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30日(月)
「交流のひろば」
30日(水)
「お祝いお茶会」
例年3年生が劇の主役を務めるのですが、ともちゃんの属する1グループ(1組と2組、重症心身障害児を含む重複重度のグループ)では、今年は9人中6人が3年生です。しかも5人が女の子。お姫様役をさせてあげたくても、これではお話が成立ちません。そこで先生が、全員が舞台に出ずっぱりになるお話を考えて下さいました。3年生は、3人ずつ分れて海賊と山賊に扮します。他のキャストとしては、1、2年生の女の子2人が妹分の山賊に、1年生の男の子が宝物を守る宝物王子になります。
ストーリーはこうです。宝物を探し求めている海賊と山賊が出くわしてしまい、「自分たちが一番強い、宝物は自分たちの物だ。」と主張して、攻撃を仕掛けたり、ダンス対決をしたりします。その中で、互いに仲間に対する優しさを示す姿を認めたりしながら「なーんだ、同じじゃねーか。」と、一緒に宝物を探しに行くことになります。さて、宝物のもとにたどり着いたとき、宝箱の中に入っていたのは「宝物はここに」と書かれた巻物。そう、「宝物は金貨や宝石ではなく、助け合うことができる友達だよ、海賊にも山賊にもいるんだよ。」というお話です。最後は他のクラスの友達も舞台に上がり、みんなでコブクロの「エール」を歌います。
ともちゃんは、本番までに予行も含めて2度舞台で練習をしました。最初は舞台に上がっただけで嬉しくて、先生方がまだ打合せしていて演劇が始っていないのに、ニコニコ笑っていました。予行の時は、海賊の衣装も着けました。海賊の衣装は、3人それぞれに色が違う横縞のTシャツと、お揃いの紫色のターバンです。Tシャツは、この時期着ぶくれた上からでも着られるようにと、大人用の大きなTシャツに、カラーのガムテープで派手な縞柄が付けてあります。色は敢て各自がいつも着ている服とは違う色をということで、ともちゃんはメロングリーンのシャツに濃い緑色の縞ですが、ともちゃんのピンク系の服装や車椅子にきれいに映えていました。
海のシーンから始って、幕が上がると船に乗った海賊達が舞台にいます。練習の時、ともちゃんが先生に抱っこされて座っていた台車は、予行ではきれいに装飾されて、すっかり「海賊船」になっていました。海賊船に乗ったともちゃんは、生き生きとした笑顔で目を輝かせて、劇を楽しんでいました。海賊船はゆらゆらと前後に揺らして貰ったり、見上げた魚の形の雲の中から風船がたくさん落ちてきたり、楽しい仕掛けがあります。舞台の下に歩行器や車椅子で現れた山賊達にも、鳥の形の雲の中からたくさんの風船が落ちてきました。
海賊も宝物を探して宝島を目指します。山賊も宝物を探して宝島を目指して、車椅子に乗換えてスロープを上り、舞台に出てきました。険しい道(スロープ)を上れない妹分にはロープを渡して、引張り上げてやるやさしい山賊です。舞台の上で、海賊と山賊が出会ってしまって、戦いが始りました。海賊の攻撃は「大波食らえ~~」。黒子の先生が、波に見立てた大きな布をフワリフワリと上下させます。頭の上からフワリと布をかぶせて貰い、海賊は舞台の下に降りました。山賊の攻撃は「岩石落し」。舞台の上から、岩石に見立てた大きな柔らかいボールを下に落しました。
ダンス対決では、それぞれの生徒の車椅子の真横で黒子の先生が足を高く上げて(上がらない人もいますが)踊った後にポーズを決めます。終始期待を込めた笑顔で演じていたともちゃんは、この時は「先生、頑張ってー!」とばかりに、大きく口を開けてケラケラ笑っていました。この後、再び海賊達は舞台に上がって、山賊と海賊の双方で宝物王子を囲みます。宝箱の中を覗かせて貰って、ともちゃんもニコニコしていました。予行では他のクラスからの応援はありませんでしたが、みんなで歌を歌い、一人ずつ紹介があって、ともちゃんも名前を呼んで貰って、楽しい予行は終りました。
さて、今日は本番。昨日は寝る時間が遅くなっていたのに、ともちゃんは張切って早く起きてきました。言葉やスケジュールを理解していないはずのともちゃんなのに、行事がある時はちゃんと分っているようでいつも不思議に思うのですが、朝食も早いペースで食べました。ともちゃんの出演時間までに余裕を持って登校しました。朝からの気合が教室に入ってホッとしたのか、待っている間にウトウトと眠そうにしていました。体育館に移動していよいよ出番です。ともちゃん達は舞台の上で先生に抱っこされ、海賊船に乗って幕が上がるのを待っています。
観客席では、お父さんがビデオカメラを回し、お母さんがカメラのシャッターチャンスを窺っています。幕が上がりました。おや、先生に抱っこされたともちゃんは、たちまち眠そうな目になってきました。フワーッと大きなあくびも連発しています。先生に触られたりするので何とか眠らずに保っていますが、車椅子に乗換えると劇中だというのに大胆にもウトウトしています。お父さんも、お母さんも、ともちゃんの今朝の様子を知っているので、思わず笑みがこぼれました。ともちゃんは、眠くても外からの(楽しい)刺激にはピリピリと神経が興奮して、眠れなくてしんどくなるタイプの子供だったのですが、今日はよほど眠かったのでしょう。
海賊が山賊と出会って「宝物は俺たち、海賊の物だ!」という台詞のところで、フッと目を覚ましてニヤニヤ笑っていました。が、それも束の間、またウトウトしています。舞台の下に降りてダンス対決になると、「それじゃあ、先生、後はダンスお願いします・・・」と言わんばかりに、踊っておられる先生の横でクタッと寝入っていました。それからも、ずっとウトウトしていましたが、最後、コブクロの歌のところでみんなが手拍子をとると、ともちゃんはフッと薄目を開けました。
スポットライトが当って、周りで手拍子が聞こえます。アレッとキョロキョロ様子を窺うと、「ワッ舞台に立ってるやん。みんな歌ってるし、賑やかやな。注目されてる。ワーイ文化祭や、楽しいなー!!」、しっかりと覚醒したともちゃんは、劇の最後で満面の笑顔を見せてくれました。劇が終って、衣装のままでみんなで記念写真を撮っていた時もケラケラ笑い出し、目を輝かせていました。「これから劇に出るん? もう終っちゃったで。」、「ハハン」、「楽しかった?」、「ハハン」、ともちゃんはこの後教室でミルクの注入を行ったのですが、ずっとご機嫌で満足そうでした。
家に帰ってからも、「分りやすい子供やなあ、ともちゃん」、「出演中に寝るなんて、太っ腹やなあ」とともちゃんは話題の中心になり、笑っていました。そして「しんどい時によく寝たから、大事なところでちゃんと文化祭を楽しめてよかったやんなあ。賢いなあ。」と、何をしても誉めてもらえる得なともちゃんでした。ともちゃんが文化祭を楽しめたことが、何よりでした。学校生活最後の文化祭、「太っ腹な海賊ともちゃん」に拍手喝采です。
にぎやかな行事が大好きなともちゃんは、毎年参加するのを楽しみにしています。でも、文化祭の劇に出演して通常の登校よりも刺激が多いのに、1日だけおいての行事なので、ともちゃんが疲れていないか慎重に判断します。去年は参加できませんでしたが、今年は元気いっぱいで参加する気満々です。天候も、ともちゃんの味方をしてくれました。晴天なのはもちろん、11月も半ばを過ぎたとは思えないくらい、ポカポカした小春日和でした。
お父さんの運転する車で登校すると、ちょうど舞台発表をやっていました。今回の交流のひろばに参加するにあたって、お母さんと先生は「後半の1、2組の活動テーマに、ミルクの注入をしながら参加できたら(見学できたら)いいですね。」と話していました。けれど、せっかく早く来られたのですから、舞台発表を鑑賞しない手はありません。既にクラスのみんなが集って見ている体育館に、ともちゃんも向いました。ここで気になるのが、ともちゃんが音に過敏なことです。体育館一杯に響くライブの大音量に、ともちゃんがびっくりしないか注意しながら覗いてみました。
舞台ではアコースティックギターのバンドのライブをやっていました。これならともちゃんも大丈夫かな。「途中でともちゃんが音にびっくりするようなら、体育館を出て教室でゆっくりしましょう。」と先生とお母さんは話しながら、体育館の中へ入りました。ともちゃんは驚くこともなく、穏やかに聞いています。次のエレキギターを使ったロックバンドも、一度ドラムの音で少しビクッとしたものの、その後は全然平気でご機嫌でした。ブラスバンドの演奏と野球部の舞台パフォーマンス、最後は養護学校の劇「美女と野獣」と出し物は続き、ともちゃんは最後までずっと楽しそうに見ていました。最初は後ろの隅の方で見ていたともちゃんでしたが、だんだんと友達のいる前の方の席まで進出していました。
後半のテーマ別の分科会ですが、1、2組(重度重複学級)の活動は文化祭で演じた「僕たちのウエストサイド物語」を使った「劇遊び」です。「海賊チーム」と「山賊チーム」に分かれて、様々な対決をします。歌を歌って、みんなと順番に握手をした後、ともちゃん用に作ってもらった席(みんなは車椅子)で先生に抱っこしてもらって、ミルクの注入を始めようとしました。けれど、この時始まろうとしていたのが、「(ともちゃんが劇中で乗った)海賊船に乗ろう」でした。海賊達が乗った時は山賊の高校生が船を引いて動かしてくれます。
「お母さん、どうします? 乗ってから注入を始めますか? それとも、今すぐ始めますか?」、先生の問いかけに「時間も経っているので、今から注入を始めようと思います。」とお母さんが答えた途端、ともちゃんが「ええっ、そんなの困る!」と言わんばかりの顔で、お母さんの方を振向きました。「海賊船に乗せてやって下さい。」、ともちゃんも先生に抱っこされてゆらりゆらりと大満足でした。その後は、ミルクの注入をしながら腕相撲や指相撲、椅子取りゲームの対決を笑顔を浮かべて見ていました。ともちゃんとペアになった高校生K君は、椅子取りゲームではともちゃんの分も頑張ってくれて、優勝しました。
中でもともちゃんが大笑いしていたのは、車椅子競走でした。上手に車椅子を操作する2組のTちゃんと高校生の車椅子競走です。「ともちゃんのところがゴールです。」ということで、ともちゃんを目指して競走してくれるので、ともちゃんは大喜びで、途中のやり取りを聞いてギャハギャハ笑っていました。今日は1日「高校生」を満喫して、高校生活最後の年に、また一つ楽しい思い出ができました。
次の訪問学級の時に、社会見学に行けなかったともちゃんにお土産を持ってきて頂きました。最初はキティちゃんのリース型クリスマスオーナメントです。ともちゃんの目の前に持ってきて見せて貰うと、キョロキョロと見回した後、口の端をキューッと上げてニヤリ。嬉しい気持ちが溢れてきました。そして、ギャハハハハと大きな口を開けて大笑いしていました。もう一つ、今度は光るスノーマンです。スイッチを入れると、中に配されている色んな色のLEDが光りながら回転するので、スノーマンの体の色が美しく変化します。ともちゃんは、目の前で移り変わる色を不思議そうに見ていました。すっかり気分はクリスマス。これを機会に、ともちゃんの家でもツリーを出しました。
冬籠りの季節の外出でも、校外よりは学校に行く方がハードルは圧倒的に低いです。それで、12月13日に学校である親子クリスマス会に向けて、今度こそはと体調を整えているともちゃんです。今年のクリスマス会では、ドレスを着ての舞踏会もあるということで、一段と楽しみにしていました。それを聞いたお姉ちゃんが、キラキラ光る髪飾りをいくつも買ってきてくれました。並べて髪に着けてみると、ティアラのように華やかになりました。ともちゃんはもちろん、家族もともちゃんが髪飾りを着けて舞踏会に行くことを楽しみにしていました。けれども、気合いだけでは体調はコントロール仕切れません。
痰の分泌はさらに多くなって夜寝苦しく、その分昼間によく寝ています。吸引の回数も増えています。結局、クリスマス会当日も前夜の喘鳴がひどく、朝にはガクガク発作まであって、学校を休むことになってしまいました。学校に行けない日々が続いていますが、ともちゃんは訪問学級を楽しみに待っています。次の訪問学級では、キラキラの髪飾りをつけて、先生を待ちました。先生が来られた時から、ニコニコとご機嫌で、先生に髪飾りを誉めて貰うと、とてもうれしそうな笑顔になっていました。先生からクリスマス会の様子も聞きて、ともちゃんの分のプレゼントのツリーのオーナメントも貰いました。当日参加できなくて残念そうなともちゃんに、先生が「終業式にドレスを持ってきてあげましょう。」と言って下さいました。
さて、今日は終業式。訪問学級で終業式をしてもらいます。高等部主事の先生のお話を聞いて、通知表をもらいました。2学期の授業日数は合計27日。学校行事は、運動会も、文化祭も、交流のひろばも参加できました。すごいのは、11月の授業です。通院等もあって授業日数は6日でしたが、そのうちの5日が登校でした。学校生活最後の2学期、今年は残暑が厳しかったことも幸いして、登校も訪問も充実して過ごすことができました。式の後は、訪問クリスマス会です。担任の先生がサンタクロース、高等部主事の先生がトナカイに扮して、宝箱を持って登場です。宝箱の中には何が入っているのでしょうか。そおっと覗いてみると、ピンク色のドレスです。ドレスは、文化祭で、別のクラスの劇「美女と野獣」のために作られたものを借りてきて頂いたと聞きました。
ともちゃんに着せてもらいました。ピンクのドレスがよく似合って、キラキラの髪飾りもドレスにぴったりで、素敵です。さっそく撮影会が始まり、華やいだ雰囲気に、「ともちゃーん、笑ってやー。」とお母さんもついつい大きな声になってしまいます。このところの体調で、先生が来られた時に見せた笑顔が長くは続かず、トロトロしたり、ボーッとしたりしているともちゃんに覚醒を促しました。寒さに弱いともちゃんは、学校でのクリスマス会には参加できませんでしたが、代わりにこんなに楽しい終業式をしてもらいました。「訪問学級っていいなあー。」とつくづく感じているともちゃんです。
今日の訪問学級の授業は、その書初めでした。先生が来られた時からご機嫌なともちゃんは、「今日は書初めをします。」と聞いて、まるで言葉が分ったかのように嬉しそうにしています。朝の会でも張切っていて、名前を呼んで貰った時も、しっかりと声を出して返事をしました。高等部に入って毎年書初めをしてきましたが、不思議なことに書初めをする時はいつもすごく楽しそうでした。書初めは「漢字1文字」と「ともちゃんが自由に書く字」の2枚を書きます。
昨日、1、2組の友達は、ともちゃんより先に授業で書初めをやりました。みんなの書いた文字は、それぞれの思いを込めて、「翔」「わ」「楽」「二」「笑」「山」「仲」です。それらと重ならないように、ともちゃんもお母さんと何の字を書くか相談しました。ともちゃんは、1年生の時は楽しい人生、楽しい学校生活が送れますようにと「楽」、2年生の時は残り少ない学校生活が充実したものでありますように、大いに学ぶよと「学」でした。
去年、「これは来年かな」と言っていたのが「外」。ともちゃんは外出が大好きだし、今年は学校の外の世界に出ます。今日お母さんが思いついたのが「日」。「残り少ない学校生活を日々楽しむ、元気なときは日の光の下に出る。」という意味です。ともちゃんの名前の一字でもあり、去年の文化祭のテーマ「世界はなんて美しい」にもあった「美」も候補です。お母さんが賑やかにともちゃんに話しかけると、ともちゃんは一つ一つタイミングよく「アハハン」と笑顔で答えてくれていました。「でも、今年はもっとストレートに『快』かなあ。」。「ギャハハハハ」、ともちゃんもこっちの方が、より気に入ったようです。「愉快」、「痛快」、「豪快」、「壮快」、「快適」、体調を崩しても「快方」、「全快」の「快」です。
ともちゃんは、先生に抱っこしてもらい、墨汁を含ませた筆を持たせてもらうと、ニャハニャハと嬉しそうにしています。最初に「快」を書きます。先生に筆と一緒に手を握ってもらって、ゆっくりと大きく動かしました。ともちゃんに無理のない様に手を動かしてもらっていますが、どうしてもともちゃんの手に力が入っていまい、緊張した面持ちに変りました。立派な作品の出来上りです。書き終って、ともちゃんの目の前に持っていくと、目を大きく見開いてキョロキョロ見渡して眺めていました。
次は、ともちゃんが自由に書きます。お母さんが紙を立てかけて持って、先生はともちゃんの手から筆が落ちないようにだけ支えて、ともちゃんが好きに筆を動かします。「好きに」といっても重い脳性麻痺のある身体なので、自由自在に書けるわけではありません。少し腕を伸ばしてあげると、縮める時に腕が少し動きます。こちらの方は、ともちゃんは終始リラックスして、ニコニコと楽しそうに笑顔を浮かべながら書いていました。ヒョロヒョロッと軽やかな、まさにともちゃんなりの「快」の表現ができました。
でもそれよりも、何より一番喜んでいるのが、友達大好き、お出かけ大好き、楽しいこと大好きなともちゃん本人でしょう。卒業しても、新しい施設、新しい集団の中で、先輩たちや職員の方々と、また新しいワクワクするような日々が待っています。きっと期待に胸を躍らせていることでしょう。そんなともちゃんに先生が「水曜日には、進路決定おめでとうの『お祝いお茶会』をしましょう。」とおっしゃいました。
学校では、最近1、2組合同で新春のお茶会をやったそうです。ともちゃんにも、出張お茶会をしてあげようということになった時、ちょうど進路が決りました。そこで「お祝いお茶会」。お香に火をつけて部屋の隅に置くと、いい香りが充満して、ともちゃんの元に届きます。お琴の演奏のテープを流して、雰囲気を盛上げます。聞き慣れない音楽に、ともちゃんはちょっと不思議そう。お茶を点てる先生も、いただくともちゃんも着物を着て、本格的なお茶会です。学校から、ともちゃん用にピンクの着物とボタン色の帯を持ってきていただきました。
ともちゃんがリハビリの先生に抱っこされている間に、お茶を点てていただく担任の先生が洋服の上から上下分かれた着物を素早く着用されました。次はともちゃんの番です。洋服の上から、するすると着せていただきましたが、襟元から下の洋服が目立つこともなく、出来上った形に作られた帯も付けてもらって、とてもきれいに仕上りました。お母さんは大感激です。ピンクが本当によく似合っています。髪の毛もパールの飾りのついたゴムでお団子に括ってもらったともちゃんは、いつもと違う様子にちょっと緊張気味です。
みんなは甘い和菓子を食べてから抹茶を味わったので、ともちゃんもと和三盆だけでできたお菓子を持ってきていただきました。砂糖はアレルゲンではないのですが、以前に原材料にはアレルゲンは入っていないアイスクリームを食べて、食物アレルギーの発作が起ったことがあります。お菓子の製造過程でアレルゲンになる食材が混入しているかもしれないので、懐紙に載せてともちゃんは目で頂きました。代りに、口から濃いめの砂糖水をスポイドでポチョポチョと落しました。
抹茶を入れてお湯を注ぎ、カシャカシャカシャと茶筅で素早くかき混ぜて泡立てて貰うと、お茶のいい香りが漂ってきました。ともちゃんの目の前に茶碗を持ってきて、覗かせて貰います。「どうぞ。」、「お手前頂戴いたします。」ということで、スポイドで抹茶を口の中に落していただきました。ポトポトポト・・・アムアムアムと味わって、「ん! 思っていたほど苦くないよ。」という表情をしていました。「結構なお点前でした。」。お茶会の後は、お母さんも着物を借りて撮影会。改めて着物姿を誉めて貰ったともちゃんは、お茶のお作法の話を聞きながら、にっこりと満足そうでした。
今年度は猛暑だったのに冬の寒さも厳しくて、この土曜、日曜は珍しい大雪でした。この日も朝から雪が降っていました。久しぶりの登校に忘れ物がないようにと周到に準備をしてきたお母さんは、ともちゃんの人生初の雪の日の外出になるのかと一段と気を引締めながら、期待もしていました。けれども、朝遅く起きてきたともちゃんの心拍数は毎分140回台と高く、元気がありません。抱っこしたともちゃんの体が熱く感じられて、体温を測ると37.9度でした。しばらく様子を見ていましたが、38.3度まで上がって心拍数も落着きだしました。
1週間くらい前から、ともちゃんは黄色い痰が出ていたり、くしゃみが多かったり、口を大きく開けると見える右側の肥大した扁桃腺も少し赤みを帯びていたり、白っぽかったりしていたので、風邪気味だったようです。ここまで熱を出さずに持ちこたえてきたのでしょう。残念ですが、学校へ行くのは諦めて、家でゆっくりと過ごしました。翌日まだ熱が高ければ、病院へ行かなければと覚悟しましたが、幸い1日で熱は下がりました。大きくなって、少しは体力もついてきた証かもしれません。
ともちゃんは、登校でも訪問でも授業を受けた日には、カレンダーのマス目に区切られた台紙にシールを貼っています。3学期になって、卒業までの残り少ない学校生活を今まで以上に1日、1日大切に送っています。基本的には月、水、金曜日に来てもらっている訪問学級ですが、幸い体調が大崩れしていないことから、1月のお休みは始業式の1日だけでした。2月も、25日までの訪問学級は休んでいません。ともちゃんの貼ったキラキラのキノコのシールが1マスごとに増えていくノートですが、白い余白部分が減っていくたびに、残りの授業日数を数えて寂しくなります。
卒業式を迎えるに当たっての準備も、着々と進行しています。まずは写真選びです。卒業式の後の祝賀会や、卒業生を送る会の時に、大きく写してみんなで卒業生の成長を改めて振返るための写真です。祝賀会では、就学前、小・中学部時代、高等部の3枚を、送る会では、就学前、小学部、中学部、高等部の4枚を今までに撮ったたくさんの写真の中から選びました。随分時間がかかってしまいましたが、その中でともちゃんの成長を改めて実感しました。あんなに細かったともちゃんが、しっかりと肉も付いて、大きく成長しました。
もう一つは、卒業式の衣装です。ともちゃんの衣装については、色々楽しく悩みました。袴にすることも考えたのですが、ともちゃんが慣れない格好でしんどくなってはいけないので、取止めました。最近ともちゃんは、お姉ちゃんが洋服を買ってくることに興味があるようです。それならと、お姉ちゃんが「ともちゃんに似合うキャミソールワンピースを買ってあげるわ。」と言ってくれました。ファッション誌を研究して、「ピンク系の小花プリントのがええんとちゃう。」、「このショップやったら京都にあるで。」とワンピースを買ってきてくれました。上着は以前家族みんなで買物に行った時、お父さんに買ってもらったモコモコの白いニットです。ピンク色のコサージュも買いました。
27日の訪問学級で、ともちゃんは卒業生を送る会をしてもらいました。卒業まで、授業日数はあと残り3日です。
明け方、ともちゃんの心拍を刻むパルスオキシメータの電子音が早くなってきて、両親は嫌な感じがしていました。ともちゃんが起きてくると、心拍数は毎分140回台になっていて、熱を測ると38.6℃でした。間違いであって欲しいと、食事中何度も体温測定をしましたが、熱は下がりませんでした。ともちゃん自身は特にぐったりとしているわけではありませんが、仕方なく卒業式に出席することは諦めました。卒業式に行く気満々だった家族はがっかりしていますが、一番くやしいのはともちゃん本人なので、ここはあっさりと何事もなかったように普段の生活に切替えました。
卒業式が終った後に、卒業式の記念品やお花、ともちゃんの作品、祝賀会で家族が食べるはずだったお弁当などを先生が自宅まで届けて下さることになりました。その頃、ともちゃんは熱もほぼ平熱に下がり、機嫌もよく、普段通りに過ごしていました。ともちゃんは卒業式に参加できなくて残念に思っているだろうから、せめて先生が来られた時は、卒業式の衣装を着てお迎えすることにしました。担任の先生とリハビリの先生が2人で来て下さって、ドレスアップしたともちゃんは、笑顔で一緒に写真に収まりました。
この写真が、ともちゃんの卒業式の写真になると思っていたところ、先生は朗報を持ってきて下さいました。卒業証書だけは、校長先生が直接ともちゃんに手渡しして下さるというのです。ともちゃんのクラス1組(全員3年生の女子)では、在校中に4人の生徒全員と保護者が一同に会する機会がなかったので(ともちゃんも、よくお休みしたし)、春休み中に一度みんな揃って食事会をしましょうという話が持ち上がっていて、小中学部の卒業式の後、教室をお借りすることになっていました。ちょうどその時に、クラスメイトの前でともちゃんは卒業証書を貰えるというのです。願ってもない、ありがたいお話に感謝しました。
先月の「卒業生を送る会」といい、今回の卒業式といい、その日に限って1日だけともちゃんは熱を出してしまいました。他の症状から見ても風邪だとは思いますが、それでもあまりのタイミングのよさに、家族のみんなはともちゃんが興奮して熱を出したのではないかという疑いをぬぐい切れずにいます。それで、今度こそはともちゃんが熱を出さないように注意するとともに、あまり騒ぎたてず、普通に登校する時のように接することにしました。果たして、ともちゃんはようやく元気で「卒業式の日」を迎えることができました。
穏やかな日差しの中、ともちゃんは髪飾りを付けて、おしゃれに着飾って登校しました。お母さんだけでななく、お姉ちゃんも同行してくれました。学校に行く途中の畑では、菜の花の黄色が眩しくて、ともちゃんが長い間冬ごもりをしていたこと、もうすっかり季節は春になっていることを認識させてくれました。学校の長い廊下を通ってともちゃんの教室に入りました。すでに登校している友達もいます。ともちゃんは、久しぶりの大好きな場所に笑顔がこぼれます。教室の中には、自分の居場所があるという安心感と、今日もきっと楽しいことがあるという期待感を持たせてくれる空気がしみ込んでいます。
ともちゃんの教室の一角には、車椅子で過ごす通常の床より一段高くなった畳のスペースがあって、普段はそこに布団を敷いて横になったり、ともちゃんは抱っこしてもらってミルクの注入をしたりしてします。卒業式を始めるに当たっては、その畳のスペースがシートで覆われ、卒業証書を受け取る壇になりました。お花が活けられた大きなバスケットも飾られています。壁には、ともちゃんとクラスメイト4人の名前と「卒業おめでとう」の文字が掲げられて、教室はすっかり卒業式の会場になりました。ともちゃんは、車椅子に座ったままヨイショッと壇上に上げて貰いました。校長先生も式服で臨んで下さっています。
お母さん、お姉ちゃん、クラスメイト、そのお母さんやお姉さん、そしてお世話になった先生方に見守られて、ニコニコしているともちゃんは校長先生に名前を呼ばれ、タイミング良く「ハーン」と返事をしました。そして、満面の笑顔で卒業証書を貰いました。大好きな学校生活の中で培った最高の笑顔です。校長先生が、ともちゃんに顔を近づけて祝辞を述べて下さると、ともちゃんも笑顔のまま、それに答えるように「アーアー、オーオー」と、大きな声で校長先生におしゃべりしていました。「アーアー」(私もな、もっと早く学校に来たかってんけど、熱出たから来られへんかってん。)、ともちゃんも、沸き上がる思いをいっぱい伝えたかったのでしょう。先生方や友達、たくさんの方々に関わってもらって育てられた、ともちゃんの人に向かう力です。図らずも、ともちゃんは学校生活でこんなに成長したよというところを卒業式で改めて見せてくれました。先生方からたくさんのお祝いと思い出の言葉を頂戴し、友達や先生から花束を貰って、とても暖かく感動的な卒業式は無事に終りました。
教室はいつもの教室に戻り、食事会に移りました。学校生活が終ってしまう寂しさはありますが、卒業生はみんな希望する進路に通園が決まり、それぞれに明るい表情で談笑しています。ともちゃんは、いつものようにみんなの横で先生に抱っこして貰って、学校生活最後のミルクの注入を行いました。教室で、友達の声や気配、学校のざわめきを感じながら行う注入は、登校時の楽しみの一つでもありました。注入の後は、デザートのイチゴをつぶして貰ったジュースも少し飲みました。時間を忘れて歓談していると、予約していた帰りの車が到着したという連絡を受け、あわただしく帰宅しました。保健室など、お世話になったお部屋にお礼の挨拶に伺わずに帰ってしまったことが、お母さんには心残りです。
家に帰ったともちゃんは、とても満足げにしています。「やっぱり学校は楽しいわ。また明日も、来週も、行こな。」と言わんばかりにニコニコして、お姉ちゃんやお母さんに話しかけています。「どうも、ともちゃん、学校を卒業したってこと分ってないみたいやなあ。」、「ともちゃん、学校卒業して今は春休みやで。学校はもう行かへんけど、4月になったら今度はH園に行くねんで。」、ともちゃんは、それでも今日の楽しさを噛みしめるようにニコニコしていました。ともちゃん、卒業おめでとう!!
ともちゃんは高等部からの転入だったので、この養護学校に馴染んで、楽しく過ごせるか心配でした。けれど、ともちゃんのペースで寄添って下さった先生方、楽しいオーラを教室に充満させて待っていてくれた友達のおかげで、ずっとこの学校で過ごしてきたように、のびのびと高等部生活を楽しむことができました。思えば、中3の早春、体験入学や入学試験にこの養護学校に来た時から、とても暖かく迎え入れてもらって、楽しく過ごさせて頂きました。ともちゃんも、この学校で自分を受け入れて貰えていることが分ったようでした。
訪問学級(登校もあり)に在籍したことも、ともちゃんの学校生活をより豊かにしてくれました。ちょっと体調が優れない時は、訪問学級や訓練訪問で学校の様子を聞きながら、登校への意欲を高めながら体調を整えました。ともちゃんは、両手一杯に教材を抱えて訪問して下さる先生をいつも楽しみに待っていました。見通しを持って体調を調整できたおかげで、行事にもたくさん参加でき、日帰りの修学旅行や宿泊学習など、新しい体験をいくつも積重ねることができました。クラスメイト達が、散歩でともちゃんの家に来てくれて、ともちゃんも一緒に近くの公園まで行って、そこで授業をやってもらったことも嬉しい思い出です。
今のともちゃんが学校が大好きで、積極的に学校生活を楽しめたのは、小中学部時代に大阪のMo養護学校で丁寧に接して頂き、ともちゃん自身が安心して学校での生活を送ることができたということが基盤になっていることは言うまでもありません。大阪のMo養護学校、今の京都のMu養護学校の皆様を始め、これまでともちゃんがお世話になったすべての方々に、ともちゃんが今日、元気に高等部を卒業したことをお知らせして、有意義な学校生活を送れたことに心から感謝したい気持ちで一杯です。これからともちゃんは、これまでに培った人生を楽しむ力で、社会人としてH園で、地域で、また楽しい経験を積重ねていきます。
H園には、学校に登校した時間帯に合せて10時半頃出発、1時帰宅(ちょっと遅刻、だいぶ早退)で通園するので、園の通園送迎車は利用せず、自主通園でH園の支援センターの送迎サービスを利用することにしました。学校に通っていた頃は、通学にはタクシーを利用していたため、ともちゃんを後部座席に寝転がらせて、お母さんが車椅子を折畳まなければなりませんでした。支援センターの車はリフト付きのミニバンなので、お母さんはともちゃんを抱っこしていれば車椅子をそのまま乗せてもらえるので、とても有難いです。
初通園の9日、ともちゃんは今日が大事な日であることをちゃんと知っているようで、朝食もしっかりと食べました。頑張って食べたという感じなので、その後、お母さんが後片付けをして通園の用意をする間に、少し眠ってくれるとちょうどいいと思っていました。最近、ともちゃんは朝食を食べるのに疲れると、食後にウトウトとよく眠ってるのです。けれども今日は、「眠ってなどいられないよ。」とばかりに、フレッシャーのともちゃんは眠りませんでした。お迎えの車の中では、1度痰の吸引をして、その後はニコニコしながら声を出していました。H園は、ともちゃんの家から養護学校とは反対方向に2km余の距離なので、すぐに到着しました。
H園は、高等部時代に体験実習で訪れたことがあります。ともちゃんを担当される職員さんは、入園するまでに何度か家に来て頂き、訪問学級や訓練訪問の様子も見てもらっていて、ともちゃんとも仲良しです。ともちゃんは、「大丈夫!」とフレンドリーな笑顔で園に入っていきました。他のグループの先輩方が活動されているところを「はじめまして。」と順番に挨拶に回った時は、表情を硬くして緊張していました。お母さんの希望で、園の建物の前で写真撮影をした時には、眩しくてちょっと眠くなったりしていました。けれど、Nちゃん先輩、Hちゃん先輩や、様子を見に来て頂いた進路の先生に久しぶりに再会し、ミルクの注入をしながら絵本を読んで貰っている時には、職員さんの会話にタイミング良く声を出して笑って、すっかりリラックスしているようでした。
学校時代と同じように、ミルクの注入が終るとともちゃんは帰宅します。支援センターの帰りの車は、お迎えの時とは少し座席配置の違うものが来ました。座席の位置が後方なので、ともちゃんが車椅子ごとリフトで車に乗込んだ後、車内で車椅子から降ろしてお母さんが抱っこすることにしました。思いがけなくリフト乗車を初体験することになったのですが、ともちゃんにはこれが楽しかったようで、ギャハギャハ笑いながら上がっていきました。家の前でリフトで降ろして貰った時も、やはり喜んでギャハギャハしていました。ともちゃんの社会人最初の大切な1日は、こうして無事に楽しく終りました。
18日(金)は園の歓迎会でした。この週は火曜日に通院しているので、通常の水曜の通園はお休みしました。そのため、この日が2度目の通園です。歓迎会のことはともちゃんにずっと話していて、ともちゃんもその雰囲気を感じて、楽しみにしていたようです。卒業式の衣装でドレスアップして、満面の笑顔で部屋に入りました。「じゃあ、歓迎会の会場に行きましょうか。」と、園の食堂に連れて行かれたともちゃんは、「ええっ、思っていたのと様子が違うよー。」と面食らった様子です。会場にぎっしりと並べられた椅子には人が一杯です。その中を通って一番前まで行って、みんなの前に出たともちゃんは、歓迎会の間中ずっとフガフガと荒い呼吸をして、緊張で固まっていました。
H園は、B型通園事業の他に、生活介護のデイセンターと就労支援のワークセンターを併せ持っています。ともちゃんと同期入園には、ワークセンターの方が3人おられました。新入園生は自己紹介をして、園に来ての抱負を述べます。ともちゃんも、お母さんやお姉ちゃんと相談して決めた言葉を職員さんに紹介して貰いましたが、ともちゃんには自分の紹介をして貰っているという余裕はありません。この後、先輩達が歌って踊る姿を見ても、本来なら賑やかなことは大好きなはずのともちゃんですが、圧倒されっぱなしでした。会の最後に、一番前からみんなの中を通って退場する時、お祝いに来て下さった高等部時代の担任の先生から「ともちゃん」と声をかけて貰って、ようやく笑顔が戻りました。
ともちゃんは、自分達のグループの部屋に戻るとすっかりリラックスして、いつも通りの豊かな表情に戻り、先ほどまでの緊張が嘘のようによく笑っていました。付添って頂いていた職員さんから「(歓迎会では、)ともちゃんの緊張が伝わって、私まで緊張しました。」と言われていました。思いがけず、大勢の前に出て緊張したともちゃん。これから多くの人と知合って、新しい環境にもゆっくりと馴染んで行くでしょう。また、ともちゃんの世界が広がります。
新名神は、路面のアスファルトがくっきりと黒くて、いかにも新しい感じがします。通行車両はそこそこ多くて、途切れることなく繋がって走っていますが、この区間で渋滞することはありませんでした。ずっと山の中の高いところを通っているので、両側には木々の緑が鮮やかに見える山並が連なっています。常葉樹の深い緑の中に落葉樹の若葉の柔らかな緑が混じるまだら模様の景色が、今年もまたお出かけシーズンが無事に始ったことの嬉しさと、車で遠出する楽しさを思い出させてくれます。
車に乗る時ははしゃいでいたともちゃんも、新名神でお母さんが「ここが初めて通る新名神やで。」と声をかけると、窓の外の景色を神妙に見ていました。新名神で最も快適だったのは、トンネルです。今までの暗いトンネル内をオレンジ色のライトが薄暗く照らしているというのではなく、皓々と明るい白いライトです。天井が高いのかトンネルが広く感じられ、遠くまで見通せるようで、閉塞感が全くありません。トンネルの入口近くだけ、白いライトとオレンジのライトが交互に点いていて、少し暗い感じなので、その後のトンネル内が余計に明るく感じるのかもしれません。
長いトンネルを抜けてすぐ、鳥が羽を広げたような形の橋を渡り、少し行ってもう一つトンネルを通ると、甲南PAに到着しました。車椅子用駐車スペースを探しながら進入して「あった。」と思ったところで、直前を行くワゴン車が目の前でバックして入庫してしまいました。お年寄りの団体のようで、もちろん車椅子の方も乗っておられます。ほんの一足違いでしたが、それは仕方がありません。通常の駐車場に止めましたが、比較的小規模な駐車場で、歩道などもゆったりと作られていて、今日の混雑程度では建物にたどり着くのに、それ程不便はありませんでした。
「甲南」は忍者の里・甲賀の南ということで、「忍者の里 甲南」という看板がありました。パーキングエリアなので、サービスエリアのようなレストランはありませんが、ここのスナックコーナーは、軽食だけではなく定食類も豊富です。ともちゃんのお姉ちゃんが食べたのは、野菜を巻いたあげ(巻物)が入っている「忍術うどん」という忍者の里メニューでした。スナックコーナーに入ると、ともちゃんは、またもや大喜び。「そうそう、遠くまでお出かけした時は、PAでミルクの注入するねんで。これがまた楽しいねん。」と思い出しているようでした。
スナックコーナーの席も通路もゆったりと配置されていて、ともちゃんがお父さんに抱っこしてもらって座りやすく、車椅子も置きやすかったです。新名神が開通しての初の連休で、お店の人達も張切っていて、活気があります。忍者の格好をしたおじさん(店の人)が席の前を通って行ったりするのですが、ともちゃんはニコニコ笑っていました。ミルクの注入が済むと、お土産を買います。ここは狸の置物で有名な信楽の近くでもあり、建物の前の広場には、信楽焼の露店も出ていました。そんな訳で、信楽キティちゃんがいるかなと探してみました。
売店の一角にキャラクターグッズが色々吊下げられていました。キティちゃん以外のキャラクター、例えばリロ&スティッチのスティッチや八右衛門(関西テレビのキャラクター)などのご当地ものもたくさん出ていました。これらのキャラクターには信楽タヌキのものがありましたが、キティちゃんは大阪や京都のものばかりでした。これは、関西観光に来た人が買い忘れたお土産を買うためのものです。信楽タヌキキューピーさんはちょっと可愛いかったのですが、この甲南PAオリジナルの忍者たぬきのキャラクター「こうたん」と「なんたん」がいたので、このキーホルダーを買いました。今後は彦根の「ひこにゃん」のように、その土地オリジナルのキャラも増えてくるのかもしれません。
PAの建物を出た後は敷地内を少し散策して、写真を撮ったら、また出発です。次の甲賀土山インターチェンジで高速を降りて、すぐに車をUターンさせ、再び今度は新名神の下り車線に乗りました。お馴染みの名神・草津PAまで、ともちゃんは車の中でお母さんに抱っこされて、少し昼寝をしました。草津PAでは、車の中でともちゃんの水分補給を行い、お母さんだけが買物に行くために車外に出ました。売店に入ったお母さんは、「今日は草津PAの商品が(売店も屋台も)全品2割引になります。」というアナウンスを聞いてびっくり。ともちゃんのお出かけ時、運転手役のお父さんの必需品、とっても酸っぱいレモン飴と、とっても刺激の強いミント飴をたくさん買込んできました。これから、たくさんお出かけしても大丈夫です。
快適だった新名神のドライブでした。京滋バイパスの渋滞がなければ、もっと早く甲南PAに着いたでしょう。今度は、道路が空いている時に、下りの甲南PAやその先の土山SA、信楽インターで降りて信楽の里なども訪ねてみましょう。そして、今年のともちゃんの夏休みの遠出目標は、新名神から伊勢自動車道に入り、お伊勢参りをすることです。お父さんからこの計画を聞かされて、お姉ちゃんに伊勢・志摩のガイドブックを買って貰ったともちゃんは、とても楽しみにしています。
ヘルパーさんは11時に来て頂くので、ヘルパーさん来訪の日は、朝ご飯を食べ終る時間がゆっくりでも構いません。通園する日は、一応9時頃に食べ終ることを目標にし、また通園可能な体調の目安にしています。その辺りも、養護学校の訪問学級の頃と同じです。痰が多い日、ともちゃんは途中で吸引をしながら、ゆっくりと朝のお粥ペーストを食べます。11時少し前に食べ終え、お母さんが食事の後片付けをしている間にウトウトと眠ってしまい、ヘルパーさんが来られてフウと薄目を開け、ヘルパーさんに抱っこされて「あれあれ?」と気付き、ゆっくりと状況を認識するとにっこりと笑顔がこぼれるということもありました。
この他に、ともちゃんには月に1度の小児神経外来を初めとして、リハビリや整形外科など様々な通院があります。通院する科によっては曜日が決っているものがあり、通園や通院も含めて「お出かけ」すれば翌日は休養するという生活をしているともちゃんにとっては、通院のために週1度の通園をお休みしなければならないことがあります。お母さんは、「通院のある週は、できれば別の曜日に通園したいけど。でも園の体制もあるだろうし、しばらくは様子を見てからお願いしてみようかな。」と思っていました。けれど有難いことに、園の方から「通院の時は別の曜日に通園できるようにしましょう。」と提案していただきました。
それが今日、12日の木曜日です。火曜日に小児神経を受診して、1日休養しての通園でした。今日はちょうど園のスポーツ大会です。ともちゃんは大喜びで参加し、借り物競走にも出場しました。満足げなともちゃんは、帰ってきたお姉ちゃんを捕まえて、楽しかった様子を「ハン、ハーン。」と、笑顔でたくさんおしゃべりしていました。「ともちゃん、学校卒業しても行事があってよかったなあ。行事大好きやもんなあ。」、「ハハハン」。そうです、園でのともちゃんのうれしそうな様子を見て、お母さんは早速、園の行事がある時は通園日でなくても通園できるようにとしっかりお願いしてきました。
今日のスポーツ大会でのともちゃんの様子です。ともちゃんは、H園の支援センターから来てもらういつもの通園の車の中から、「ハァーアーアー」と良い表情で大きな声を出し、はやる気持ちを表していました。ところが園に着くと、お出迎えに来てくれたのは、いつもの職員さんではなくてガチャピンでした。「???」、ともちゃんは、怪訝な顔をしています。部屋に入ってまわりをキョロキョロ見回して、「やっぱりH園だ。」と感じ取ってニヤリ。ガチャピンの正体が、担当の職員Tさんと分って、ギャハハハハと大笑いです。
スポーツ大会は、デイセンターやワークセンターがある本館と、支援センターのある棟の間の駐車場で行われていました。もう既にみんな集っています。中には大仏さんやウッドペッカー(それぞれの被り物をした職員さん)もいます。音楽が流れて、ザワザワと賑やかです。心配だった天気も、曇りどころか梅雨の合間の強い日差しが照りつけていて、お母さんはともちゃんの車椅子用の日傘を付けてこなかったことを後悔しました。ともちゃんは、園の雨傘を日傘の代りに差掛けてもらって、みんなの中に行きました。
ともちゃんが会場へ出て行ったころは、ちょうど最終種目の借り物競走を残すのみになっていました。借り物競走ってどうやるのかなと見ていようとすると、いきなりともちゃんは第一走者で名前を呼ばれました。ゆっくりと車椅子を押してもらって箱の前へ進み、箱の中の紙を取らせてもらいました。中に書かれていた借り物は「赤いカバン」。今のともちゃんの通園カバンは、連休中に買ったばかりのキティちゃんだけど黒いカバンです。「通院用のカバンは赤いキティちゃんのリュックだけれど、それじぁ仕方ないし、・・・赤いカバンはどこにあるのかなあ。」と会場をウロウロと探しているところに助け舟、ウッドペッカーさんが、園のメンバーさんの赤いカバンを持ってきてくれました。
「ありがとう!ウッドペッカーさん。」、ともちゃんはゆっくりとゴールインして、色紙の鎖で作ったレイをかけてもらいました。競技中は暑かったし、まぶしかったし、やっぱり緊張していたし、表情が硬かったともちゃんですが、レイをかけてもらうとふっと表情が緩みました。自分のグループの部屋へ引揚げる途中で少し笑顔が見えて、涼しい部屋へ戻ってからは「暑かったけど、まぶしかったけど、頑張ったよ!楽しかったよ!」と達成感あふれる笑顔でニコニコしていました。よかったね、ともちゃん。充実した通園施設の行事初参加でした。これからもきっと、新しい楽しい体験が待っているよ。