ともちゃん の日常3


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1996年8月以前(ともちゃんの日常2へ)

1996年9月

8日(日)
「元気で2学期」

16日(月)
「運動会」

1996年10月

3日(木)
「秋の校外学習」

13日(日)
「風邪ひき」

23日(水)
「合同音楽会」

1996年11月

17日(日)
「文化祭」

1996年12月

1日(日)
「防寒着」

10日(火)
「違いが分かる」

23日(月)
「クリスマス会」

25日(水)
「サンタさんのプレゼント」

1997年1月以降(ともちゃんの日常4へ)


1996年9月8日(日)

2学期が始まりました。元気に過ごしていたともちゃんも、夏休み最後の週は食欲が今ひとつでした。おまけに長らく出ていなかったけいれん発作が9月1日の明け方に出ました。例年涼しくなると喘息発作が出てきます。お母さんは2学期元気で登校できるか心配でした。でも、全くの取り越し苦労でした。けいれんもその時だけでおさまり、2日と6日の通院以外は1週間通して登校することが出来ました。食欲の方も元に戻ってきました。7月の体調の良い時でさえ、家で静養することなく1週間通して外出できたことはありませんでした。新記録です。昨日の終りの会でも先生にほめてもらいました。

 ともちゃんの学校は市立から府立への移管に伴い校舎を建設中です。1学期は市立の旧校舎で過ごしたのですが、2学期からは小中学部棟を立て替えるために、先に出来上がった高等部棟に間借りをして勉強します。ともちゃんは周りの環境に敏感に反応します。そのため、新しい校舎では興奮して先生と昼寝をしたり、食事をしたりすることが出来ないのではないかというのもお母さんの心配の種でした。でも、こちらも心配はありませんでした。ともちゃんは先生に抱っこしてもらって昼寝をします。給食も良く食べています。教室は、以前より大分狭くはなりましたが、明るくて、なにより大好きな友達や先生の声を聞いて学校の楽しさを思い出してくれたようです。さい先の良いスタートです。

 ともちゃんの体調が良いので、今日は9月1日に出来なかった夏休み最後のお出かけをしました。本当は兵庫県立フラワーセンターを目指したかったのですが、明日からのことを考えて、午後早くに家に帰ってこられる近いところに行こうということになりました。お父さんはともちゃんとお出かけした場所に印をつけています。道路地図に色を塗っているのです。それによると、ともちゃんは近畿2府4県では奈良にだけ行っていません。それで、今日は信貴山に行きました。大きな張り子の虎がいました。ともちゃんは元気にしています。明日からも毎日登校しましょう。

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1996年9月16日(月)

今日は楽しみにしていたともちゃんの運動会です。2学期になってすぐ練習が始まったので、競技の内容や練習の様子は連絡帳で読んだり、先生に直接聞いたりして知っていました。そのため、いつも家族の話題になっていて、お姉ちゃんもお父さんもお母さんもとても楽しみにしていました。ともちゃんの学校は工事中で校庭がありません。それで、近くの小学校の校庭を借りることになりました。紅白の対抗戦で、ともちゃんは白組です。

 ともちゃんの出場種目は小中学部種目の「トライアスロン」と「笑顔でダンス」、それに全員種目の「応援合戦」、「大玉転がし」、「みんなでダンス」です。ともちゃんは体力がないので、無理せず午前中の「トライアスロン」と「笑顔でダンス」にだけ出られれば十分ということにしましょうと先生と話していました。「トライアスロン」は最初の種目です。 この種目は紅白対抗のリレーで、水泳に見立てた寝返り、自転車のつもりの三輪車など、マラソンは這い這いなどとそれぞれの子供の持っている力をみんなに見てもらいます。寝返りのできないともちゃんですが、楽しい気持ちを笑顔で表すことが出来ます。笑顔をみんなに見てもらいたいというわけで、先生の手作りのスケートボードの上に担任の先生に抱っこしてもらって乗ります。それを別の先生に引っ張ってもらいます。21世紀の自転車だそうです。

 競技が始まりました。寝返りのお友達が頑張っています。先生に少し手助けしてもらっている子もいます。次は中学部のお姉さんにたすきが渡り、三輪車で競争です。白組のお姉さんの方が先に到着してくれました。ともちゃんの出番です。ともちゃんのスケートボードを見てびっくりしました。とても素敵にデコレーションがされていて、ともちゃんの名前まで書かれています。立派な「ともちゃん号」です。紅組の中学部のお兄さんの車を後目に先に出発しました。先生はともちゃん号をとても楽しそうに引っ張ってくれました。ともちゃんも担任の先生の膝の上で、満面の笑顔です。ともちゃん号は大成功です。もっと、もっと乗っていたいような気持ちです。

 ともちゃんは這い這いのお兄さんにたすきを渡しました。紅組は這い這いの代わりに先生に手を引いてもらって歩くお友達と、座ったまま手をついて進むお友達です。アンカーは一人で歩ける(走れる)お友達同士の競争になりました。白組の方が少しリードしています。紅組のお友達が追いついてきましたが、紅組の体の大きなお友達は白組の小さなお友達の背中を後押ししてくれています。見ている方も楽しくなってしまいます。思わず応援したくなってしまいます。ともちゃんのお母さんも大きな声で、いっぱい友達の名前を呼んで応援してしまいました。結局、白組がわずかの差で勝ちました。

 「笑顔でダンス」ではドラゴンボールの曲に合わせて、ポンポンやビーチボールを持って踊りました。ともちゃんはこの頃から少し疲れてきたようでした。このあと、まだ午前中の熱戦は続いていたのですが、小学部は学校に先に帰ってお弁当になりました。食後、ともちゃんは「応援合戦」と「大玉転がし」はあきらめて昼寝をしました。先生に抱っこしてもらって、しっかり眠りました。良く寝たので「みんなでダンス」には元気で復活しました。この種目が最後で、見学の人も一緒に踊ろうと言うもので、お姉ちゃんも一緒に出てくれました。白組が勝って、表彰式でみんなが拍手すると、その音でニコニコ笑っていました。家に帰ってからも、お父さんが撮ったビデオを見て楽しみました。

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1996年10月3日(木)

 今日は秋の校外学習で遊園地まで出かけるというのに、天気の方が今一つ良くありません。地面は濡れていて、空は曇っています。天気予報では良い天気に向かうということなので、ともちゃんもお母さんも遠足の支度をして、いつものようにスクールバスのバス停に向かいました。バス停への途中でぽつぽつと雨が降ってきました。ともちゃんのバギーは、屋根の上からビニールの専用カバーをすっぽりかぶせて雨避けをすることが出来ます。雨はひどくはありませんでしたが、カバーをかぶってバス停で待っていました。

 昨日から、学校でも家でも「明日は遠足(校外学習)だから、早く寝ましょう。」とか、「ともちゃん遠足楽しみやねぇ。」とか、みんなが話してくれます。それで、ともちゃんにも何となく雰囲気がわかったようで、昨夕の眠りは浅く、それなのに今朝はにこにこいい顔をしています。はりきっているようです。出来ることなら、遠足に行かせてあげたいのですが、濡れて体調を崩してもいけないし、お母さんもどちらにしたらいいのか迷ってしまいます。

 結局、遠足には出発することになりました。ともちゃんの乗っているスクールバスが一番大きいので、これに小学部が全員乗っていきました。みんなのバギーも積んで、丁度満席です。ともちゃんはいつもの指定席に担任の先生と並んで座っています。お母さんもお願いして、付き添わせてもらいましたが、一番前にこっそりと座らせてもらいました。時々後ろを振り返っていたお母さんには、ともちゃんもいい顔で笑っているのが分かりました。ゲームが楽しかった様です。

 バスで遊園地に向かっている間に、フロントガラスに付く雨粒の数がどんどん増えてきました。到着したときは、大人でも傘が欲しいくらいでした。それで、昼食用に借りていたレストランに荷物を置いて、そこでみんなしっかりと雨避け対策をしてから、乗り物に乗りに出かけました。最初に行ったのはともちゃんの大好きな子供汽車です。これは屋根があるので、雨でも大丈夫です。小学部9人が全員、先生とペアで、1ペアが1車両に乗り込みました。10両編成の子供汽車ですが、養護学校の貸し切り列車です。お母さんはカメラ係の先生とホームで手を振っていましたが、壮観でした。この楽しさは遠足ならではのものです。いつも家族で行く遊園地ですが、遠足はまた違った楽しみがあります。

 次ははみんなでコーヒーカップに乗りました。お母さんが回転する乗り物に弱いので、ともちゃんは今までコーヒーカップには乗ったことがありませんでした。「ともちゃんは乗れるかなあ。」と少し弱気のお母さんでしたが、先生の「ともちゃんにも回転の動きを経験させてあげたい気もするし、ハンドルを回さなければ、そんなに回らないし・・・」という言葉と、みんなで乗ることの楽しさを味わったばかりだったので、乗せてもらうことにしました。ともちゃんは降りるときは少し緊張していたとのことですが、乗っているときは笑顔も出ていたそうです。初めてのいい経験をしました。

 みんなは、他の乗り物に乗ったり、菊人形を見たりしましたが、ともちゃんは昼寝の時間です。レストランの床に学校から持ってきたマットを敷いて、リュックを背もたれにして、先生が抱っこして寝かせてくれました。すぐに眠り、お弁当はみんなと一緒に良く食べました。午後には、雨はすっかり上がり、日も射していました。ちょっと残念な気もしますが、天気が悪かったお陰で他のお客さんも少なく、貸し切り状態でゆっくり出来たのかもしれません。雨の中をやってきた車椅子やバギーの団体に、雨に濡れないように配慮してくれたり、乗り物の横までバギーを付けさせてくれた遊園地の係員さんに感謝して、帰路につきました。

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1996年10月13日(日)

 2学期も元気で登校できていたともちゃんですが、とうとう風邪を引いて熱が出てしまいました。実はお母さんの方が先に風邪を引いて、大きなマスクをしてともちゃんに付き添っていました。どうやら、お母さんの風邪がうつったようです。10日の休日は朝から鼻水が出ていて、呼吸がしにくそうでした。体温もいつもより少し高いようでしたので、気を付けて様子をみていました。朝食はいつも通り食べられたのに、昼寝をした後の昼食はだんだん食べにくくなってきて、少し残しました。

 熱の方も、午後3時には38.6度と上がってきました。呼吸も喘息の時のようなのど元がへこむ呼吸で、苦しそうです。ウー、ウーンとうめき声をあげて機嫌が悪く、顔色もよくないようです。なによりも呼吸が苦しそうなのが心配で、かかりつけの病院の時間外診療を受診しました。病院で吸入をして呼吸は楽になったようでした。その晩は一晩中お父さんに抱っこしてもらって寝ました。眠りが浅く、熱は39.6度まで上がったので解熱剤の座薬も使いました。翌日も熱が高く、受診して点滴をしました。病院の先生は「午後からでも様態が変わったら、いつでも電話して来て下さいよ。」と言って下さいました。とても、力付けられる言葉でうれしく思いました。

 その翌日(昨日)も点滴に通いましたが、幸いなことに熱が下がってきました。ともちゃんは今までも発熱すると、高熱になりました。高熱でともちゃんがしんどそうなとき、お母さんは「いっそ入院してしまった方が安心なのではないかしら。」、「いいや、重い病気じゃないのなら、家の方が親も子も落ち着くし、病院だったら隣の人に気も使うし・・・」と思い悩みます。これまでの経験では熱が2晩で下がれば、ともちゃんもまだ体力の消耗が少なく、わりあいすんなりと回復してくれます。今回も2日で熱が下がってよかったです。まだタンがゼロゼロ湧いて吸引したり、食欲がなかったりしているので、無理せずにじっくり静養したいと思います。

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1996年10月23日(水)

風邪でしばらく学校を休んだともちゃんでしたが、今週の月曜日から登校できるようになりました。学校でともちゃんがとてもうれしそうないい表情をするので、病み上がりで登校させて心配していたお母さんもやっぱり登校させてよかったと安心できました。今日は市立の小学校の合同音楽会です。昨年まではともちゃんの養護学校も市立でした。今年から府立に移管されましたが、今年も小中学部が参加させてもらうことになっていました。ともちゃんが学校を休んでいる間、みんなは音楽会の練習をしていました。ともちゃんは月曜日に初めて練習しましたが、音楽は大好きなので声を出して笑っていたそうです。本番でどんないい表情を見せてくれるか楽しみです。

 ともちゃんは学校からスクールバスに乗って市民会館にやってきます。お母さんは一足先に会場に行って、よその学校の演奏を聞きながらともちゃんたちがやってくるのを待っていました。10時過ぎに養護学校のみんながやってきました。スロープの横の一番前の席が指定席です。先生の座席の前にバギーや車椅子が並んでいる後ろ姿が見えます。舞台の演奏よりもともちゃん達の様子が気になりますが、先生方がゆったりとリズムをとっている後ろ姿から、楽しく聞いている様子が想像できました。

 2、3校の演奏を聴いた後、いよいよ出番になりました。「君と僕の間に」という曲です。プログラムには斉唱、身体表現、合奏とあります。最初はそれぞれ花のペープサートを揺らしながら歌って(楽しい気落ちを表して)、最後に合奏しました。ともちゃんは大きなたんぽぽの花を先生といっしょに持っています。保護者の席は後ろの方で舞台の上の出場者の顔は豆粒のようにしか見えないのですが、それでもともちゃんが時々口を開けて笑っているのがわかりました。

 合奏ではたんぽぽをバギーにさしてもらって、タンバリンを先生と一緒に持って鳴らしていました。隣の友達の大太鼓の音に特に緊張することもなく、いい顔で鳴らしていました。中学生のお姉さんが指揮をしています。舞台にはたくさんのペープサートの花が咲いていて、その中でともちゃんの友達もすずや木琴など色々な楽器を先生に手を添えてもらって鳴らしていました。市立の小学校の先生たちのアコーディオンと歌の応援もあってなごやかで楽しい舞台となりました。毎年この音楽会の様子がお正月に市民FMラジオ局から放送されます。今から楽しみです。だって、その中のタンバリンの音はともちゃんが鳴らしているんですから。

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1996年11月17日(日)

2学期は行事がいっぱいです。ともちゃんは小学生ですが、養護学校は小、中、高等部まであるので文化祭もあります。文化祭では「おむすびころりん」の劇をします。ともちゃんはネズミの役、それも最後におじいさん、おばあさんに宝の箱をあげるネズミのお姫さま(?)の役です。練習が始まってからは、お母さんが学校に行く度に大きな段ボールの箱が大きなおむすびへと変化していきました。ともちゃんの衣装の浴衣も学校に持って行きました。にぎやかなことが大好きなともちゃん、劇も楽しんでくれるでしょうか。

 さて、今日はいよいよ文化祭です。ともちゃんがお母さんとスクールバスで学校に付いた頃には、お父さんとお姉ちゃんも車で学校に来ていました。小学部の出番は一番最初なのでオープニングは衣装を着て(ともちゃんはその上にカーディガンを着て)参加します。いつもの朝の検温の後、衣装を付けました。ともちゃんたちはごろんと寝ころんで何もしないのですが、先生が着替えを、同時にお母さんが逆立った髪の毛をリボンで束ねて、どんどん仕上げていきます。みんな大女優さん、大役者さんです。

 オープニングは近くの中学校のギター・マンドリン部の演奏で始まりました。どらえもんやミニーマウスも登場して楽しいものでした。終わると、お母さんはすぐに劇の舞台が作ってある音楽準備室へ急ぎました。そして、一番前の真ん中にお姉ちゃんと陣取りました。近くの席には小学部の、特に1年生のお母さん達がいました。ともちゃんのお父さんは一番後ろでビデオを撮っています。

 甘いケーキが大好きなおじいさんとおばあさん(この子たちは本当に甘党で有名です)が大きなおむすびを食べようとすると、その中からおむすび君たちが「食べないでよ。」と出てきました。おむすび君たちは跳ねたり、這ったりして、マットの上で前転を1回して穴の中に逃げ込みました。おじいさん、おばあさんも穴に飛び込むと・・・で場面は変わり、そこはネズミのおうち。ともちゃんも登場しています。ニコニコ笑ってくれました。歓迎ネズミ、ご馳走ネズミ、餅つきネズミ、踊りネズミと順に出番があって、最後にともちゃんのお宝ネズミの出番です。真ん中に出てきて、おむすび君に箱を渡す(先生に渡してもらう)とニコッと笑ってくれました。

 お父さんやお母さんはその後の中学部や高等部の劇も見せてもらいました。今まで、学校で見かけても、どんな子供達か分かりませんでした。こうして舞台の上の一人一人に注目すると、印象が強くなってうんと親しみが深まりました。軽度、中度の知的障害児が多い高等部のお母さんたちにも、ともちゃん達のような生きていくことそのものを頑張っている重症心身障害児のことを少しは分かってもらえたかなと思います。それにしても、保育所以来、毎年舞台に出るともちゃんを見る度に成長したなとうれしくなります。

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1996年12月1日(日)

 寒くなってきました。ともちゃんの防寒着の話をしましょう。温度差に弱い上に血液の循環が悪く、すぐに手足が氷のように冷たくなるともちゃんがバギーで出かけるときには、とても厚着になります。

 バギーの上にはストールを敷いて、その上からシーティング(ともちゃんの座位を保持するための椅子のようなもの、ともちゃんの体の形に合わせて作られている)を置きます。ともちゃんはまだ座位が確立していないので、シーティングの中にすっぽりおさまって、シーティングごとバギーに乗ります。シーティングは針金のネットの上にスポンジを貼って作られていて、風通しがよいことが特徴です。夏はいいのですが、冬は背中が寒いのでストールでシーティングごとともちゃんを背中から包むのです。

 シーティングの上には座布団を兼ねた、両足を入れる袋を敷いています。これはお母さんがこういうものが欲しいと考えて、おばあちゃんに頼んで作ってもらったのもです。前がファスナーで全開するので、ともちゃんが足をつっぱっても中に入れやすいものです。足を包む袋とお揃いのおばあちゃんのお手製の膝掛けも持っていますが、もっと寒いときはベビー毛布を掛けることもあります。

 中に座るともちゃんは、半袖Tシャツ、長袖ポロシャツ、トレーナー、ジャンパーを着て、タイツかスパッツ、ズボン、オーバーズボンを履いています。ジャンパーの下に毛糸のチョッキかカーディガンを着ることもあります。このオーバーズボンも肩紐のところにマジックテープが付いていて、前もファスナーで全開できるというおばあちゃんの自信作です。手足は冷たくなるので、靴下は毛糸のものも含めて3、4枚履き、手袋もします。ともちゃんの小さな足が原型をとどめないくらい大きくなっているなあと学校では言われています。

 この姿に至るまでには、何度も試行錯誤がありました。小さいときは抱っこバンドにママコートで良かったし、つなぎのスキーウエアも持っています。いまのスタイルは病院や乗り物の中での温度調節に便利なので定着したのです。けれども、バスで学校に通う場合には、厳寒のバス停と暖かい車内に一瞬で対応できるような、薄着の上にすっぽりかぶせられるものがいいでしょう。お母さんはこれから考えていこうと思っています。

 ともちゃんの格好を見て学校の先生は極地探検に行くみたいやなと言って笑います。でも、リュックの中に酸素ボンベ(顔色が悪くなったり、呼吸がしんどくなったりしたときに使うスポーツ用酸素スプレーの缶を常時持ち歩いています)を見つけた先生いわく、「ともちゃん、極地探検と違たな。エベレスト登山や・・・」

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1996年12月10日(火)

 10月末にアレルギー外来に行ったときのことです。混み合っていて、長く待たされました。ともちゃんは昼寝をしてから行ったので寝そうにもありません。それで、お母さんはともちゃんの膝を曲げて向かい合う形で立て抱きにして、あやして遊びました。途中、偶然にともちゃんのお尻がストンとお母さんの膝の上に落ちてともちゃんは大笑いをしました。

 これが楽しいのなら、とお母さんは背中とお尻を押さえて「ストーン」と言いながらゆっくりと自分の膝の上にともちゃんのお尻を落としました。ともちゃんは最初キョトンとしてしばらくしてギャハハと笑いました。「もう一度しようか。」と言って、またすっとーんをしました。今度はすぐにニターと笑ってくれました。それから何度のやりましたが、その度にすっとーんを期待してくれていて、すっとーんされると喜んでいるようでした。

 11月末にOT(object training:作業療法)の訓練に行った時のことです。ともちゃんは三角マットにうつ伏せになって、そっと触れただけでも入るスイッチ(マイクロスイッチ)で電池式のおもちゃのスイッチを入れて遊びました。ともちゃんがたまたま手を動かしたらスイッチに触れる位置まで、先生がスイッチを動かしてくれます。おもちゃとしては音楽の鳴るラジオ、音を出しながら動く汽車、太鼓をたたくたぬきの3種類がありました。ともちゃんは最初ラジオを鳴らしましたが、表情も変えずうれしそうではありません。

 次にたぬきの太鼓をならした時です。にこにこにこと笑顔になりました。自分の手が当たって音が出ることを誇らしく思っているようにも受け取れます。何度やってもうれしそうでした。じゃあこれはどうかなと先生が汽車のおもちゃに変えました。でも、これにも全然反応しませんでした。先生が「ともちゃんはこれか、これか、これかどれが好き。」「これ?」「これ?」と順に聞くのですが、ともちゃんは知らん顔でした。先生は明らかに好きなものがあることが分かるから、ゆくゆくは自分からサインが送れるようになったらいいなあとおっしゃっていました。

 先日学校で大きなバルーンを使って揺れ遊びをした時のことです。いろいろな揺れを体験させてもらったそうです。最初1つの揺れかたでゆらゆらすると、揺れの楽しさがわかってニコニコ笑顔を見せてくれるそうです。次に揺らしかたを変えてみると、顔つきが急に真剣になって「あれ、今までと違う。」と不信な表情です。でも、何度もゆらゆらしている内に今度は新しい揺れのパターンを受け入れて笑顔で楽しんでいたそうです。「ともちゃんは違いが分かりますよ。」と教えてもらいました。

 そういえば、確かにともちゃんは細かいことに神経質で、知らない場所やいつもと異なる雰囲気に敏感です。抱っこの仕方が違ったり、抱っこする人が違っても眠ってくれません。でも、違いが分かった上でしっかり受け入れて楽しめるようになったなんて・・・成長したのですね。

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1996年12月23日(月)

 養護学校のお友達とクリスマスパーティをしました。お母さんたちが企画したのです。ともちゃんのお母さんも喜んで準備をしてきました。以前から、養護学校の友達やお母さんたちと親しくなりたいと思っていましたから。場所はともちゃんたちが夏に宿泊学習をした市立の宿泊施設です。泊まるわけではありませんが、全員が全く同じペースで行事に参加するというわけにはいかないともちゃんのような重度の子どもたちにとって、ホールや和室、食堂など自分のペースで自由に休憩できる場所があると助かるのです。

 ともちゃんは両親とお姉ちゃんと一緒に家族全員で参加しました。ホールをきれいに飾り付けて、歌を歌って始まりました。友達のお母さんがお願いしてくれたボランティアさん、遊びに来てくれた先生、先生のお友達も一緒です。みんなでゲームをやった後は、学校から借りてきた遊具で遊んでいる友達もいれば、ともちゃんのように先生に抱っこしてもらっている子もいます。その間にお母さんたちは食堂で昼食の準備をしました。みんなのご馳走はお弁当屋さんのパーティ用オードブルとお寿司の細巻きです。

 昼食が始まる頃、ともちゃんは眠くなってお父さんと和室で昼寝をすることにしました。でも、何となく周りが気になって寝られないようです。仕方なく、みんなが昼食を食べている食堂でともちゃんもお弁当にしました。お弁当はいつも通り、お父さんの作ったおかゆペースト弁当です。お友達の中には食堂のざわめきが気になってお弁当を食べられず、お母さんと和室でゆっくり食べた子もいました。食堂でコロッケをスプーンでつぶしてもらって食べた後、和室でバギーから降りて休憩しているお友達もいました。

 食後は赤ちゃん当てクイズをしました。お友達全員とその兄弟姉妹の赤ちゃんの頃の写真を見て、誰かを当てるのです。今は細面のともちゃんもお相撲さんのようにぷくぷくした写真を出しました。今は丸々と元気な友達が小さい頃は細かったり、兄弟でそっくりだったりして、なかなか難しいようです。全問正解者は誰もいなくて、結構盛り上がって楽しめました。クイズの間に食事をすませたともちゃんは、この後お父さんと和室で昼寝をしました。

 ほかのお友達は、クイズの後はそれぞれのペースでクリスマスケーキを食べ、好き好きにボランティアさん達と遊びました。階段を1階から2階へ、2階から1階へ行ったり来たりがお気に入りの元気いっぱいのお友達。危なくないように後をついて下さったボランティアさん、どうもご苦労様でした。最後にプレゼント交換をして、ともちゃんはミッキーマウスのタオルをもらいました。楽しかったね。また、来年もやりましょうね。

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1996年12月25日(水)

 ともちゃんのところにもサンタさんはやってきます。でも、毎年ともちゃんの注文は難しいのです。今まで、ともちゃんは音が鳴ったり、光が点滅したりするおもちゃをお願いしてきました。音や光を楽しんでくれるときもありましたが、逆に音にびっくりして緊張してしまったこともあります。ともちゃんのうれしそうな顔を期待したサンタさんにはちょっと残念ですが、これもともちゃんの姿なのです。

 今年は、以前訓練で使ったたぬきが太鼓を鳴らすおもちゃが一番気に入ってくれるかなと思います。サンタさんの代理でお母さんがお姉ちゃんといくつか百貨店を探して回ったのですが、これと同じたぬきのおもちゃは見つかりませんでした。それで、熊のプーさんが太鼓をたたくというおもちゃになりました。

 本当はこのおもちゃにはもう一工夫する予定なのです。以前テレビで障害児用におもちゃのスイッチを改造するという話をやっていました。大きなボタンスイッチやそっと触れただけでオンになるスイッチを取り付けるのです。それを見て、お母さんも一度ともちゃんに軽く触れただけで音が鳴るように改造したおもちゃを作ってあげたいと思っていました。実は、訓練で使ったのもこれなのです。それで、電気屋街でスイッチも探してきました。

 今日はクリスマス。目覚めるとプレゼントが待っていました。ともちゃんのプーさんのおもちゃはまだ改造してないので、スイッチを入れてもらいました。プーさんが太鼓をたたく音を聞くと、気に入ったみたいでとてもいい笑顔で笑ってくれます。さあ、冬休みの間にお父さんにおもちゃを改造してもらって遊ぼうね。おもちゃの改造は「お父さんの方がサンタさんより絶対上手だから」と言うものですから。

 ・・・お休み中におもちゃは改造してもらいました。とてもきれいに出来ています。ともちゃんも自分でさわって音が出るとグフフと笑っています。

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