ともちゃん の日常36


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2007年5月以前(ともちゃんの日常35へ)

2007年6月

14日(木)
「高3の体験実習」

21日(木)
「日帰りの宿泊学習」

2007年7月

25日(水)
「1学期を振返って」

28日(土)
「新幹線で名古屋」

30日(月)
「なつのがっこう」

2007年8月

10日(金)
「関ヶ原」

12日(日)
「ナスカ展」

17日(金)
「フィラデルフィア美術館展」

2007年9月

28日(金)
「傘お化けの運動会」

2007年10月

28日(日)
「秋の味覚」

2007年11月以降(ともちゃんの日常37へ)


2007年6月14日(木)

 今年も体験実習の季節になりました。養護学校卒業後の進路を決めるために、それぞれ希望する施設での生活を体験するというものです。ともちゃんは、卒業後は看護士さんの常駐しているH園に通いたいと強く望んでいます。それで、今年も去年に続き、H園のデイセンターで実習しました。

 昨日の夜から雨が降り出し、あいにく今日から梅雨入りの模様です。でも、ともちゃんの家のカーポートの屋根の下にH園からのスロープ付きの送迎車を入れると、ともちゃんも車椅子も濡れずに乗込むことができました。H園の入口では、張出した屋根の下で車を降りることができます。タクシーでは車椅子のフレーム部分を折りたたんでトランクに入れるためトランクの扉が閉まらず、開けたままで走行する道中で濡れてしまうので、雨の日対策としてのこの方法は有効ではありません。学校の先生と看護士さんに家まで来てもらい、みんなで送迎車に乗込むと、ともちゃんは一安心して笑顔が出ていました。

 朝の会が始まる10時に合せて当所しました。ともちゃんは、用意してもらった畳の上で先生に抱っこしてもらい、当所して来たり、水分補給したりしている先輩方の声を聞き、その気配を感じていました。賑やかなところが好きなともちゃんは、学校とは違う声を聞いてもニコニコと楽しそうでした。朝の会が始り、司会の先輩が一人ずつの名前を呼ぶ段になると、1番にともちゃんのところにやって来てくれました。

 慣れないところでも、こっちから様子を見ている時はその雰囲気を十分楽しめるともちゃんなのに、知らない人から話しかけられたり注目されたりすると、ちょっと気後れして、緊張してしまいます。先輩と車椅子で向い合った時は、先輩に付添っておられる職員さんに名前を呼んでもらっても、先生から先輩に「よろしくお願いします。」と返してもらっても、ともちゃんはカチカチで神妙にしていました。

 そのくせ、朝の会の最後に、わざと名前を呼ぶのを忘れて見せて「そこは突っ込むところやろ。」と先輩と職員さんがふざけ合っているのを聞くと、ともちゃんもタイミングよくギャハハハと嬉しそうに笑っています。その後、「今日は知らない子がいる。」と気付いた別の先輩がともちゃんに興味を示して声を出したので、お母さんが抱っこして、腹ばい先輩の側まであいさつに行ったのですが、ともちゃんはまた表情を硬くして、引っ込み思案になっていました。

 今日の活動は音楽です。園で栽培されたハーブが煮出されて、ほんのりと香りを放っています。床に敷かれたマットに寝ころんだり、マットの上で支えてもらったり、横の一段高くなった畳の上で横抱きしてもらったりと、先輩たちはそれぞれにリラックスした状態で音楽を聴きます。音楽は、職員さんたちが順番に思い思いの楽器を演奏して下さいました。タンバリンを持っている先輩もいます。ともちゃんも、一段高い畳に腰をかけた先生に抱っこされて、音楽を楽しみました。ともちゃんは最初の演目「スイカの名産地」をニコニコしながら聞いて、あとの「手のひらを太陽に」や「さんぽ」でも笑顔が出ていました。

 ミルクの注入は、一緒に来ていただいた看護師さんに準備して頂き、ともちゃん用の畳の上で先生に抱っこしてもらって行いました。その間、お母さんはH園の2階にある授産施設のパン屋さんに、お姉ちゃんへのおみやげのパンを買いに行きました。先輩たちも、昼食前のひとときを思い思いにゆったりと過ごしていて、のんびりとした時間が流れています。ともちゃんは、1年上のN先輩がお休みで会えなかったのは残念でしたが、1年ぶりになる看護師さんや職員さんにちょっとお姉さんに成長した姿を見てもらいました。最近、在宅支援でともちゃんの家に来て下さるH園サポートステーションのSさんも顔を見に来てくれました。

 ともちゃんの実習は、ともちゃんの体力に合せて、登校した場合と同様ミルクの注入が済むと終りです。先輩たちが、そろそろ昼食を食べようかとしている部屋を後にして、送迎車で帰宅しました。医療的ケアが必要なともちゃんでも、決して在宅にはしたくありません。友達もお出かけも大好きなので、週に2度か3度、今日の実習のような無理のないスケジュールで、Nちゃんをはじめ先輩たちと一緒にこのH園に通って、ゆったりと楽しく生活したいと望んでいます。

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2007年6月21日(木)

 ともちゃんの養護学校高等部、重複重度学級(K1組とK2組)の宿泊学習がありました。1日目は学校で宿泊学習に向けての活動をした後、通常通りに過ごし、午後3時半、宿舎の送迎車で30分くらいのところにある「ふれあい会館」に移動して、夕食や入浴、夜の集いを楽しみます。2日目は、朝食を食べた後、学校に戻って記念品作りをします。毎年の行事で、ともちゃんは、昨年、一昨年ともに2日目の学校での記念品作りにだけ参加していました。在宅酸素のともちゃんは、夜間の呼吸管理が必要なため、宿泊は難しいからです。今年は、同じ日帰りでも今までとは趣を変えて、1日目の午後、学校から宿舎までのバスの小旅行に参加しました。ともちゃんは、宿舎についてすぐタクシーで帰宅します。

 今年は学校生活最後の年です。昨年の日帰り修学旅行で自信を付けたこともあって、ともちゃんには出来るだけ学校行事に参加させてあげたいと両親は思っています。春の遠足にも参加予定でしたが、雨で中止になってしまいました。そこで、それに代る友達や先生みんなでどこかに出かけるという機会を与えてあげたいと思っていました。それに、ともちゃんはスクールバスのザワザワした雰囲気が大好きだったのですが、京都に引越してからは訪問学級になったので、スクールバスに乗ることは全くなくなっていました。みんなで乗る送迎バスは、ともちゃんにとってきっと楽しいものになるでしょう。

 早寝、早起きのともちゃんは、通常活動は主に午前中に行っていました。夕方からの外出は珍しいことです。今回の宿泊学習に際しては、夕方に活動の時間が取れるように、一日の予定を少しずつ前倒しで行うようにしました。いざとなれば、昼食のお粥ペーストを食べる時間を短くして調節しようと思っていたのですが、ともちゃんは張切っていて、午後2時には予定を全て終えていました。5時過ぎに家に帰ってきた時には、夕食のミルクの注入をして寝室に行けばいいという状態です。3時過ぎ、下校便のスクールバスが次々に出発する学校にタクシーで到着すると、夕方の風が通り抜けて玄関前はとてもさわやかでした。

 教室に行こうとしていると、友達がみんなで玄関先まで来てくれました。ともちゃんはタクシーに乗る前からニコニコうれしそうにしていたのですが、涼しくて心地のよい玄関先でみんなと宿舎からの送迎バスを待っている間は、大喜びでギャハハハ、ギャハハハと大きな口を開けてはしゃいでいました。楽しいひとときです。バスでは先生に抱っこされて座席に着きました。ともちゃんを抱く先生の姿勢も、補助席を利用してうまく決って、リラックスして抱っこされています。笑顔も一杯出ています。

 バスは学校近くの狭い道を「ふれあい会館」に向かうのかと思いきや、予想に反してともちゃん家の方向に向かいました。あれあれ、畑の向こうにともちゃんのお家が見えるよ。もう帰ってしまうのかな。いえいえ、ともちゃんのお家を通越して、広い道を北上して「ふれあい会館」へ向かいました。ともちゃんは、みんなでバスに乗っているという雰囲気を全身で感じて、それだけでもワクワクしていましたが、その上先生方が歌を歌って下さったものですから、気分はさらに盛上がっています。30分程度ですが、ちょっとしたバス旅行でした。竹林の間を抜けて、住宅地になっている山道を登ると、目的地に到着しました

 このまま宿泊せずに帰宅するともちゃんのために、隣の山の斜面を利用した公園でオープニングセレモニーを催してもらいました。到着した時は、偶然にも公園の草刈り作業が終ったところで、円形のステージが夏草の中から現れていました。それで、このステージの上にみんなで丸くなって、先生方の歌や演奏を聞きました。トーンチャイムの澄んだ音色に、隣のKzちゃんが優しい声を出しています。ともちゃんは、ホホーンと真剣に聞入っていました。みんなに「また、学校で会おうね。」と送ってもらい、セレモニーはおしまい。車椅子の行列でぞろぞろと公園のスロープを降りました。みんなは宿泊の部屋に落着き、順番にお風呂に入ります。

 タクシーが到着するまで宿舎の中を探検するつもりでしたが、意外なほどタクシーは早く到着しました。先生と看護士さんに見送られて、タクシーの中からお母さんと手を振るともちゃんは、ニコニコしながらささやくような小さな声で、ハーン、ハーンと何度も話していました。「おもしろかったなあ。本当はもうちょっといたかったけど。」と言っているようでした。家に帰ってから、ともちゃんは今日の様子を家族に話してもらって、とても満足気でした。冗談で「ともちゃんは、これからお父さんの車で、日帰りの夜の集いに参加するつもりやで。」という話になり、ともちゃんも笑顔で声を出して答えていましたが、生活のリズムを崩すこともなく、7時半には眠りました。ともちゃんには、ちょうどよい宿泊学習でした。

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2007年7月25日(水)

 1学期が終りました。今年は最後の学校生活なので、1日1日を大切に味わいながら過してきたつもりなのに、早いものです。終業式は、訪問で行っていただきました。1学期の出席日数は、登校と訪問合せて28日でした。今年は、去年のように熱を出すことも、体調を崩すこともなく、今までで一番たくさん出席できました。体験実習、宿泊学習も、ともちゃんのペースで参加でき、年度初めの恒例となった引越し前からずっと診て貰っている大阪の病院への通院も順調でした。ともちゃんの1学期を少し振返ってみます。

 学期始めには、学校からの散歩の時間に友達と先生がともちゃんの家まで来て下さって、ともちゃんも一緒に家の近くの公園に行ったことがありました。友達との散歩をともちゃんはとても楽しみにしていて、張切って友達が来るのを待っていました。4月と5月に2回行ったのですが、今改めて写真を見てみると4月の時はまだ風が冷たく、ともちゃんはフリースの膝掛けをしていていました。5月には、日傘をさしています。公園では、桜の木の下で朝の会をしたり、先生のリコーダを聞いたり、摘みたてイチゴの香りを嗅いだり(帰ってジュースにして飲みました)、楽しく過ごしました。

 訪問学級の授業では、作品作りも楽しみました。ともちゃんは、絵を描いたり、字を書いたりすることが大好きです。先生に「今日は作品を作ります。」と内容を説明して貰うと、うれしそうに目を輝かせ、声を出して笑っています。母の日には瓶に、父の日にはお皿に、それぞれガラス絵用の絵具で絵を描きました。実際に筆を持たせて貰って作品を作る時は、身体に力が入ってしまうことが多いのですが、ともちゃんが選んだ青色の絵の具を瓶に素手で塗る時は、ともちゃんの手の窪みにちょうど良い丸みの瓶で、笑顔でニュルニュルする絵具の感触を楽しんでいました。

 父の日の作品の時は、説明を聞いてたくさん声も出し、「さあ画くぞ。」とやる気になっていました。その後、雰囲気をさらに盛上げるために、先生が「お父さんの歌」を歌って下さったのですが、ともちゃんはすぐにでも描くつもりだったのに違ったので、少し困った顔になってしまったのがおかしかったです。先生とお母さんにたくさん誉めてもらって、また笑顔が戻っていました。

 絵本を題材にした授業「お任せツアー」では、「筏乗り」も体験しました。動物園の動物たちと一緒にツアーに出かけるという設定で、すっかりお馴染みになったお話や歌に笑顔が出ます。動物たちのシールを張った透明なビニール傘をくるくる回して貰うことも好きです。その中に、「筏に乗る」というシーンがありました。訪問学級では、大きなビーチボールの空気をともちゃんが乗ると沈み込むけれど、床には着かない程度に抜いてもらっていて、そこにともちゃんが乗りました。ビーチボールの周囲を押すと、プヨン、プヨンと適度に揺れて、ともちゃんは笑顔で楽しんでいました。

 登校した時の「筏乗り」はもっとスリリングでした。校内の中庭に出るスロープを利用して、台車で滑り降りるのです。台車の上にはビニールボートを固定して、座位のとれる友達はボートの中に座って滑り降ります。友達が滑っているのを見ている間は、大きな口を開けてギャハギャハはしゃいでいたのですが、自分の番が来ると神妙な顔をしていました。ともちゃんは先生に抱っこしてもらって、先生がボート内に座って滑りました。1度目は筋緊張が入ってしまいましたが、2度目は抱き方も工夫して貰って、少し慣れました。もう少しすると、友達のように滑りを楽しめるようになるでしょう。

 学校以外の生活では、ともちゃんは支援センターの福祉サービスも利用するようになりました。夕方のホームヘルプサービスと通院の時のガイドヘルプサービスです。夕方、お母さんが片付けや夕食のミルクの注入の準備をしている間、ともちゃんはヘルパーさんに抱っこしてもらって過ごします。今はまだ2週間に一度、1時間程度ですが、ともちゃんが、家族や学校の先生以外の人に抱っこしてもらうことに慣れて欲しいと思っています。病院もヘルパーさんが同行して下さることで、会計に並ぶにしても、ともちゃんの水分補給を行うにしても、随分と楽になりました。

 そして、7月25日、ともちゃんの18歳の誕生日です。朝起きたら、お姉ちゃんからのプレゼントのキティちゃんのついたブラシが置かれていました。ともちゃんはアハハンと喜んで、早速髪をとかして貰っていました。お父さんからのプレゼントは、いつもの「永久不滅ポイント」。「お出かけをして、ともちゃんが欲しいものがあった時は、いつでも買ってあげるからな。」というものです。お昼前、ピンポーンとドアチャイムが鳴って、先生が誕生日カードと小さい花束を届けてくださいました。ともちゃんもうれしくて、玄関先までお母さんの抱っこで出てきました。七夕飾り型のカードにはたくさん短冊が下がり、先生方や家族からのメッセージが短冊に書かれていました。

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2007年7月28日(土)

ともちゃん家の今夏一番のイベントは「新幹線で名古屋に行く」です。修学旅行で新幹線に乗ったともちゃんは、列車でのお出かけに自信をつけました。ともちゃんのお出かけには、経管栄養の注入セット、紙おむつ、着替え、タオルなどの他にも、吸引器、酸素ボンベ、予備のボンベなど荷物が一杯なので、今までは車でのお出かけが中心でした。でも、お姉ちゃんも含めて3人で分担すれば、ともちゃんの荷物を電車で運べることも分りました。列車でのお出かけには、列車の旅ならではの楽しさがあるとも感じました。それで、家族で新幹線でのお出かけを計画しました。

 修学旅行では西に向ったので、今回は東に向うことにしました。ということで、行先は名古屋に決定。京都駅からのぞみ号で35分の列車の旅です。乗車中にミルクの注入を済ませることは不可能なので、名古屋でミルクの注入を行い、お土産を買って、再び新幹線に乗って、ともちゃんの負担にならない時間に京都に戻ってくるという計画です。「名古屋駅の上にタワービルができていて、その中にレストラン街があるで。」と、以前に名古屋に出張したことのあるお父さんが教えてくれました。そのタワービルでともちゃんはミルクの注入をし、家族は食事をとることにして、現地活動に2時間を当てました。

 新幹線では車いす席を確保しなければならないので、計画が決るとすぐに切符を予約しました。通常の予約センターに電話をして、車いす用の席を取りたい旨を伝えると、京都駅の電話番号を教えられ、そこで丁寧に対応してもらいました。「(修学旅行の帰りに利用したような)個室をお取りしましょうか?」と尋ねられましたが、乗車時間が30分ではかえって落着けないので、普通の座席の横に車いすを固定できる席にしました。7月7日に、ともちゃんも一緒に家族揃って、京都駅まで切符を買いに行きました。買ってきた切符は大切に仕舞って、楽しい気分はどんどん盛上がっていきました。

 昨日の朝、お父さんが「『明日は名古屋に行く』ってともちゃんに言うと、きっと今日から興奮するから、興奮しすぎて体調を崩してもいかんし、明日はちょっと楽しいことがあるでいうことにしとこ。」と言っていたのですが、お母さんやお姉ちゃんが口を滑らせてしまい、(ともちゃんは言葉を理解しているわけではありませんが、雰囲気には敏感に反応します)ともちゃんは気分が高揚していました。案の定、ガクガクする発作が起こって、1時間くらい昼寝をして回復し、それでもまだはしゃいでいました。夜の眠りもなかなか深くなりませんでした。

 いよいよ、今日は名古屋までお出かけの日。ともちゃんはいつも通り5時に目覚めました。注入など、いつもの予定を終えて、朝食のお粥も1時間もかからずに食べ終えました。今日も元気で張切っています。京都駅まではお父さんの車で出かけたのですが、車に乗ってすぐはニコニコしていたのに、しばらくするとボーッとしてウトウトし始めました。「今は寝とき。」、興奮しやすいともちゃんなので、適当にウトウトして休憩モードに入ってくれると助かります。思いがけなく少し混んでいた市内の道も、早く余裕を持って出発していたおかげで(これも、ともちゃんが早く予定をこなしてくれたからです)焦らずに済みました。京都駅ビルの百貨店横の駐車場に車を止めて、車いすで駅に向かいました。

 ともちゃんが京都駅に来たのは、もう5回目になります。構内のエレベータの位置も、どういうふうに乗次いで行くかも、もう分っています。カレー屋さんの奥に隠れた小さなエレベータを降りると新幹線の改札口の階に出ました。改札口では、ともちゃんが車いすで乗車する旨を伝えて、ホームへ誘導してもらいました。ともちゃんが乗車する列車の到着までまだしばらくあるので、「ここでお待ちくださいね。乗車される時に、また来ます。」、ホーム上の待合室に案内されました。新幹線が絶えず発着するのを見て、出発の写真が撮りたくなりました。それで、待合室を出て、新幹線と一緒に記念撮影をしたりしました。

 ともちゃんが乗る列車が到着しました。ともちゃんの車両は11号車。乗車位置は待合室の近くにあって、11号車が車いす用車両であることを示す表示も施されていました。他の乗客が乗込んでから、列車の入口とホームの間に段差解消用の板を渡してもらって、ゆっくりと乗込みました。駅員さんに誘導してもらっていると、乗込んでいる間に列車が発車しまうのではないかと心配することなく、安心です。11号車に設けられている多目的個室には、既に誰か入っておられるようでした。個室の前の廊下を通って客車のドアを開けると、入ってすぐの左側の2列が車いす席です。本来なら横に3席ずつ並んでいる座席が2席ずつになっていて、通路側の1席分に車いすを固定しても、通常の通路幅が確保できるようになっています。

 ともちゃんの家族4人分の指定席は、この横に2席づつの2列です。2列を向い合せに配して、進行方法にお父さんがともちゃんを抱っこして座り、向かいにお姉ちゃんとお母さんが座りました。ともちゃんの車いすは座席の横の固定場所に固定しています。ともちゃんの車中の移動も、座席への乗移りもスムーズにできて、車いすに載せた荷物もそのままで手元に置けて、いい具合でした。新幹線は近江米の水田地帯を走っています。お父さんの抱っこで安心したともちゃんは、家族の賑やかな話声を聞きながらウトウトしていました。

 もうすぐ名古屋に到着するというので、車いすに座ってデッキに向うともちゃんは、目をキラキラ輝かせて元気一杯です。少しウトウトしたので、体力を回復しました。さあ名古屋に着くぞーっという期待感で、はしゃいでいます。ギャハギャハと満面の笑顔で、デッキにおられた乗務員さんにも、愛嬌を振りまいていました。名古屋駅でも駅員さんに迎えてもらい、改札までの誘導をしてもらいました。駅員さんは、1人旅の車いすの方の車いすを押して先導し、ともちゃんの車いすを押すお父さんがその後に続きました。

 改札を出ると、名古屋駅を東西に結ぶ連絡通路を新幹線ホームのあった西の端からタワービルのある東の端まで突き進みます。名古屋駅も混雑していたのですが、人混みをうまく避けつつ、早めに歩きます。実は、ともちゃんの車いすは終業式前に出来上がったばかりの新車です。先週、近所で試乗はしましたが、いきなりの遠出となりました。少し心配していたのですが、京都駅でずれていた足置き台の角度を調節すると、車いすの細かい振動がビンビンと身体に響くようなこともなくなり、ともちゃんは楽そうに乗って、ズンズン押されて行きました。百貨店の中のエレベータを目指したのですが、レストラン街まで行っているエレベータは隣の建物にありました。

 車いすでも難なく店内に入れるように、フードコート形式のレストランに狙いを定めていました。11時過ぎだというのに、結構お客さんが入っています。入口近くの席に着き、ともちゃんはお父さんに抱っこされて、ミルクの注入を開始します。家族はみそかつ丼を食べることにして、ともちゃんの注入の準備を終えた後、お姉ちゃんとお母さんが席まで運んできました。「ここのレストラン、入った時に給食のにおいがしてたよなあ。」、洋食屋さんなのですが、なぜか給食の懐かしくて、食欲をそそるにおいがしていました。外食の時、ともちゃんはどこへ行っても、同じミルクの注入でかわいそうですが、せめて、それぞれの場所での照明、におい、ざわめきなどから、雰囲気の違いを楽しんで欲しいものです。

 お母さんは素早く食べ終ると、トイレまで手を洗いに行きました。ともちゃんには食物アレルギーがあるので、ともちゃんの注入の後片付けでチューブや注射器に触れる時に、食べ物が付いていてはいけないからです。この頃には、店の入り口に空席を待つ行列がずらりと並んでいて、お母さんが通りにくいくらいになっていました。ともちゃんの注入時間が早めで良かったと、お母さんはつくづく思いました。食事を済ませたともちゃんは、また意欲にあふれています。1階へ降りるガラス張りのエレベータの中でも、たくさんの人に囲まれていても、明るい光と広がる光景に笑顔がこぼれていました。

 名古屋での時間は十分にとったつもりだったのですが、食事が終ってみると、結構帰りの時間が迫っています。人混みの中をうまく縫って、お父さんが大股でスタスタと車椅子を押して、あらかじめ調べてきたキオスクの場所に急ぎました。ともちゃんは、ズンズン進む車椅子上で「ワーイワーイ、早いぞ!」とばかりに、グヒヒヒ、グヒヒヒ笑っていました。ここでは、名古屋キティちゃんグッズとして、タオルと根付とシャチホコのスタンプと天むすキティちゃんの小さなマスコットぬいぐるみを買いました。色々選べたけれど、できたら修学旅行で買ったようなぬいぐるみが欲しいなあということで次のお店に移動です。

 京都駅でも広島駅でも、観光客相手の嵩張る商品、例えばぬいぐるみなども充実した大きなお土産屋さんがあったので、名古屋駅にもあると思っていました。けれど、名古屋駅構内は、地元の人たちのための店舗も多く、いくつか場所をチェックしていたお土産屋さんもビジネス客向けなのか、お菓子類を中心にした小型の店舗ばかりでした。そうなると、「最初に天むすキティちゃんも買えたし、タオルもたくさんの種類の中から選べたから、良かったやん。」とお土産買いには一応満足して、新幹線の改札に入りました。

 帰りも車椅子スペースの横の2連席を2列確保して貰っていました。お父さんに抱っこされて席に着いたともちゃんは、しばらくは家族のおしゃべりを聞いていたものの、すぐに静かになって満足と興奮疲れで眠ってしまいました。そのうちに、ともちゃんを抱っこしたお父さんも目を閉じて、眠っています。向いの席に座ったお姉ちゃんとお母さんは「2人とも寝てるで。」と、お父さんがともちゃんを落しそうにならないかと、様子を伺いながら(お父さんはしっかり抱っこしていて大丈夫でした)、ずっとおしゃべりをしていました。

 京都駅で迎えて下さったのは、行きに案内して貰ったのと同じ駅員さんでした。「すぐに帰ってきましたね。」、「本当に、あっと言う間でした。」、楽しかった時間は余計に早く感じます。「来年は富士山が見えるとこまで、行けるかなあ。」、「静岡はひかりで行かなあかんから、東京行くのと時間的にはあんまり変らへんで。」、「それやったら、東京まで行こか。」。「新幹線だけ違ごて、他の特急にも車いす席があるものがあるみたいやで。」、来年の旅行に夢は広がり、ともちゃんも楽しそうに話に寄っています。

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2007年7月30日(月)

 今日は「なつのがっこう」の全体会でした。「なつのがっこう」は小中学校、養護学校を問わず、N市在住の障害を持つ子供たちが楽しく夏休みを過そうと、「全体会」、「校区の日」、「外出の日」の予定を設けて、毎年開催されています。去年は日程が合わず、ともちゃんは参加できませんでしたが、今年は全体会に参加できました。高等部3年生のともちゃんにとっては、「なつのがっこう」は今年で最後になってしまうのですが、キャハハハと満面の笑顔で十分に楽しむことができました。

 全体会の会場は産業文化会館で、先生に家まで迎えに来て頂き、一緒にタクシーに乗って行きました。新しくなったともちゃんの車いすを折畳んでタクシーに乗せるのは初めてなので、お母さんはともちゃんを先生にお任せして、落着いて、でも迷いながら車いすを折畳みました。昨夜練習して、十分に手順を理解したつもりですが、慣れるまでには少し時間がかかります。全体会の開会は9時半からなのですが、ともちゃんの今日のペースに合せて10時にタクシーを呼んだので、途中からの参加になります。

 会場は椅子席なので、車いすで壁際を舞台の見える位置まで前進して、そこに車いすを固定しました。ともちゃんも、車いすに乗ったまま、舞台を見ます。でも、車いすへの乗せ方が悪かったのでしょうか、ともちゃんの筋緊張が強く、顎が上がって首を激しく後ろへそらすので、舞台どころではありません。先生とお母さんが、その場でともちゃんを抱上げ、何度か座り直させて、落着いて座れるようになりました。タクシーから降りてあわてて乗移らせたので、うまく座れなかったのでしょう。1回でともちゃんが楽に座位をとれるようにコツを覚えるのが、お母さんの今後の課題です。

 ちょうどよい位置に座ると、ともちゃんの身体の歪みに合せて作った、クッションの効いた車いすは心地よく座れます。舞台を見ると、Kzちゃんのお母さんのサークルがペープサートをしています。ともちゃんが大笑いしたのは、次の手遊びでした。タコナイズドスイミング、イカナイズドスイミング、クラゲナイズドスイミングと、それぞれ違う動作なのですが、舞台の上でKzちゃんのお母さんとクラスのO先生が歌に合せた動きをすると、雰囲気を感じ取ったともちゃんは、ギャハギャハ大喜びしていました。ともちゃん的には笑いの壺を刺激するような、音楽と踊りだったようです。

 その後の出し物は、N市在住のプロの歌手の方のコンサートでした。ともちゃんは、最初、会場中に響き渡る声にちょっとびっくりしていましたが、アフリカの太鼓の音に笑ったり、歌を静かに聴いたりして、楽しんでいました。会が終り、みんなは帰ってしまうのですが、ともちゃんはミルクの注入をしました。ロビーでは、帰る人たちでごった返すので、会館の喫茶店で行いました。

 そこで話題になったのが、ともちゃんの名古屋旅行です。学校の看護師さんが偶然にもその日名古屋に行っていて、ともちゃん一家が間違えて入った百貨店のあたりで人を待っておられたそうです。その時、見慣れたともちゃんオリジナルのキティちゃんのリュックが目について、見ると車椅子に乗ったともちゃんが居たのでびっくり。声をかけようとしたのですが、人混みの中を急いで行ってしまったとのことでした。そうそう、全くその通り、その時の様子が思い出されます。あの時は、タワービルのレストラン街を目指して急いでいました。思いがけない話を聞いて、ミルクの注入が楽しいひとときになりました。

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2007年8月10日(金)

ともちゃんも、家族みんなも待っていたお父さんの夏休が始りました。初日の今日は、早速、関ヶ原までドライブに行って来ました。一般のお盆休みにかかってしまうと道が混雑すると思ってさっさと出かけてきたのですが、ちょっと予想が外れたようです。いつもはすっきりと空いていて走りやすい京滋バイパスなのに、今日はまわりにたくさん車が走っています。対向車線は渋滞でびっしりと車が続いて、ほとんど動いていません。こんな京滋バイパスは初めてです。

 今週ともちゃんの家に来た車椅子屋さんから、「お盆休みまで頑張る仕事の車と、すでに夏休に入った遊びの車の両方で、名神高速が混雑していました。」と聞いていました。それで、出発前にインターネットの高速道路の渋滞情報を見ていたのですが、下りの名神高速が赤色の渋滞から、黒色の通行止に変ったところまで確認していたので、その影響が出てきたのかもしれません。帰りもこんなに混んでいたら嫌だなーと、隣の車線を見ながら思いました。

 でも、行きの車中は「関ヶ原クイズ大会」で楽しく過ごしました。このお出かけも、夏の大きなイベントとしてみんなで早くから計画して、楽みにしていました。関ヶ原クイズはそんな中でのお姉ちゃんの提案です。お姉ちゃんも、お母さんも、ともちゃんも(お母さんと協力して)、あらかじめクイズの問題を作っておきました。自分以外の人の出題に答えて正解すると1点、間違うと-1点で計算します。お父さんは運転手なので出題はしませんが、回答はします。お姉ちゃんは、優勝と2位の商品まで用意しています。

 ともちゃんも「早くやりたいやんな。」と言う声かけに「ハン」とタイミング良く答えて、ニコニコしています。「関ヶ原町の花は何か?」とか、「この中で関ヶ原の合戦の東軍の武将は誰か?」という関ヶ原にまつわるものから、関ヶ原に全く関係のないものまで、盛沢山に出題されました。ともちゃんは、問題についてみんなでワヤワヤ言っている時はしっかりと寄っているのですが、いよいよ回答する段になってお姉ちゃんに選択肢の番号を一つずつ尋ねられると、「ええっ、そんなん聞かれても・・・迷うよー。」と困った顔になります。ともちゃんの微妙な表情の違いで、ともちゃんが選択した答えを決めたのですが、間違いだと分るとともちゃんは情けない表情をしていました。

 車の中で賑やかに過していると、すぐに多賀SAに着きました。ここのレストランで、ともちゃんはミルクの注入をします。駐車した車が見える窓際の席に案内されました。大きなキティちゃんの顔が付いたともちゃんのリュックを座席に座らせ、お母さんは注入の準備を始めました。ウェイターのお兄さんが水を持って来てくれたのですが、コップを5つ置いて行きました。「お水、4つでいいですよ。」とお母さんはあわてて返しましたが、ともちゃんを抱っこしたお父さん、お姉ちゃんと並んで、リュックのキティちゃんがちょこんと座っていました。まるで、キティちゃんが5人目のようでした。

 このレストランは朝7時から開いていて、まだ11時前ですが朝食バイキングとかではなく、ちゃんとしたメニューなのがうれしいです。家族はそれぞれ違う定食を頼みました。観光バスが次々にやって来るのを見ながら、ともちゃんもいつもにも増してニコニコと楽しそうにミルクを飲みました。食事が終ると、ともちゃんは行きでもお土産をチェックします。お土産コーナーに足を踏入れてびっくりしました。阪神タイガースの音楽がかかっていて、阪神のユニフォームを着たキャラクターグッズがたくさん揃えてありました。

 関西土産なのでしょう。上りの多賀SAは、関西を旅行した観光客が名神高速で帰る時、買忘れた関西土産を買える最後の場所です。甲子園に阪神の応援に来た人たちも買うのかもしれません。もちろん、阪神キティグッズも充実しています。阪神ファンのお父さんは、3種類のユニフォームを着たキティちゃんのマスコット3個セットを見つけて、「これ、ええやん。これにしようや。」とともちゃんに勧めて、その気にさせて、しっかりとお土産にしていました。岐阜・関ヶ原方面のお土産は下りのSAで見ることにします。

 ここから、ともちゃんは関ヶ原まで眠っていました。関ヶ原インターチェンジで高速を降りたのですが、料金所で渋滞していました。せっかくETCを付けているのに、ETCのレーンの方がトラックで渋滞しているなんて・・・と思っていたら、料金所を出たところの国道が渋滞していました。料金所を出た国道365号線から国道21号線に曲るところが混んでいて、21号線を越えると、スムーズに流れていました。

 関ヶ原町は天下分け目の「関ヶ原の合戦」があった一帯で、石田三成の陣営跡のような陣地跡や、開戦地、首塚などの史跡(きっとそこにはその旨を知らせる表示板があるのでしょう)が点在しているのですが、ともちゃんは関ヶ原町歴史民族資料館を目指しました。資料館に行く途中の公園にも古戦場という表示板がありました。資料館には合戦に用いられた武将の具足や火縄銃、大砲などの武器、合戦図屏風などが展示してありました。夏休みのせいか親子連れが何組も来ていました。ともちゃんにとっては久しぶりの博物館ですが、話しかけながら見学していくと、ケラケラとよく笑ってご機嫌でした。

 こじんまりとしているもののミュージアムショップもあります。30種類以上の合戦に参加した武将の家紋がそれぞれ入ったぐい飲みやキーホルダー、武将の名前の千社札など、渋い目のお土産がたくさんありました。ともちゃんは、実際の武将ののぼり旗のミニチュア、ミニのぼり旗を買いました。何種類もある旗(売切れているものもあります)の中から、絵柄が派手なものを選びました。白地に黒で家紋や字がたくさん描かれているこの旗は、島佐近のものでした。歴史には疎いお母さんは、島佐近がどんな人だか全く分らない(というより、名前も初めて聞く)ので、参戦した武将について少しは知っていた方がもっと楽しかったかもと後悔していました。

 博物館を出てから、公園になっている古戦場を少しだけ散歩して、帰路につきました。車に乗るとともちゃんが眠ったので、帰りはクイズはなしで多賀SAまで来ました。高速道路には渋滞区間の表示が出ています。ともちゃんの水分補給は、最初の予定を変更して、時間短縮のために車から降りることなく行いました。2回に分けて水分を注入する間の待ち時間に、お母さんとお姉ちゃんはソフトクリームを買いに売店まで行って、ともちゃんには「ひこにゃん」というキャラクターの根付けを買って戻ってきました。「ひこにゃん」は彦根城築城400年を記念して作られた井伊家の赤揃えの兜をかぶった猫です。上りの多賀SAにもグッズがたくさんあって、ともちゃん一家でも話題になっていたものです。

 キティちゃんグッズはまた今度、ともちゃんと下りの多賀SAに来た時に一緒に探して選びましょう。今回は、関ヶ原(もしくは岐阜方面の)キティちゃんが買えなかったのは残念ですが、お父さんは「この辺はよく通るから、また寄ったらええやん。」と慰めてくれました。関ヶ原のお土産もあるし、ひこにゃんも武将の兜をかぶっているので、今回はこれでいいでしょう。それよりも、渋滞に巻込まれて、帰りが遅くなる方が心配です。多賀SAを出るとお姉ちゃんも眠ってしまったので、クイズの決着は次回のお出かけに持越しとなりました。

 名神高速の渋滞が京滋バイパスにも及んでいて、大山崎ジャンクション・ICからの渋滞が長く繋がってきていました。仕方がないので大山崎の一つ手前で京滋バイパスを降りて、初めて通る道をカーナビに誘導されて帰ることにしました。この頃にはともちゃんは起きていて、お母さんと楽しげにおしゃべりをしていました。地道は171号線に出るところだけ混んでいましたが、何とかうまく帰宅時間が遅くなることなく、帰着くことができました。

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2007年8月12日(日)

「なあなあ、ともちゃん、『ナスカ展』行きたいと思わへん?」、「ハーン」、「行きたいやんなあ!」、「ハハーン」、「行こか。」、「ハン」。ともちゃんが関ヶ原の博物館で楽しそうにしているのを見て、お姉ちゃんが自分の行きたかった「世界遺産ナスカ展」に誘いました。ともちゃんはタイミング良く答えて、うれしそうにしています。その後、お母さんが「ミイラ怖いで。平気かあ。」と言っても、目を輝かせて、「ハハッ」。ともちゃんが、ナスカ展がどのようなものか分っているかは疑問ですが、次のお出かけとして、とても期待していることは確かです。

 というわけで、ともちゃんは「ナスカ展」に行ってきました。「ナスカ展」は烏丸御池にある京都文化博物館で開催されています。事前に調べて、博物館の駐車場はともちゃんのミニバンでは車高が制限を超えてしまうので、京都市営の御池駐車場に車を駐めることにして出発しました。車の中では、一昨日の関ヶ原クイズの続きをしました。お父さんが追上げて一人勝ちしそうになったので、最後には逆転問題を出したのですが、それも無駄な抵抗でした。優勝は1点のお父さんで、後の3人はみんな0点。ちょっと寂しそうなともちゃんに、お姉ちゃんが「頑張ったから、ともちゃんが2等にしてあげよ。」。お姉ちゃんが選んだ1等の賞品はウサギの形のハサミ。2等はチャーミーキティの4色ボールペンでした。

 烏丸通を右折してすぐ、御池通に駐車場入口の表示がありました。博物館の入口は高倉通に面しているのですが、高倉通近くに出るエレベータの側に車いす用の駐車スペースがあって、とても楽に博物館に行くことができました。京都文化博物館ではエレベータで4階の会場に上がり、展示を見て回りました。最初は動物の形や人の顔の模様がついた壺がいくつも展示されています。ともちゃんは楽しそうに笑いながら展示を見ています。10時に開館されたところなのに、かなりの入場者でザワザワしているのが、ともちゃんにとって楽しいのかと思いましたが、映像の展示やお土産ショップでは笑顔はありませんでした。再び展示ケースの前に戻ると、ミイラの展示でしたが、楽しそうに声を出してギャハギャハ笑って見ていました。

 展示ケースは薄暗い展示室の中でライトアップされて、そこに色々な物が置かれています。それを移動しながら(車いすを押してもらいながら)「見る」ということが楽しかったのかもしれません。ともちゃんは、明るい暗いはよく分るし、明るいのは好きです。ともかく、ともちゃんが今日のお出かけ(ナスカ展)を楽しみにしていて、実際に期待通りのものだったのか、とても楽しんで見学していたということに驚き、うれしくなりました。ナスカの高度な文化も、地上絵を描いた線が深い窪みではなく石ころを退けて土の面を露出させたものというのも大きな発見でしたが、ともちゃんが展示大好きというのはそれ以上の大きな発見でした。

 お土産ショップではボーッとしていて笑顔が出ないともちゃんでしたが、ちゃんとお土産も買いました。お姉ちゃんが「こんなん、どお?」と持たせてくれた、地上絵の柄が描かれたヒョウタンで作ったマラカスをしっかりと握っていたので、これにしました。お姉ちゃんは、それに合せてオカリナを買いました。オカリナにも地上絵が描かれていて、いろんな種類があったのですが、ともちゃんが視線で選んだ「お猿」の柄に決めました。ミルクの注入は博物館1階の喫茶店で、博物館で貰ったパンフを見ながら「ともちゃんがこんなに博物館が好きやったら、また何かの展覧会に行きたいな。」と話しながら、行いました。

 「御池通は歩道が広くて、平らで、車いすでも行きやすいやろ。」、駐車場のある御池通まで戻ってきました。この辺りは、一昨年お姉ちゃんが通っていた予備校の近くで、お姉ちゃんはよく知っています。「御池通の地下街ゼストも新しくて、道が広いから車いすでも散歩しやすいで。」。御池通をブラブラと、老舗有名旅館の黒い塀を見たりしながら少し東に歩いて、寺町通からエレベータでゼストに下りました。ゼストの中をゆったりと散歩して、ともちゃんは前髪を止めるキラキラのピン留めを買って貰って帰りました。

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2007年8月17日(金)

夏のお出かけは涼しい博物館や美術館が一番、ともちゃんも楽しそうだし。夏休みに入ってともちゃんの体調も絶好調なので、お出かけ、休養、お出かけ、休養、お出かけと隔日で、今日も京都市美術館で開催されているフィラデルフィア美術館展に行く予定でした。しかし、朝起きてきたともちゃんの着替えをしていたお父さんが、ともちゃんの身体に発疹があるのを発見しました。お母さんが体中を調べてみると、お腹を中心に14個の発疹がありました。

 ともちゃんの発疹は、蚊に刺された後のように直径5mmから1cm位の皮膚の盛上がりがあって、その周りが赤くなっています。最初は虫さされを疑ったのですが、ともちゃんを抱っこして寝ていたお母さんは何ともありません。見かけはとてもかゆそうですが、ともちゃんはそれ程かゆがってはいません。ともちゃんは、かゆい時は全身の筋肉に力を入れて、キューッと縮こまるように固くなるのですが、今日はその様子はみられませんでした。

 1時間くらいすると、今まであった発疹はだんだんと薄くなって消えていきましたが、新しく出来てくるものもいくつかありました。今日はお出かけするのをやめようかと、両親は相談しています。ジンマシンのようなものなら、消えてしまえばそれでお終いです。でも、ジンマシンが出るというのは、どこかしら体調がいつもと違うからではないでしょうか。とはいっても、体調が悪いという程でもないのなら、出かけないとがっかりして、気まで滅入ってかわいそうです。ともちゃんのこれからの様子と、ジンマシンの引き具合で、出かけるかどうか判断することにしました。

 結局、ミルクの注入の後1時間あけての食事の頃からジンマシンは消え、元気がなかったように見えていたともちゃんも、食事の中盤あたりから俄然元気をアピールしだしました。「ニャハハーン」とよく声を出して、ニコニコ笑いながらしっかりと食べていました。「よし、ほんなら行こか。」、ともちゃんは、いつものようにお父さんの抱っこで車まで運んでもらうと、勝ち誇ったように高らかに、ギャハハハ、ギャハハハと大笑いしていました。

 京都市内はお盆でも道が混んでいて、美術館まで少し時間がかかりました。美術館のHPには、車椅子での来館者は平安神宮の大鳥居横の入口のインターホンで連絡すれば、駐車場を用意してもらえると書かれていました。出てきた警備員の人が言うには、鳥居脇の歩道と美術館の塀の隙間に車を駐めて下さいとので、駐車許可証を渡してくれました。美術館の正面でなるほど便利ではありますが、他の観光客の目が一杯で晴れがましい場所でした。美術館の建物に入るまで、灼熱の前庭を車椅子で横切っていると、ともちゃんは思っていたお出かけとは違ったのか、困ったような悲しそうな表情をしていました。しかし、涼しい建物に入ると「おお、ここや。ここや。」とともちゃんはうれしそうにしていました。

 ともちゃんのリュックも日傘も預けるように言われ(会場内で間違って絵に当ると大変なので)、展覧会の会場に入りました。入ってすぐの展示は暗い色彩のもので、ともちゃんはどこを見ていいのか分らないようで、キョロキョロして天井のライトを見ています。「ともちゃん、あれはライトやで。」、「ここの絵は暗いから、どこが絵で、どこが壁かわからへんよな。」、「あっちの『考える人』はどうや。ライトが当って、テカテカ光ってるで。」。最初の展示室には、ロダンの「考える人」があります。「これは見やすいやろ。」、この前にやってくると、ともちゃんは落着いた様子で笑っていました。

 次の展示室からは、印象派の明るい(白っぽい)色合いの絵画で、ライトの中に浮び上がる感じのためか、ともちゃんは「ホホーン」と興味深そうに、時々笑顔を見せながら眺めています。ともちゃんは、かつて大山崎山荘美術館のモネの睡蓮の絵を見て笑っていたということがあります。「ともちゃんの好きなモネの絵やで。」、「おねえが好きなのはルノワールやで。」、「おねえが高校の時に模写した『ルグラン嬢の肖像』はこれや。家に帰ったら、おねえの絵も見せたげるな。」、お姉ちゃんに声をかけて貰うと、ともちゃんはうれしそうにしていました。 

 展覧会場は相当混んでいて、すべての展示を車椅子でじっくり見るには無理があります。空いているところでは前まで行って見るけれど、混んでいるところでは後ろからさっと見ていきました。お姉ちゃんは、じっくり見るために少しの間離れたので、ともちゃんへの解説はお父さんになりました。「ジャングルの絵やなあ。」、「大きい絵やで。」、「ニューメキシコってこんな感じや。よう描けてるわ。」、お姉ちゃんの時に比べて、随分単調になった解説ですが、ともちゃんは絵の前に行けた時はしっかりと絵を見ていました。ミュージアムショップでお姉ちゃんと合流し、ポストカードを選びました。「モネの絵」、「ジャングルの絵」、「大きい絵」と見せて、ともちゃんに選んで貰いました。お姉ちゃんの薦めもあって、笑顔で選んだのは「モネの絵」でした。

 ミルクの注入は近くのファミリーレストランで行うつもりでした。京都の旧市街の外周をぐるりと回ったのですが、走っても走ってもファミレスは見つからず、結局帰り道の国道171号線に戻って見つけることにしました。やっと見つけて駐車場に入ったのに、店が2階で階段しかなくて出てきたところもあります。「あっ、あそこにステーキ屋さん」、お姉ちゃんとお母さんが目を光らせて、ようやく見つけました。大人数用の大きなテーブルに案内されて、ゆったりとテーブルを使って準備をして、ミルクの注入をするともちゃんはご機嫌で、食器の当たる音を聞いてもギャハギャハ笑い転げていました。帰ってから、ともちゃんの身体からもステーキのにおいがしていました。

 ジンマシンの方は、帰ってからも、夕方に6個出ていました。でも、ともちゃんは満足そうで元気にしていました。翌日は休養日でしたが、夕方に11個出ています。ともちゃんに変りはありません。翌々日、朝2個発見しましたが、1時間位で消えました。ジンマシンのことは一応気にしながらも、お祖母ちゃんの家に行きました。お祖母ちゃんの家には、お姉ちゃんが昨日から泊りに行っており、ともちゃんも合流しました。お祖父ちゃんの仏壇を拝んで、ミルクの注入をして、お盆のひとときをのんびりと過ごし、お昼過ぎにはお姉ちゃんも一緒に帰りました。久しぶりのお祖母ちゃんの家でも、ともちゃんはたくさんの笑顔を振りまいていました。ジンマシンはその後もポツポツ出たりしていましたが、その翌日からは出ていません。

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2007年9月28日(金)

夏休みを絶好調で過したともちゃんは、元気で2学期を迎えました。2学期に入ると、すぐに運動会の練習が始ります。学校生活最後の運動会になるので、ともちゃんに十分に楽しんで欲しいと思いました。それで、訪問学級ではなく、なるべく登校してみんなと一緒に練習させてあげたいと思いました。ともちゃんの出場種目は「おばけつかい」と毎年恒例の「旅するシンボル-2人でドン-」です。どちらもまんべんなく練習できるようにと、先生とお母さんが相談してそれぞれの練習日に合せた登校予定日を決めました。9月は3連休が2回もあるのですが、家からのお出かけは控えて、登校することを優先します。

 最初は、ともちゃんは元気に登校していましたが、しばらくするとまだまだ猛暑が続いているというのに、痰が多くなってきました。と思っていると、今度はけいれん発作が多くなってきて、昼間もウトウト眠ることが多くなってきました。ともちゃんの身体は季節の変り目を感じているようです。ダイアップ座薬を使うこともあったので、ここは潔く方針転換しました。運動会本番を楽しめるように、それまでは訪問中心でマイパースでゆったりと過すことにしました。先生から、運動会の演技「おばけつかい」の歌が順番に入ったCDを頂きました。ともちゃんがしっかり覚醒している時にかけると、とても楽しそうに笑って、声も出していました。やる気は満々です。

 「おばけつかい」は重複重度障害児クラス(ともちゃんのような重症心身障害児も含む)1組と2組の演技です。お化けたちが住んでいる家に引越してきたお爺さんを驚かせようとするお化けたちですが、お爺さんは全く怖がることはなく、逆に掃除、炊事、洗濯、風呂沸かしの用事を次々に言いつけられてしまうというお話です。お爺さんはS先生で、生徒たちはそれぞれ傘お化け、一つめお嬢、火の玉お嬢、ろくろ首、大入道になります。ともちゃんはKtちゃんと一緒に傘お化けです。傘お化けはお爺さんに家の掃除を言いつかり、すす払いやハタキをかけて掃除をします。 

 「旅するシンボル-2人でドン-」は高等部全体の競技です。障害の程度や種類を越えたペアでチームのシンボルを運んで、シンボルをバトンの代りにしてリレーをします。ともちゃんの養護学校の高等部では、週に一度、運動会とは関係なく「チーム活動」という授業があります。クラスは障害の状態が似た生徒で編成されているのですが、チームでは異なる障害を持つクラスがいくつか集って一つのチームを作り、チームの歌を作ったり、シンボルを決めたり、助け合って活動します。高等部全体で、赤、青、黄の3つのチームに分かれます。このチーム活動が母体となって、運動会間際には小・中学部がそれぞれのチームに分かれて入って、3チーム対抗の運動会を行うのです。

 そういう訳で、「旅するシンボル」は日頃のチーム活動の成果を示す大切な競技なのです。ともちゃんは今年は赤チームで、ペアはU君。今年の赤チームのシンボルは太陽です。前のペアが転がした張りぼての丸い太陽をU君が拾って、トラック半周先で待つともちゃんに届けてくれます。ともちゃんは膝の上にシンボルを乗せて、先生とU君に車椅子を押してもらい、トラックを半周移動してシンボルを転がす台形の台の前まで行きます。そして両側に紐の付いた板の前にシンボルを置き、2人が台の両側からそれぞれ紐の片方ずつを持って、協力してシンボルをズルズルと坂の上まで引き上げます。坂の上まで上がったシンボルは下り坂を転がって、次のペアの人に拾ってもらいます。

 運動会の前日、ともちゃんは家でCDを聞き、イメージトレーニングをしていました。お母さんは、電話で先生と当日の打合せをしています。その時、「『おばけつかい』の衣装はできれば上下黒っぽいものがいいのですけれど・・・」と、ともちゃんが普段は黒っぽい服を着ていないことを知っておられる先生が、申し訳なさそうに切り出されました。「はい黒い服ありますよ。着ていきます。」お母さんはうれしそうに答えました。そうです。実はともちゃんは、お姉ちゃんがお土産に買ってくれたロックバンドのライブTシャツ、黒地に白い髑髏の描かれたTシャツを持っています。でもともちゃんの服装の好みとは違うので、普段は着られません。それで、文化祭の海賊か何かの役で着ようと、大切に取っていたのです。髑髏Tシャツの傘お化け、何だか怖そうでぴったりです。

 当日のプログラムでは、「旅するシンボル」が昼休み直前の種目で、その2つ前が「おばけつかい」と、ともちゃんの出場種目が午前の最後に集中しています。去年は開会式から参加したのですが、今年は少しでも家でゆっくり休んでいた方がいいだろうという配慮で、「おばけつかい」に間に合うように登校しました。まずは、みんなが休憩をしている教室に入って気分を盛上げます。教室には、傘お化けの番傘も用意されていました。応援合戦(午後からの種目なのでともちゃんは出場しないのですが)用の雷さんの角や太陽のミニ風船も用意されていました。参加できないともちゃんは、応援の歌を聞きながら角を着けて、記念撮影をしました。ともちゃん仕様の太陽キティちゃん(キティちゃんが太陽を抱いている)のミニ風船も貰いました。

 ともちゃんが、いつもは日傘を取付けている車椅子の傘スタンドにピンクの番傘を取付けて、さあ本番です。古い屋敷の後ろにお化けたちは隠れて待っているのですが、全員は隠れきれません。屋敷の横からは、ニコニコ楽しそうに笑っているともちゃんの姿が見えています。足取りも軽やかにお爺さんが登場しました。お化けたちは、みんなでドーッと車椅子で走り回って、怖がらせようと駆け抜けていきました。でも、お爺さんは全く怖がらず、それどころか一番先に名前を呼ばれてしまいました。「おーい、傘お化けのKtお化けと、ともお化け、掃除をしておくれ。」。

 車椅子を押す先生が竹製のすす払いとハタキを持って、再登場です。ともちゃんは「お化けだゾー」の手(筋緊張で自然にできる手の形。腕をWに曲げ、手首を下に垂らしているので、小さい頃からよく家族に「お化けだゾー」の手やなあと言われていました。)も決っています。Ktちゃんお化けとすす払いを合せてパタパタする時も、古い屋敷をパタパタ掃除する時も、お爺さんに絡みに行く時も、ともちゃんはずっとおすましでキョロキョロ見回していたのに、掃除が終って引き上げてくる時は、お爺さんを背にして大きな口を開けて笑っていました。

 掃除で身体が汚れたお爺さんは、ろくろ首にお風呂を沸かして貰い、身体も洗って貰いました。きれいになってお腹が空いたお爺さんは、今度は火の玉お嬢と大入道に食事の用意をして貰いました。食事の時に服を汚してしまったお爺さんは、一つ目お嬢を呼びつけて、洗濯をして貰いました。なかなかたくましいお爺さんです。「みんなこれからもワシを助けておくれ」というお爺さんにお化けたちは「エエー!!」と言いつつも、和やかにフィナーレになりました。テーマソングに乗って、みんなで車椅子で駆け回りました。

 次の「旅するシンボル」では、ともちゃんの日傘をお化けの番傘からいつものキティちゃん日傘に戻して出場しました。ともちゃんのペアは第2走者です。Kzちゃんペアが転がしたシンボルの太陽をU君が拾って、ともちゃんが待つスタート地点まで届けてくれました。ともちゃんはシンボルを貰って、うれしそうにニコニコしています。練習の時は、U君もともちゃんもちょっと恥ずかしくて照れていたのですが、今日はペアの息もぴったりです。「旅するシンボル」はリレーですが、ともちゃん達1、2組の出場する第1部は競走ではありません。ゆっくりと、落着いてシンボルを運び、ともちゃんもしっかりとシンボルを見つめながら、シンボルをうまく坂の上まで引き上げて、転がしました。

 2組の第1部が終ると、第2部では競走になります。シンボルをソリに乗せて引張る、もっこに乗せて運ぶ、シンボルに付いたひもを左右から二人で握って全力疾走する、と迫力のある競合いが繰広げられます。でも、いつもよりミルクの時間が遅くなっているともちゃんは、教室に戻ってミルクの注入をしました。その後みんなも戻ってきて、一緒にお弁当を食べました。ともちゃん達が昼食をとっている間に第2部は白熱の内に終りました。残念ながら、今年は赤チームは3位でした。

 ミルクが終って、さあまだこれから一頑張りするぞとやる気満々のともちゃんですが、無理は禁物なのでいつも通りに帰ります。お父さんの運転する車でお母さんに抱っこされて、先生に見送られたともちゃんは気持ちを切替えて、楽しかった運動会を振返っています。お母さんに今日のことをたくさん誉めて貰いました。「ともちゃん、お化けが掃除に呼ばれた時はお爺さんを怖がらせないとダメやと思って、わざと笑わんかったん? それで、お爺さんに背を向けてから、笑ってたん?」、「ハハーン」、「すごいなー」。夕方、運動会の様子を聞いたお姉ちゃんから、同じ質問をされた時も「ハン!」自慢げにニコニコ笑って答えていました。さすが、ともちゃん、演技派です。

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2007年10月28日(日)

 鼻腔から胃に通したチューブで主に栄養を摂っているともちゃんですが、ペースト状にした食物なら口から食べることもできます。食物の味を楽しむことと、口から食べるという機能をずっと持続させることのために、毎日口からも食事を摂っています。けれど、ともちゃんには強度の食物アレルギーがあって、食べられる食材や調理法が限定されるため、いつもは4種類の野菜の煮物とおかゆをミキサーにかけたものを順番に食べています。

 ともちゃんがまだ小学部の頃、学校で秋の味覚について話していた時のことです。先生から「ともちゃんはアレルギーがあるので、食べられない食材が多いけれど、松茸は食べられるんじゃないですか?」と尋ねられました。キノコ類がアレルゲンになるかもしれないということは聞いたことがないし、「はい、食べられると思いますよ。食べたことないし、(アレルゲンになるか)調べたこともないけど。」、「ともちゃん、よかったなあ。今度、松茸食べさせてもらい。」。でも、松茸はすごく高いし、その割に栄養もない贅沢品だと思っていたお母さんは、このことはそのまま封印をして忘れることにしました。

 先日、お母さんが買物に行っている間、ともちゃんはお父さん、お姉ちゃんと一緒にテレビを見ていました。お母さんが戻ると、お姉ちゃんが「ともちゃんが、松茸食べたいって言ったはるわ。なあー。」、ともちゃんは「ハハハーン」とニコニコ顔です。テレビの料理番組で松茸たっぷりの松茸ご飯をやっていて、どうやら3人で「おいしそうやなあ、食べたいなあ。」と話していたようでした。松茸は贅沢品だと思っていたお母さんですが、ともちゃんが食べてみたいと思ったのなら、買ってみんなで食べるのも楽しいかもしれないなと思いました。

 ともちゃんが食べるものですから、「出所がしっかりした国産松茸がいい。」とお母さんは気合を入れて、京都駅前のデパートまで行って宮城産の松茸を買ってきました。ごくごく小さいものと、傷があって半分に切取られたものの入ったパック、国産で一番安いパックは金弐千円也です。まずは、ともちゃんにも香りをかいで貰いましたが、特に反応はありませんでした。その後、薄くスライスされた松茸は、昆布で出汁を取ったお吸物にしました。松茸はスライスすると一段と香りが強くなりました。

 他の家族はこのままお吸物として食べますが、ともちゃんには、お粥と松茸のお吸物(みつば入り)と刻み海苔(味付けでないもの)を一緒にミキサーにかけてペースト状にしました。見た目は黒くて、ちょっと不気味なペーストですが、ちゃんと松茸の香りもしています。ともちゃん仕様の秋の味覚です。ともちゃんはお父さんに食べさせてもらいました。ムシャムシャとスムーズに口を開けて、しっかりと食べていました。「良かった」、ともちゃんの好みの味付けだったようです。たまには、こうして季節感をみんなで味わうのもいいなあとお母さんは思いました。

 松茸の次は栗です。昨日、お母さんは近くのスーパーで大粒の立派な丹波栗を買ってきました。今日は、栗を皮ごとゆでて、ともちゃん以外の家族はそのまま2つに切って、中身をスプーンですくって食べます。ともちゃんは、スプーンですくった栗の実をお粥と一緒にミキサーにかけて、栗お粥ペーストにしました。小さい頃、ともちゃんは何度か栗を食べたことはあります。その時は、「栗」を意識して欲しいと思って、ゆでた栗をすり鉢でつぶして、ごく少しの牛乳で練ってペーストにしたのですが、サツマイモに比べてパサパサしていて、ともちゃんはそれぼど好きそうではありませんでした。

 さて、今日の栗お粥ペースト。一見すると、ともちゃんがいつも食べているサツマイモお粥ペーストと区別がつきません。ともちゃんは、食べにくそうでも、特に好きという訳でもなく、いつも通り普通に食べ終えました。「ともちゃん、今日食べたんは、いつものおイモと味がちょっと違ったん、分かる? 今日のは栗やってんで。」と尋ねるお姉ちゃんに、ともちゃんは「ハン」と、うれしそうに答えていました。

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