、お姉ちゃんは度々洋服を買いに出かけていて、ともちゃんにお土産を買ってきてくれたり、買ってきた洋服を着て見せてくれたりしていました。きっと、ともちゃんは、お姉ちゃんがしているように自分でも買物に行ってみたい、お姉ちゃんが買っているような物も買ってみたい、洋服も似合うかどうか身体に当てて貰って選んでみたいと思っていたのでしょう。ともちゃん、今日は色々と念願が叶ってよかったね。今度は洋服も選びに行こうね。脳の広範囲に損傷を受けていて、言葉は分らず、発達段階は乳児期前半と言われているともちゃんですが、今年は花の高校3年生。お買物もおしゃれも大好きです。
いつも混雑する国道9号線を横切って嵐山へと続く阪急嵐山線沿いの道は、スムーズに流れています。松尾大社のところでクランクし、一旦四条通りに入って渡月橋の一本南の橋で桂川を渡りました。「ともちゃん、見てみ。渡月橋が見えるで。あっ、山の方に桜が咲いてるわ。」、橋の上から渡月橋と、その向うの山が見えています。曇り空のもと、黄砂にくすんだ山の木々の中に薄いピンク色の満開の桜の木がいくつも見えていました。数日前に京都市にも桜の開花宣言が出されたところです。桂川の左岸を嵐山まで走りますが、堤防の桜はまだ蕾でした。「この道は免許取る時に路上教習で走ってんで。」と自慢げなお父さん。車の中の家族の楽しい気持は、すぐにともちゃんにも伝わります。ともちゃんも一段と嬉しそうです。
大覚寺では、拝観料を払ってから別の入口に案内して貰いました。車椅子のタイヤを雑巾で拭いて、最初の段差だけは両親がともちゃんごと車椅子を抱えて上がりましたが、その後の回廊は全くスムーズに進むことができました。ともちゃんの一行の前後には他の観光客は少なくて、マイペースで車椅子を進めることができました。ともちゃんは、曲がりくねったお寺の廊下を行くのが楽しくて、ニコニコ、ニコニコ笑っています。写真を撮るために止まると笑顔も止みますが、また動き出すと笑顔も戻ります。「牡丹の絵やねえ。この部屋は松に鶴やなあ。こっちは鳥がいっぱいやわ。」と襖絵もちゃんと眺めます。
お父さんが「順路」と「帰路」を見間違えたために、危うく行着けずに帰ってしまうところでしたが、途中で気付いて池の前のお堂に来ました。今日はたまたま写経の日だったようで、ここでは多くの人が写経をしていました。池の畔の桜も満開で、池が見渡せる舞台には観光客もたくさん集っていて、大沢池の桜を満喫していました。帰路は写経が終った人や観光客とも一緒になりました。順路とは違う部屋で、ウサギの絵など、別の絵を見ながら進みました。ともちゃんが入ってきた段差の少ない入り口は、写経に来た人用の出入口でした。
大覚寺のお土産も買います。お寺の中のお土産屋さんなので、お数珠などが目に付きます。お父さんは雅号の判子を見つけて、ともちゃんと一緒にともちゃんの名前の字を探していました。「ともちゃんの『智』と松田の『松』があったわ。これ2つ買おう。」とお母さんに手渡しました。お父さんは、今までもよくお土産に買った「ともちゃん」と書かれたスタンプと同じような気持で手に取ったのでしょうが、値段を見たお母さんはびっくり。天然石に一個ずつ手彫りされた雅号印は、何と1個2800円もします。一瞬表情が引きつったお母さんですが、せっかくなので「智」だけ記念に買いました。家族の誰の判子よりも上等のともちゃんの判子です。楽しかった記念に、ずっと大切に使いたいものです。
4月9日の始業式は訪問学級で行いました。ともちゃんは、朝から痰が絡んで朝食が食べにくかったのですが、頑張って食べ終えました。それで、始業式が始まる頃にはちょうど疲れが出て、ボーッとしていました。ともちゃんの新しいクラスは高等部1組(K1組、ともちゃんの養護学校は学年に関係なくクラス編成されています)で、ともちゃんのような重症心身障害児の3年生の女の子ばかり4人のクラスです。KzちゃんとKtちゃんは1年生の時のクラスメイト。Yちゃんは今回初めて同じクラスになりました。
高等部主事の先生のお話を聞いて、担任の先生に歌を歌ってもらいました。「はーるだ、はーるだ、春だ・・・」と聞き慣れた歌声を聞いて、少し笑顔が出ました。ともちゃんには残り一年、大好きな学校生活を充実して過ごさせてあげたい。そして、お母さんは、ともちゃんの卒業後の進路を見据えて、同じ立場のクラスメイトのお母さん方にこの地域の情報を教えてもらいながら、悔いのないように過ごしたいと思いました。始業式が終る頃になって、気がつくとともちゃんはいつの間にかしっかりと覚醒して、笑顔も浮かぶようになっていました。
11日はクラスでの散歩の授業時間に、先生と友達がともちゃんの家まで来てくれました。ともちゃんの家は、養護学校からタクシーでワンメーターの距離です。ともちゃんは、お母さんから友達が来てくれることを聞かされていたので、楽しみにしていました。先生から電話がかかってきて窓の外を見ると、休耕田と菜の花畑の向こうの農道を通る車椅子の一行の姿が見えました。朝食後ボーッとしているともちゃんに話しかけると、目を輝かせて期待しています。みんなは、ともちゃんがいつも居るリビングのともちゃんが寝ているすぐ横の窓の下に来てくれました。窓を開けて、お母さんがともちゃんを抱っこして、みんなの顔を見えるようにしてくれました。
ともちゃんは賑やかな声を聞き、窓越しにお土産のお花も貰ったのですが、今シーズン初めて開けた窓からのちょっと冷たい風に戸惑い、「いったい、何がどうなってんの。」と不安そうな顔つきです。どうやら、ともちゃんは「みんなが来てくれる。」と聞いて想像していたことと、今の状況が結びついていないようです。それでも、みんなが窓の下で「はーるだ、はーるだ、春だ・・・」と歌ってくれると、みんなが来てくれたことが分かって、笑顔がこぼれました。もうそうなると、ともちゃんは嬉しくて嬉しくてたまりません。ニコニコ笑いながら、先生達の声かけに、小さい声でハーと答えていました。ともちゃんにとって、みんなが訪ねてくれたことはすごく楽しい出来事だったようで、みんなが帰ってからもずっとニコニコご機嫌でした。
12日は今年度初登校でした。ともちゃんが登校した時、みんなはプレイルームで学年集会をしていました。もうすぐ終るという時間だったのですが、ともちゃんも少しだけでもと覗いてみることにしました。ちょうど、全員で集合写真を撮るところで、ともちゃんもしっかりと加えてもらうことができました。この後、教室でミルクの注入をしました。今年の教室は、南北に長い廊下が通った校舎の一番奥、寄宿舎の手前を右に入ったところにあります。1、2年の時の教室が、校舎に入ってすぐのところで保健室の近くにあったのに比べると、校舎の中を延々と行くことになるのですが、この学校で3年しか過ごすことのないともちゃんとお母さんにとっては、校舎の中を知るのに良い具合です。
新しい教室にも「場所」見知りすることもなく、ともちゃんはすんなりと溶け込んで、にこやかに楽しそうに注入をしました。この日はこれだけではありません。訓練室に場所を移して、新しい車椅子の型取りもしました。久しぶりの登校ですが、目一杯のスケジュールをこなしたともちゃんでした。新学期最初の1週間だけで、これだけの変化に富んだ学校生活を楽しむことができました。幸先の良いスタートです。これからの季節は積極的に登校もして、最終学年の生活を謳歌しましょう。
車椅子に乗ったともちゃんは、まずは公園の管理棟兼休憩所のグリーンハウスを覗いてみました。それから、ジャブジャブ池の周りの坂道になった遊歩道を登り、東屋のある所まで行って、そこでミルクの注入をしました。西山公園は、山と山の谷間にジャブジャブ池(小さな子供が水遊びをするための池ですが、今はまだ干上がっていました)を作り、その周りの山の斜面に階段や坂道の遊歩道を配したこぢんまりとした公園で、東屋からはその全貌が見渡せました。アーチになるはずのバラの苗木もまだ低くて、新しい公園らしさがありました。向いの山の尾根は墓地になっていて、山が途切れたところから、JRの駅方面の市街地が眺められました。遊歩道は東屋で終点ですが、その先には本当の山道がさらに頂上に向って続いていました。
ミルクの注入が終ったともちゃんは、山頂へ続く山道を登るのは無理なので、遊歩道を戻りました。東屋から、グリーンハウスの先に見えていた緑の円形の屋根の建物が何なのか、探検に行きました。緑の屋根の建物が貯水タンクであることはすぐに分かったのですが、周りは竹林で道の脇には大きく育った竹の子がニョキニョキと生えていました。竹を見ながらガタガタ行くと、ともちゃんも楽しそうに笑っています。少し行くと、畑のすぐ向うに、今まで登っていた東屋のあった西山の尾根の続きが迫っていました。じっと眺めていると、新緑の鮮やかな緑と竹林の茶色がかった黄緑に塗分けられた山肌が、こちらに倒れてきそうな感じがしました。
翌30日は、お姉ちゃんがバイトをしている近くの本屋さんまで散歩に行きました。お休みの日、ともちゃんがゆったりとくつろいでいて、お姉ちゃんと遊んで貰おうと思っても、お姉ちゃんは「今日、バイト行かなあかんね。」と言って出かけてしまいます。「ともちゃんもバイト一緒に行く?」と愛想で声をかけてもらって、ともちゃんがその気になってニコニコしたので、慌てて謝ったこともありました。念願だったお姉ちゃんの本屋さんですが、お姉ちゃんとは(仕事に差障るので)他人のふりをして行くという約束になっています。ともちゃんは、お姉ちゃんに気付くでしょうか。
散歩に出たのは嬉しいともちゃんですが、ちょっと厚着をして行ったので、本屋さんに着く頃には「暑いよー。」とぐったりです。フリースの上着を脱いでホッとすると、馴染みのない場所(本屋さん)に居ることに気付き、キョロキョロと落着かない様子でした。お父さんと一通り店内を見て回った後、レジの近くに陳列されていた雑貨の中から買物をすることにしました。招き猫の鈴と招き猫のメモスタンド、どちらにするかともちゃんに尋ねました。しばらく、迷っていたともちゃんでしたが、鈴の音を聞いて、笑顔で鈴に決めました。
商品をレジに持って行きました。レジのお姉さんの応対を聞いたともちゃんは、明らかに今までとは違うしっかりと注目した表情になり、何かを感じたようでニヤリと少し口元がゆるみました。でもその後は、いつものような笑顔は出ませんでした。商品を渡して貰った後は、レジのお姉さんは何も話してくれませんでした。夕方、お姉ちゃんがバイトから帰ってきて、ともちゃんに「おねえがレジにいたん、分った?」と聞くと、ともちゃんは少し悲しそうに「ふーん」と答えていました。おねえの声がしたような気がしたのに、いつもみたいにたくさん話しかけてくれなかったのが、寂しかったのかもしれません。
久しぶりの高速道路でのお出かけ。家族が揃うと賑やかで、ドライブそのものもまた楽しみの一つです。最初はニコニコ笑っていただけのともちゃんも、オーオーと声を出しておしゃべりに寄ってきました。予想通り、道は空いていました。精華学研インターチェンジで高速を降りて、京阪奈学研都市の中の広い道を行きます。いかにも新しく造成した街並みで、広い道に沿ってぽつりぽつりと大型店舗がありました。「私のしごと館」や「国立国会図書館関西館」など、聞いたことがある名前の標識が目を引きます。広そうな公園の前も通ったので、今度はここにも来てみたいものです。
奈良の中でも西大寺を選んだのは、たまたまです。連休中、ともちゃんを抱っこしてテレビを見ていたお父さんが、(奈文研で)西大寺の食堂遺跡の展示をしているというニュースを見て、「東大寺は行ったけど、西大寺は行ってないな。」と思ったからでした。近鉄西大寺駅横の踏切を越えると、すぐに西大寺です。空いている広い駐車場に車を止めて、ともちゃんは車椅子に乗って境内を散歩しました。最初に低い階段が少しあって、そこでは家族3人で車椅子を持上げましたが、後は平坦な地面の上で、車椅子でも楽に移動できました。
藤棚の藤が美しく、ともちゃんもその下に入って写真を撮りました。ともちゃんは深くリクライニングした状態で車椅子に乗っているので、見上げなくても「空」がよく見えます。満開の藤の花の薄い紫が、黄緑色の葉っぱの中から飛び出ている「見慣れない空」をもっとゆっくりと味合わせてあげたかったのですが、蜂の羽音が聞こえて怖くなったので、早々に退散しました。人気の少ないお寺の境内をゆったりと散歩すると、落着いて心地よく感じます。本殿でカンカンと(鈴ではなく)鐘をならしてお参りをすると、ともちゃんはその音を聞いてニャハニャハ笑っていました。
ミルクの注入は奈良市内のファミレスで行いました。店内は家族連れで賑っていました。子供の声が気になるのか、いつになくともちゃんは他のお客さんのことが気になって、キョロキョロしていました。ともちゃん一家はちょっとだけ豪華に食事をしましたが、ともちゃんはいつもと同じミルクの注入で、豪華な雰囲気だけを楽しみました。強度の食物アレルギーのあるともちゃんなので、かわいそうですが安易に外食の食事をなめてみることもできないのです。
毎年、春に近場から始まるともちゃんのお出かけシーズンも、高速道路をドライブして出かけられるようになると、いよいよ本番です。帰り道も、帰ってからも、ともちゃんはニコニコとご機嫌で満足そうでした。これから、体調を崩すことなく、今年もたくさんお出かけできますように。